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第三章
不正
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この結果は納得しようがない。もう一度記憶を巡らし名前の書き忘れも、解答用紙の間違いも無かった。
俺は急いで先生の元へ駆け出す。
「失礼します」
「あー君か~」
待っていたかのように首だけを捻りこちらへ向ける。覇気のない目で見られると気が鈍る。
「テストの件なんですが」
「やっぱりそれか。自分でもわかってるだろ?完全な不正だよ」
全て知っているように淡々と語りかける。
横には桑原が立っている。嫌な予感が駆け抜ける。
「数学のテスト。君は実際98点だったそうだが作成した先生曰く、時間通りに終わらないように...解けて60点で作ったそうだ。まあ、本当に数学に精通し、計算能力が芳しいなら解けないこともないそうだが習いたての高校生には無理に近いと言っていた」
「じゃあ高得点取った人は疑うんですか!透百合とか!」
そもそも理論的に満点を取らせないテストがあって良いのだろうか。テストの意味を履き違えている。
「茜澤君は、入試のときから疑いがあったからねえ。僕もそんなことで不正になるかとは疑ったよ」
「なら良いじゃないですか!」
「問題はそれだけでない。今日の朝、桑原君たちがここにきた。
手渡されたのは数学の解答。
桑原は横で何度も頷き、悪巧みを思いついたように笑っている。
「この子たちに来てくれと頼まれて一緒に君のロッカーを確かめた。するとこれが出てきたよ」
先生の手には一枚の紙切れ。数学の回答用紙で合った。
「まだ問題用紙と共に返していないはずだが、何故持っている?」
「知らないですよ!」
まず、ロッカーには鍵を掛けていた。俺がそんなものを持っているわけがなく何かの間違いではないか。少なくとも俺以外の奴が入れたことになる。
「実際今日まではテストの解答関係全てが頑丈な金庫の中に入って、鍵で開けない限り開かない筈なんだよ。ただ解答用紙の金庫鍵も無くなっていて、朝から騒ぎになっている状態。まさかと思うが茜澤君持ってないよね?」
「知りません」
どういった鍵なのかもわからない状況だ。
自分の部屋用、桑原から渡されたあいつの部屋用以外、鍵の存在など知る由もない。
いや...桑原。
「ちなみにどんな鍵ですか?」
怪しまれない程度に興味なさけに適当に問いかける。
「他の鍵と対して変わらないからな...あーなんかキャクターのキーホルダーが付いていたかな?」
「...亀っすかね?」
「...そうだそうだ!...でも何で知ってるんだい?」
「だってそれ、茜澤君持っているの観ましたよ?」
力強さの残る指先を真っ直ぐに突き刺すようにこちらを向く。
その鍵は持っている。だが聞いていたことと違う。
「は?これはお前の部屋の鍵だろ?」
ポケットの中からそっと取り出した。
その瞬間、血でも抜かれたように先生の顔色が蒼白する。
「嘘だろ...?君...とんでもないことを仕出かしてくれたね...」
「いやいや!違いますって!これはこいつの部屋の鍵と言って渡されたんです!」
桑原に指を向けるが、先生は聞こうともせず、教室内を意味もなく彷徨い始めた。
「桑原君がそんなことするわけないだろ。今回のテストでは4位なんだぞ!」
「は?」
「言っただろ?勉強しなくたって俺は出来るんだよ。お前たちとは違って」
同時に桑原から発せられる哄笑は、耳を塞ぎたくなるほど耳に反響してくる。
「とりあえず、僕はこのことを報告してくるから茜澤君は待ってなさい」
そう言い残すと、普段見せないような敏捷な動きで出て行った。
「じゃあ、俺も戻るわ。じゃあな。もう会うことも無いだろ」
二度と出会したくもない。
一人残された俺はただ茫然と動く気力もなく、吹き込む外風が綴じられた冊子を巻き上げて暴れていた。
俺は急いで先生の元へ駆け出す。
「失礼します」
「あー君か~」
待っていたかのように首だけを捻りこちらへ向ける。覇気のない目で見られると気が鈍る。
「テストの件なんですが」
「やっぱりそれか。自分でもわかってるだろ?完全な不正だよ」
全て知っているように淡々と語りかける。
横には桑原が立っている。嫌な予感が駆け抜ける。
「数学のテスト。君は実際98点だったそうだが作成した先生曰く、時間通りに終わらないように...解けて60点で作ったそうだ。まあ、本当に数学に精通し、計算能力が芳しいなら解けないこともないそうだが習いたての高校生には無理に近いと言っていた」
「じゃあ高得点取った人は疑うんですか!透百合とか!」
そもそも理論的に満点を取らせないテストがあって良いのだろうか。テストの意味を履き違えている。
「茜澤君は、入試のときから疑いがあったからねえ。僕もそんなことで不正になるかとは疑ったよ」
「なら良いじゃないですか!」
「問題はそれだけでない。今日の朝、桑原君たちがここにきた。
手渡されたのは数学の解答。
桑原は横で何度も頷き、悪巧みを思いついたように笑っている。
「この子たちに来てくれと頼まれて一緒に君のロッカーを確かめた。するとこれが出てきたよ」
先生の手には一枚の紙切れ。数学の回答用紙で合った。
「まだ問題用紙と共に返していないはずだが、何故持っている?」
「知らないですよ!」
まず、ロッカーには鍵を掛けていた。俺がそんなものを持っているわけがなく何かの間違いではないか。少なくとも俺以外の奴が入れたことになる。
「実際今日まではテストの解答関係全てが頑丈な金庫の中に入って、鍵で開けない限り開かない筈なんだよ。ただ解答用紙の金庫鍵も無くなっていて、朝から騒ぎになっている状態。まさかと思うが茜澤君持ってないよね?」
「知りません」
どういった鍵なのかもわからない状況だ。
自分の部屋用、桑原から渡されたあいつの部屋用以外、鍵の存在など知る由もない。
いや...桑原。
「ちなみにどんな鍵ですか?」
怪しまれない程度に興味なさけに適当に問いかける。
「他の鍵と対して変わらないからな...あーなんかキャクターのキーホルダーが付いていたかな?」
「...亀っすかね?」
「...そうだそうだ!...でも何で知ってるんだい?」
「だってそれ、茜澤君持っているの観ましたよ?」
力強さの残る指先を真っ直ぐに突き刺すようにこちらを向く。
その鍵は持っている。だが聞いていたことと違う。
「は?これはお前の部屋の鍵だろ?」
ポケットの中からそっと取り出した。
その瞬間、血でも抜かれたように先生の顔色が蒼白する。
「嘘だろ...?君...とんでもないことを仕出かしてくれたね...」
「いやいや!違いますって!これはこいつの部屋の鍵と言って渡されたんです!」
桑原に指を向けるが、先生は聞こうともせず、教室内を意味もなく彷徨い始めた。
「桑原君がそんなことするわけないだろ。今回のテストでは4位なんだぞ!」
「は?」
「言っただろ?勉強しなくたって俺は出来るんだよ。お前たちとは違って」
同時に桑原から発せられる哄笑は、耳を塞ぎたくなるほど耳に反響してくる。
「とりあえず、僕はこのことを報告してくるから茜澤君は待ってなさい」
そう言い残すと、普段見せないような敏捷な動きで出て行った。
「じゃあ、俺も戻るわ。じゃあな。もう会うことも無いだろ」
二度と出会したくもない。
一人残された俺はただ茫然と動く気力もなく、吹き込む外風が綴じられた冊子を巻き上げて暴れていた。
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