【R18】酔った勢いでしでかした拗らせ騎士の二人

天野 チサ

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全てのはじまり

酔っ払いが二人揃った結果2

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「だが、オリバーは妥協したくないんじゃなかったのか?」
「さすがに挿れるつもりはねーよ」
「うん。なら大丈夫だな」

 冷静に考えれば何ひとつ大丈夫ではないのだが、このときの二人はこれで納得してしまった。

「ならこの際だ。私の身体が男から見ていかがなものか意見も聞きたい」

 シャツのボタンに手をかけながら、そんな恥も外聞もないことを言い出す始末だった。けれど、メリッサにはそれがとても素晴らしい提案に思えてならなかったし、現にオリバーも深く考えていない様子で頷いた。

「別にいいけど、なんだお前サラシ巻いてたのか?」

 グラスをサイドテーブルに置いて視線を上げたオリバーが、怪訝な声を上げる。シャツを脱ぎ捨てたメリッサの胸元にはぐるぐると布が巻かれていた。

「動くときに邪魔で……な、なんだよ、もうどこか変か?」
「いや意外で驚いた。そもそもそんな変なとこなんて──」

 オリバーの言葉が、メリッサの胸元を凝視して不自然に途切れる。鋭すぎる目つきの双眸は、はらりと落ちるサラシの中から現れた二つの膨らみに釘付けになっていた。かと思えば、無言で眉間をぐりぐりと押さえると、先ほどと同じように、はー……と長い息を吐き出す。

「宝の持ち腐れかよ……」
「ん? つまり良いということだよな!?」

 唸るように吐き出されたセリフに、メリッサはぐっと両の拳を握って胸を張った。合わせて露わになった乳房もふるんと揺れる。その動きをオリバーが目を見開いて追った。

「言わせてもらうと、控えめに言って完璧」
「ほほう。オリバーの理想か?」

 ニヤニヤとした笑みでメリッサが問えば、目の前の男はがっくりと項垂れるように頷いた。

「大きすぎず張りがあり、色も良いし形も良い……理想」
「そ、そうか。そこまで褒められると逆にこわいな」
「頼む、触ってもいいか?」
「遠慮なく」

 ベッド端にかけたままズイッと横のオリバーに寄る。とたんに黒い瞳がキラリと歓喜に輝いた気がした。同時に伸びてきた手にむぎゅっと胸を揉まれる──といより、わし掴まれた。

「ひえっ」
「柔らかいな……それに、元々は色白だったのか」
「いや、ちょっと」
「ああ、乳首の色も薄くて綺麗だ」
「だから、おい」
「どこもかしこも最こ──」
「ちょっと落ち着け!」
「ぐふ……っ」

 一心不乱に胸を揉みしだいてくるオリバーの顎を、思わず掌底で突き上げてしまった。遠慮なくとは言ったものの、あまりに食い入るような様子はさすがに少し怖い。

「すまん、つい」
「とか言いながら手を離さないのはすごいと思う」
「すまん、あまりに理想で」
「それ、ちっとも悪いと思ってないだろ」

 現に、いまだに両手はメリッサの乳房に引っ付いている。

「いやな、俺の至高はセシリア様なんだが……」
「知ってるけど、この状況で名前を出すのはまずくないか?!」
「理想の身体つきもそれに倣っててな」
「はあ」

 つまりオリバーの性癖もとい理想は、清楚で控えめ透明感があり風に吹かれたら消えてしまいそうなほどの儚さ云々、というだけあって、好みの身体もそれを体現したものらしい。

「出るところがボンと出ている色気溢れる所謂ナイスバディには反応しないということか」
「胸はでかけりゃいいってもんじゃない。控えめながらも形が良く弾力と柔らかさがあり、何よりも透けるように白い肌が良い」
「うわあ……」
「だからこの胸は理想だ。メリッサのくせに……っ」
「ふふふ、悔しいか。だが改めて事細かにべた褒めされるのも微妙な気分だな。でもまあ、ちょうどいいじゃないか」

 なにが? と少しきょとんとしたオリバーの顔が珍しく、またそれが予想外に可愛く見えて笑ってしまう。酒の回ったフワフワとした頭は、結局「オリバーならいいか」というこれまたフワフワとした結論しか出さない。

