最下位の最上者

竹中雅

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第四章

期限

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今日が最後の学校生活になろうとしている。
結局俺は証拠を探し巡ったが、何一つ得るものはなかった。
件の熱りは冷めておらず、何かと厳重に目が入っており、金庫がある部屋には、まず入れない。
「ごめんね。方法見つからなかった...」
「そんな落ちこむな。ありがとう」
藤桜も人と話すのが苦手な中、何人に聞いてくれたそうだ。
知っていたのは二人の時に会った三人の女子だけ。
偶然桑原たちが鍵を盗んでいる姿を見かけることなんて無い。
やはり俺の仕業だと決め付けている生徒がほとんどだ。
靄がかかった心情の中、ホームルームが終わると先生に声をかけられる。
今日処分が決まることについては、全員少なくともクラス中には知れ渡っており目線が降り注いでいる。
周知の事実を改めて言い渡されるのも苦痛の中、大勢の前で宣告されるのは奈落へ突き落とされる感覚。
「まず樫谷晃、藍水玲奈、藤桜翡翠だが...」
俺たちに気を使う素振りもなく足を止める前から無感情に先生の口が動き出す。
わずかな可能性を込め、処分されないことを願う。
「君たちに処分はなし」
その言葉はすぐ耳に入り込んできたはずなのに、何分も溜められたかの如く長く感じられた。
「へ?本当に?」
三人とも何が起こったか呆然としていたが、すぐに正気を戻すと、
「やったー!」
「そりゃそうだろ。俺たち何もしてないんだから」
「...」
「今回は異例の出来事だからね。これで連帯責任というのもおかしいと会議で決まった。そして...」
ファイルを閉じると、俺を見据え微かに笑いかけた。
「問題は...君だな。結果は..退学だ」
どういった意味の笑みなのかはわからない。
厄介者が消えてくれるという安心感だろうか。
「問題を二つ起こしたわけだ。残念だが」
横で藍水と樫谷は表情を隠さず、嬉しさを満面に表していた。それは俺に対してか自分のことかはわからない。
俺も嬉しかった。
これで四人が仲良く退学なんぞなれば、恨みに殺されかねなかった。
「良かった。これ以上お前に巻き込まれなくて済む」
「一時はどうなるかと思ったよ~。残念だったね、拓真君」
嬉々として話す二人の様子に、何か他に感じる訳でもなく、ただ茫然と立ち竦んでいるだけだった。
わかっていたことではあるが、事実と向き合うと心が荒んでしまう。
「...」
藤桜は黙っていた。微動だにせず、拘束されたように。
入学当初から俺に好印象を持つものは少ない。いや印象なんてものも持っていないだろう。
殆どが関わったこともないのだ。そんな無関係な人間を重大な不正がかけられても庇護してくれるものもいない。
全てがお人好しではないわけだ。
「残念だね~。折角仲良くなれると思っていたのに」
後ろから声が掛かる。すぐ後ろに居たらしい。
桑原だ。憐憫や悲哀の目ではなく、せせら笑いを存分に浮かべた顔。
「桑原...」
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