宇宙の紳士と宇宙人

えいちふみひさ

文字の大きさ
18 / 18
淡い記憶と白い騎士

マスターグレイ

しおりを挟む
「随分派手にやられマシタネ」



スリーの取り外した腕を見ながらアビゲイルは心配そうに言った。



あの後キジヌとスリーはグレートジェントルマン号のブリッジに帰ってきていた。



スリーは新しい腕に付け替えていた。



「命あっての物種さね」



グランマが言った。スリーがふてくされながら答えた。



「全くだ。とんだ災難だったぜ」



「済まない。私と居た為に君も巻き込んでしまった」



「そんなことじゃないさ。こんな仕事やってりゃこのくらい屁でもないぜ」



 珍しくしおらしくなったキジヌに思わずスリーは慌てた。



「そんな事よりこれからどうするかだな。奴はこの街に留まるだろうかもわかりゃしねえ」



「これから私だけを狙ってくれればよいがね。その確証も今はないと来ている。もしかしたらまた別の被害者が出るかもしれない」



「今回件で彼を退けたのは君だけだからね。ここからどう動くか」



言いながらデイビットがブリッジに現れた。キジヌは喜んで歓迎した。



「デイビット、来てくれたのかい。忙しいところ申し訳ない」



「構わないさ。今回は君たちが被害者だからね。スリーは腕の方は大丈夫かい?」



「この通りへっちゃらさ。お気遣いどうも」



「それでデイビット。我々はこれからどうしたら良いかね?」



「それに関してはある御方から提案があった。そろそろ連絡が来ると思うけど……」



「通信来まシタ。メインモニターに繋ぎマスネ」



 一同はメインモニターに目を向けた。



画面一杯に灰色の肌に大きな黒目の、灰色の道着を纏い鉢巻きを付けた男が映った。



キジヌは驚愕の声を上げた。



「マスターグレイ!お久しぶりです!」



『うむ、今回の件はデイビットから聞いたぞ。随分厄介な事に巻き込まれたらしいな!』



マスターグレイはワンダーグレインズ領域出身のレンキ使いである。



宇宙に数多くいるレンキ使いの中でも百人程度しかいない『マスター』の称号を持つ、いわばレンキのスペシャリストである。



賞金稼ぎとしてはインフィニティの所に所属しているがそちらは副業であり、本業は様々な地域の展開されたレンキ道場の創設者であり師範である。



そんな大物が出てきたのだ。同じレンキ使いのキジヌが驚愕するのも当然だった。



『今、わしも弟子と共にそちらに向かっている最中である。安心せい』



『押忍!よろしくお願いします!』



マスターグレイと共に可愛らしい声が聞こえてきた。彼女が弟子なのだろう。



「まさかマスターグレイに来て頂けるとは光栄です」



『なに、わしの道場の生徒も被害にあっているのでな!わしとしてもこんな事件はさっさと終わらせたいのである。それにレンキ使いが揃えば良いおとりにもなるだろう!』



マスターグレイの言葉は怒りに満ちていた。自身の身内にも被害が出ているのだ。



当然の憤慨である。デイビットが声を上げた。



「ではまず情報を整理しましょうか。まず今まで被害にあっているのはレンキ使い。それも無差別に狙われています。」



「そういえばその中に賞金稼ぎは居ないのかね?賞金稼ぎならばキャットから情報を引き出せるであろう?」



「残念ながらキャットでも感知出来なかったらしい。つまり白い騎士の背後には何か組織が関与している可能性もあると考えた方が良いね」



「まさか『ダークマター』か?」



「可能性は無いとは言えないがその線は薄いね。彼らはこんな派手なやり方はしない。もっと上手く隠すだろう。」



「確かに奴らの手口としては派手さね」



『いずれかの軍の仕業ではなかろうか!』



「確かにキャットを無効化出来る者としてはその線が妥当デスネ」



「だが軍が何故今更レンキ使い興味を示す?そもそもどこの軍にも大抵はレンキ使いが居るんじゃねえのか」



「結局は白い騎士を捕まえるしかないか……」



「そういえば奴が現れた時に霧が出てきて、奴が消えたら霧も同じように消えていたな」



「もしかしたら意図的に霧を出しているのかもしれない。各人霧が出たら気を付けてみよう」



『奴の戦闘スタイルはどんなものだったのかね!』



「奴は剣を使ってましたが相当な手練れでしたね。鎧を着こんでいましたが打撃は通る様でした。そして奴自身レンキ使いでありました」



『レンキ使いなのにレンキ使いを狙うのか!なんというやつだ!』



マスターグレイは一段と憤慨した。



結局のところ核心に迫る情報はそこまで無かった。キジヌ達はマスターグレイ達が合流するまで待つことにした。



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...