「好きにしてくれ。気持ち良くしてくれるんだろう?」

 言ったら、目の前の顔がわずかに赤くなった気がした。──が、次の瞬間にはドサッとベッドに押し倒されていた。そして、見上げた先には口元に笑みを浮かべたいつもの人相悪い顔。

「ああ、そうだったな」

 見下ろしてくる黒い瞳の奥で、チリッと熱が揺れたような気がした。

「オリ……、うわっ」

 何だろうともう一度覗き込もうとしたけれど、その直後、左胸に強く吸いつかれてメリッサの身体は大きく跳ねた。

「なん、びっくり……ん、んあ?!」

 貪るという言葉がしっくりくるほど、胸を揉みしだく手の動きに合わせて激しく吸われる。そのたびにぬるりとした舌先が先端の突起に絡みついた。メリッサの背をゾワワと何かが伝う。
 合間に聞こえるオリバーの荒い息使いが異様に生々しくて、急に恥ずかしさが込み上げた。

「良いか?」

 低く問う声が艶っぽく聞こえる。
 舌先に弄ばれながら吐息の合間に問われて、唇の動きを肌から直に感じてしまう。くすぐったさに似ているけど違う感覚に、戸惑う。

「これが良い……のかは、正直よくわからない」
「弄られるのが初めてならそんなもんだろ」
「実際にされるのはすごく変な感じだ、な、んんっ」

 言葉を交わしながら、今度は右胸の先端にも手が伸びる。乳首をぐりぐりと執拗に擦られると次第にそこはぷっくりと膨らみ、固く尖っていった。その変化をじっくりと観察するようにオリバーは見つめていたが、今度はピンと上を向いた右胸の乳首を口に含んだ。

「あっ! ふ、んあっ!」

 舐め回され、じゅうっと強く吸い付かれるたびに、胸の先端から針で刺されるような刺激に襲われる。けれどそれは痛みだけではない何かを伴っていた。メリッサは腰に鈍い痺れが溜まっていくような感覚に戸惑い、焦りを滲ませる。

「待ってくれ、ちょ、オリバー……っ」

 メリッサが胸元に顔を埋める黒髪をどんなに叩いても、全身に筋肉のついた身体はビクともしない。さすが鍛え抜かれた騎士だ。なんて感心している場合ではなかった。

「オリバー!」
「ぐお……っ!」

 振り上げた足を覆いかぶさる脇腹へ遠慮なくめり込ませたら、オリバーが崩れ落ちた。メリッサだって鍛え抜かれた騎士だ。たとえ男性騎士が相手とはいえ、油断しているところへの一撃ならいい勝負ができる。
 その証拠が、現に呻き声をあげているオリバーだった。

「もうっ、話も聞かずにさっさと進むなよ!」
「痛っ、悪かったって」

 絵面はポカポカと可愛らしく背中を叩いているだけだが、脇腹を抑えてうずくまるオリバーの背中にはドスドスと鈍い効果音が降り注ぐ。

「やめろっ、悪い。俺が夢中になってしまった」
「理想の胸だからか?」
「ああ」

 そこは頑としてぶれないらしい。まさか団内ではクールな男として通っているオリバーが、ここまで胸に確固たるこだわりを持つ胸フェチだとは誰も思うまい。メリッサだってここまでとは思わなかった。
 しかし問題は、現状オリバーだけが良い思いをしているということだ。

「オリバーだけなんてずるい」
「……っ。わかってる、忘れてない」

 口を尖らせて抗議したら、一瞬呆けたような顔をされた。忘れてたのではと眉根を寄せればオリバーは言い訳のような言葉を並べて、メリッサの下半身を脱がしにかかる。
 任務を終えたメリッサは団服をからラフなストレートタイプのパンツに着替えていた。そのホックにオリバーが手をかけると、くすぐったさも相まってイヒヒと笑みがこぼれる。

「雰囲気もなにもない笑い方だな」
「オリバーだしな。なんだか楽しくなってきた」

 この間にも前を開かれ、ずらされた服と下着の隙間から、毎日剣を振るう骨ばった手がメリッサの秘部へ滑り込む。

「ふおっ?!」

 大事な部分を人に触れられるというのは、当然だが自分で触る感触とは全く違う。わかっていても変な声を上げてしまった。逃げるように身体は捩れたが、両手をひとまとめに上で押さえつけられて阻まれる。

