最下位の最上者

竹中雅

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第二章

約束

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「......」
周りには誰も居らず、言葉は一切ない。
沈黙が続いても木の葉が突風によって騒ぎ立てられ、輪唱するように鳥の囀るといった自然音が心地よい。
缶を傾け、仰ぐ体制になると見える青空は一碧万頃というように清々しい。
この風景をまだ浸っていたいが口挟むように声を出す。
「そんな気にするな。頑張ってただろ?」
「でも嫌だ」
「他の奴らも同じだ。俺も間違えているだろうし、全部出来る方がどうかしてる。そんな完璧を求めんな」
「...うん...結果も出てないしね」
「ああ。案外俺より上かもしれないぞ?」
「それなら嬉しい」
微かながらも笑顔を向けてくれた。落ち込む際に覗く清かな表情は、つい恥ずかしさを覚えてしまう。
今回のテスト結果と順位は明日、張り出される。今何に悔もうと抗おうと結果は変わらない。
「ここ気持ちいいね。また来たい」
「そうだな。俺はいつもここで食べてるけど」
最初はグループで食堂で食べていたが、あの件以来、居心地が悪く俺だけ離れて食べていた。
直射日光を避けるために木陰に座り、風に吹かれながら休憩していると癒される。
食堂のようにこの庭を使って食べる生徒はいないため人工的な喧しさは無く、俺だけが味わえる最適な場所だ。
「私も行っていい?」
「良いぞ。誰も居ないから貸し切り特等席だ」
藤桜なら騒ぐこともなく静謐な空気も壊されない。
「やった!」
「そんなに嬉しいか?」
「三人で食べてても、茜澤君に対して良くない話ばかりだから」
「まあそうだろ。話の肴にはもってこいだ。でも大丈夫か?」
「え?」
「嫌われ者と同じ場所に居て」
俺の悪口は言っても構わないが、もし藤桜が俺と食べることを知ったら同じように言われないかが心配だ。
「うん...大丈夫。楽しい方が良い」
「そうか。じゃあ待ってる」
そう軽い約束をする。
例え藤桜が来てくれなくても、怒ったりはしない。ただの口約束に絶対の権限はない。
「はぁぁ~」
深呼吸が聞こえる。
再び心地の良い無言が続いた。
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