最下位の最上者

竹中雅

文字の大きさ
3 / 43
第一章

集団

しおりを挟む


「おはよう」
背が高く、無精髭を生やした男性教師が、どこかやる気の無く、腑抜けたように教室へ入ってくる。
年齢は30代前半ほどだろうか。見当がつかない。
「初めまして。1年6組を担当する蘇芳寛哉だ。ざっと見るに、このクラスは全体的にCランクが多いんだな」
各学年の生徒人数は400人。それぞれ40人ずつにクラスが分かれるため、クラスは10組まである。
それぞれのクラスを平均に保つことやランク毎に固まっているのではなく適当らしい。
故に一クラスだけAランクが固まっていることもある。
「じゃあ、グループの発表だ。まあこっちで決めてある。自由に決めさせても困惑するだけだろうし」
やる気のないように見えて考えてはいるらしい。初対面同士であれ、顔見知りであれグループ決めは必ず衝突が起こる。一人だけ残されたときの絶望があるくらいなら第三者が決めた方が余程良い。
「席順も同じグループで固まってるからその通りに組んでくれ。ちなみにこのグループはずっと固定だから喧嘩とかして険悪になるなよー。あとは自己紹介とリーダーを決めてくれ」
大きく名前の書かれた紙が黒板上に貼り付けられた。
グループは4人で構成され、チームとして生活することになる。メンバーは同じランク同士で決まるため、俺はEランクの生徒と一緒になってしまう。
E-7 メンバー
・茜澤拓真
・樫谷晃
・藍水玲奈
・藤桜翡翠
E-8はEランクメンバーの7個目のグループということか。これは全体での換算だ。
やはり俺はEランクとして扱われている。
先生は貼り終えると、早足で教室を出て行ってしまった。
追いかけようと席を立とうとすると潑剌声で制されてしまった。
「ヤッホー。この四人で良いのかな?アタシは藍水玲奈だよ!まあランクが低い者同士頑張ろう!」
低い者同士という言葉が癪に触る。
何だこの軽い女子は。制服は第二ボタンまで開け、スカートもやたらと短い。
しかもアホっぽい雰囲気が充満している。あまり話したくない部類だ。
「オレは樫谷晃。学力はそこまでだが、技術の方は自信があるぞ。これからよろしく!」
こちらも元気が有り余っている。よくEランクでここまで自信にありふれている。
「え、イケメンじゃん」
「いやいや、お前も可愛いぞ?」
「やだー。もう」
なぜこんな低俗なやりとりを見せつけられなければならないのか。
確かに樫谷の顔は秀でており、周りからは注目はされている。
いや、最低ランクということに謗られているのかもしれない。
「...私は藤桜翡翠です。みなさんの足を引っ張らないように気をつけます...精一杯頑張ります...」
藍水とは対称的で暗い感じの女子生徒だ。身嗜みも整っていて、制服もきっちりボタンを止めている。
「えっと、茜澤君の番だよ?」
「あ、あー茜澤拓真だ。Eランクたが、変わるかもしれない。よろしく」
「変わるって何だ? オレたちと同じEランクだろ?」
「今はな。理由があってAランクに上がるかもしれない」
「はははは。Aランクに憧れるのも分かるけど、嘘は良くないぞ?」
「いや、俺は」
「大丈夫! アタシたちだって同じなんだから一緒に頑張ろうよ!」
全く信じてくれそうにないどころか取り合う気もない。
そりゃそうだ。いくらAと自身が言おうが現在はEだ。嘘を吐いているとしか思われない。
理解はしていても、頭に血が上ってしまいそうになる。
「もういい。少し出てくる」
「おい! ちょっと待てよ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

処理中です...