「まだそんなに濡れてないな」
「あっ、それ、痛い」
「うん、悪い」

 ぐいっと長い指が秘部の割れ目から奥へ押し入ろうとするものの、まだ感じきっていない身体は上手く受け入れることが出来なかった。痛みを訴えるとオリバーは頷いて、そのままメリッサの前の尖りをやわやわと指の腹で擦りだす。

「ふわっ! これっ、いい……っ!」

 擦られるたびに、ビリッと痺れる感覚が広がってくようだった。自分でもまともに弄ったことのないところへ、どくんどくんと脈打つように熱が集まっていくのがわかる。足りない、もっと強く擦ってほしい。考える間もなく自然と腰が浮いた。

「ああっ、ん、そこ、そこもっと」
「ここか?」
「う、ん……あっ! あっ、あっ、や、待っ──っ!」

 最も刺激が得られるところをねだったら、その一点を指の先で強く責め立てられた。瞬間、激しい快感が波のように身体を巡る。よがればより責めは激しくなり、強すぎる快感は貫くような高まりとなって、弾けた。

「──あああっ!」

 耐えきれないほどの快楽に、メリッサの足先がぎゅっと丸まる。津波のような高まりは、引いてもなお強い余韻を残し、身体が痙攣するように震えた。

「……いい。オリバー、これ気持ちがいいよ……」

 ぼうっとしながらも、秘部がトロトロと濡れそぼっていくのがわかる。確かにこれは良い。と、覆いかぶさるオリバーを見上げると、黒い瞳は浅い息を繰り返すメリッサをまじまじと見つめていた。

「オリバー? どうした?」
「あ、いや。イくほど良かったのかと思って」
「ああっ! とても良かった! オリバーが言っていた通りだな。もう一回してほしい!」
「…………」

 パッと顔を輝かせて今の感想を告げたら、とたんにジトッとした目の真顔を返された。

「え、なんだよその顔。褒めただろ?」
「そうだな。まあいい、みていろ」
「どう……ふっ、あっ」

 くちゅっと水音を立てて、散々尖りを責めていた指が割れ目から奥に入ってくる。すっかり蜜の溢れたそこは、最初の痛みが嘘のように容易くオリバーの指を受け入れた。一息つく間もなく、中を探るようにぐちゅぐちゅと掻き回される。

「やっ、あっ、ん、あぁっ、ひぁっ!」

 ぐりっと強く刺激されるたびに、痺れるような鈍い快感に身体が跳ねる。中で動き回る長い指が気持ち良くて、自分でも抑えられないほどにビクビクと全身が反応してしまう。すっかり腰の浮いたメリッサは、いつの間にか自ら腰を揺らして刺激を求めていた。

「あ、あ、オリバー……っ、んあっ!」
「……っ、ここ、良いのか?」
「うん……っ、いい、すごく、いいの……! はあぁっ!」

 必死に頷いたら、そこを執拗に責めてくる。追いつめられるような激しい快感に背を反らし、足先がくしゃっとシーツにしわを作った。再び上り詰めるような、津波のような強い波が襲い来る。

「も、無理、また……っ、やっ、い──くぅっ」
「ああ……っ、大丈夫だ、イけ」
「ひああぁぁっ!」

 ビクビクと身体を震わせて、メリッサは二度目の絶頂を迎えた。

「ふ、う……すごい……んんっ」

 じゅぶっと水音を立てて指を引き抜かれれば、その刺激だけで達したばかりの身体はまた跳ねる。
 抜けない余韻に、吐息が熱い。指を咥え込んでいたところがなおも蜜を溢れさせて、ヒクヒクと収縮を繰り返しているのがわかる。すっかり熱を帯びた全身を汗が伝い、中途半端にずらされて下半身に絡みついていた服と下着の存在が、ひどくもどかしく感じられた。

「暑い……」
「脱ぐか?」
「うん、脱ぐ」

 気付いたオリバーが代わりに脱がせてくれた。汗で湿った肌に夜のひんやりとした空気が触れて、一糸纏わぬ姿となったメリッサが解放感に足を投げ出す。

「オリバーの言っていた通りだったなあ」

 まじまじと呟けば、脱いだメリッサの服をベッド下に投げたオリバーの視線が向いたのを感じる。

「こんなに良いものだとは思わなかった。ふふっ、気持ち良かった」

 今までしてきたのは、ただ挿れて、相手が快感を得るだけのものだったと、改めて理解した。メリッサにとって、こんなに全身溶かされるような絶頂は初めてだったのだから。
 思わず笑みをこぼせば、対するオリバーは呆気に取られたような顔をしていた。

