最下位の最上者

竹中雅

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第二章

試験

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テストが始まった。
全部で8科目。一つの教科の時間は60分。それを三日に分けて行っていく。
今日は現代文、古典、日本史と文系科目中心。
二日目は生物、化学の2教科。
朝からめいめいに行うことは異なる。
やはり赤や緑の制服、つまり上のグループは教科書やワークを開き、特に慌てる様子もなく、友達と出題しあったり黙々と最終確認をしている。
一方、白の制服は同じグループ内で喋喋としている生徒が圧倒的に占める。
白服に挟まれた如何にも空気扱いされた赤服は鬱陶しく顔を歪めると、廊下へと出て行った。
リバーシのようにひっくり返されて、赤服も話し出すわけではなかった。
他のグループの生徒が何をしようと構わないが、問題は樫谷と藍水。
横では藤桜が教科書と睨み合いながら格闘している。
三日目に苦手な、英語2科目と数学が待ち構えているので、今日明日は心配はない。
後ろを振り返ってみると藍水は他の白服メンバーと仲良くなったのか、お喋りに盲目。樫谷に至っては席にも座っていなかった。
「どうしたん?」
俺の視線に気づいたのか、藍水がこちらへ向く。未だに怒っているわけでもなさそうだが、不審そうな目をしている。
「いや、勉強はいいのか?」
「一応、やったけど?理解できないからいいやって思って。拓真君こそ教科書も開かないで良いの?」
「心配するな。やらなくても頭に入ってる」
「ふーん。また意味のない自慢?いいけどね~マイナスだけにはならないでね」
冷酷な言葉を投げかけ、凍てついた眼を散らつかせる。
俺に向ける表情は当初のような可愛さはまるでなかった。
それっきりこちらへ視線を移すこともなく、1分前に樫谷が戻ってくると、テストの始まるチャイムを迎えた。
始まると共に監督の先生が俺の方を凝視してくる。
顔に何か付着しているのかと思うも、入学試験の不正疑惑のせいだろう。
第一不正しようとも思っていない。俺よりも他の生徒にも目を配った方が良いのではないか。
気にも留めなく問題を手をつけ始める。
無論、難易度としては入学試験よりも難しくはなっている。現代文は問が4つまであり、時間も長くは使えない。そして最後に200文字の論述が用意されていた。
次の古典、日本史も基本だけ抑えていては高得点は取れないような塩梅で作られているが、頭を抱えるほどではなかった。
特に手応えや不安なども無くテストが終わると、教室は喧騒に包まれている。
大きく占めるのは難しかったと言う声。
応用があるとは言え、勉強していれば8割は超えるような難易度だったように思われたが、そう上手くはいかないようだ。
二日目も同じように2科目を済ませる。
一日目ほどでは無いが、友人と答え合わせをして挫折を味わう生徒が見受けられる。
そして三日目。
まずは英語2科目を済ませる。二時間も連続で外国語を読んでいると集中力は途切れる。間に数学を挟んで欲しかったが、いつの間にか最後のテスト、数学。
問題はそこまで難しくない。だが、60分の時間に対して60問。満点を取らせる気のない問題量。
流石に時間いっぱい使い、最後の問題はチャイムと同時だった。
テストも終わり、枷が外れたように騒ぎ出す。と言っても、勉強していなかったやつらだ。その中に藍水も確認できる。
他の生徒は沈みこんでいた。あれだけの問題の多さだ。対策をして罷り通るものではなかった。
「大丈夫か~?」
酷く落胆したオーラを発しており、声を掛けない方が無難だったかもしれない。
「折角教えてもらったのに、私ダメだ...」
やはりかなり落ち込んでいるようで、返答に困ってしまう。
「あれは仕方ない。俺だってギリギリだった」
「でも全部解き終えたんでしょ?」
「まあ...な」
「なら私はまだまだ...ごめんね」
今にも泣きそうな声で謝る藤桜に困惑してしまう。もし泣かれたら俺に被害が及び、収拾がつきそうにない。
「ひとまず立とう。何か食べるか」
「ううん」
「外に出るか?」
「ううん」
「じゃあ、何かしたいことは?」
「ううん」
首を横に振るだけで、まるで会話が成り立っていない。傷心しきっている。
「じゃあ裏庭に行こう、な?」
無理やり手を引っ張りながら、庭へと連れて行く。
途中の自動販売機で藤桜が指差したトマトジュースを買って渡し、ベンチへ座り込んだ。
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