「お、前は──っ」

 顔がわずかに赤い気もしたが、すぐに顔を反らして手で覆ってしまったためよく見えない。どちらにしろ、今のメリッサの高揚感の前には、そんなことは些細なことだ。

「オリバーはいつも寂しく自己処理なのに、どこでこんなことを知ったんだ?」
「言い方……! それは、まあ、仲間内でな」
「つまり第一の世間話は、大半が猥談ということか」
「……あー、否定はできない」

 巷では好物件部隊として人気の第一部隊の内情が、予想以上に盛りきった野郎ばかりとは嘆かわしい。憧れている女子たちが知ったら泣いてしまいそうな事実に、メリッサは声を上げて笑ってしまった。

「揃いも揃って見た目は良いのになあ」
「俺以外はな」

 ムッとしたような顔のオリバーが再度覆いかぶさってきた。しかしそれこそメリッサにとっては心外だった。

「ん? 私は男らしくて整った顔だと思っているぞ」

 首を傾げて告げれば、時が止まったかのようにオリバーの表情が固まった。こう言われるのは意外だったのか? と思ったが、そういえば見目についてどうこう言ったことはなかったと思い出す。
 しかし、メリッサにとって今それはどうでもいいことだった。

「それより、これは大丈夫なのか?」

 ふふっと口角を上げて手を伸ばす。触れたオリバーのそこは、布越しでもわかるくらいに張りつめていた。 

「……っ、触るなって、結構キツいんだから」
「挿れるつもりはないんじゃなかったか?」
「それはお前が──っ」
「まあ、私も人のことは言えないんだけどな」

 からかうように煽るメリッサこそ、熱は引いていなかった。それどころか、更なる大きな快感を求める身体にもじもじと太ももを擦り合わせる。

「なあオリバー、もっと欲しい」
「お前……っ、変わりすぎだろ?」
「オリバーにしてもらうの気持ち良い」

 とにかく次の刺激が欲しくてねだったら、オリバーは呆れるような葛藤するような、とにかく長いため息を吐き出した。
 だが、

「俺もだいぶ酔ってるな」

 直後には、吹っ切ったかのようにメリッサの下半身に手をかけると、すっかり立ち上がった自身を取りだし、濡れそぼった秘部にあてがう。入口に先端が触れただけで、はしたないほど再び蜜が溢れた。

「あ、早く……っ、ねえオリバー」
「せかす、な、って……っ」
「んっ、あああっ!」

 一気に貫かれて、オリバーのものが根元まで埋まった。中を擦り上げながら押し入ってくる感覚にたまらず背中が反る。濡れたメリッサのそこは難なく全てを咥え込んだ。
 そして、その瞬間──二人は目を見開き、思わず顔を見合わせた。

「…………オリバー」
「…………これは」

 言葉にしなくとも思いは伝わる。まさに以心伝心とばかりに互いの心情が手に取るようにわかる。
 ──おいおい、とんでもなく良いぞ。と。

 オリバーは激しく腰を打ち付けてきたし、メリッサは逃さないとばかりにその腰に足を絡みつかせた。

「ああっ、あんっ、ひあ、あ、そこっ、そこ、いいっ、ああっ」

 口からは止めどない喘ぎ声しか出てこなかった。ちょうど奥の良いところに当たるのだ。的確に抉るように突かれ、深く穿たれるたびに瞼の裏にはチカチカと火花が弾ける。
 オリバーの動きは緩むことなく、それどころか次第に勢いを増していく。腰を掴まれて、ガツガツという表現がピッタリなほど、メリッサは激しく奥を抉られた。
 お互い、交わった瞬間にわかった。

「すごいっ、すごいの! オリ、オリバーっ、あっ、あんっ、もっとして!」
「わかってる……っ、これは、やば──っ」

 驚くほど相性が良すぎる。
 当然ながら、身体のだ。

「良すぎて、あっ、ああっ、また」
「俺も、もう」
「ふ、うっ、オリ──」
「メリッサ……!」
「ひあっ!」

 普段『お前』としか呼んでこないオリバーに、耳元で名前を呼ばれた。掠れて異様に色っぽさを感じさせる声に、ゾクッと痺れるような刺激が背筋を駆け抜ける。

「あ、むり、あああっ……!」

 たまらず、メリッサはすでに三度目だというのに呆気なく果てた。

「く……っ!」

 同時に息を詰めるようなオリバーの声と共に、中へ放たれた熱を感じる。けれど──

「……」
「……」

 交した視線は、知ってしまった快楽をさらに求めていた。どちらからともなくまた腰が揺れる。
 結局メリッサは何度なんて覚えていないほどイかされたし、オリバーの精も受け止めた。

 そして明け方も近くなった頃──無情にも、酔いというのは覚めるのだ。


 ──え、ええええええ?!

 全裸で横たわるメリッサは頭を抱えた。
 深夜のテンションも落ち着き、酔いも醒めだす明け方近い時間帯。冷静さを取り戻し始めた頭は、先ほどまでの痴態を次々と脳裏に映し出す。

 ──うそ、私、オリバーと? オリバーと?!

 散々「もっと」と喘ぎ狂っていた己の姿を消し去るべく頭を振るが、悲しいかな事実は消えない。ザッと血の気が引いていく。
 恐る恐る横を見れば、こちらに背を向けて同じように頭を抱えているオリバーの姿が目に入った。聞かなくてもわかる。これは同じことを考えている。

 酒の勢いで盛り上がった猥談に、ひどく興味を惹かれて自分も体験してみたくなった。
 オリバーなら気の知れた間柄だしいいかな、と思った。
 それがベストだと思った。

 ──どこがベストだ何ひとつよくないだろう!

 自分自身のふざけた思考回路に激しくツッコミを入れる。
 お酒って怖い。
 メリッサはつくづくその恐ろしさを思い知った。だが悠長にそんなことを考えている場合ではない。意を決して起き上がると、横の相手に声をかける。

「……オリバー」

 呼べば、ビクッと大きな背中が面白いように揺れた。──かと思えば、驚くほど俊敏に身体が跳ね起きる。

「申し訳ない!」
「おお……っ」

 流れるような土下座だった。
 まさかオリバーの土下座を見られる日がこようとは。と、しばし感動してしまったがそれどころではない。

「いや、私の方もどうかしていた。……ここは、一旦なかったことに……しない、か?」
「あ、ああ。そうだな、一旦……」
「悪いのは酒ということで」
「お前が、それでいいなら」

 自分で言いながら、一旦てなんだよ。とメリッサは思う。が、狼狽えながらもオリバーも同意したのでそれで良しとする。

「というわけで速やかに動くぞ」

 言うが早いかメリッサは自身の服を掻き集めた。まずは全裸のこの状態を何とかしなくてはいけない。

「いいかオリバー。ここからは任務と同じだ」
「は……? は?」

 まだ状況に追い付いていないのかオリバーは間抜けな声を上げる。しかし酔いの醒めたメリッサの頭は冷静に回り始めていた。

「昨夜の状況を思えば大半の騎士は酒場で酔い潰れているはずだ。一晩使って構わないと店主の許しも出ていたからな。私の同室だった女性騎士らは飛び抜けて酒豪ばかりだから、おそらく酒場だろう。朝食後にはこの街を断つ予定になっているから、早く戻って私はこの跡を消す。全ては静かに素早く確実にだ」

 激しい情事で体中それは色々なものでベトベトするが、構わず衣服をまとった。早くここを出てこれらを洗い流してしまいたい。
 そしてオリバーと向かい合えば、メリッサの言葉で徐々に思考は戻ってきたらしい。真面目な顔で頷いていた。まるで命を懸けた極秘任務に向かうような、頼もしい面構えになっている。それを見てメリッサも気を引き締めてこくりと頷いた。

「オリバーは夜の女性でも呼んだってことで」
「え?! いや、それは……」

 しかしその頼もしい顔も、メリッサが告げた言葉で絶望したように狼狽えた。

「別にわざわざ自分から言わなくてもいいんだぞ。どうしたって後から掃除が入れば宿屋の人には何してたかバレるんだから、一応そういう体でいこうってこと」
「それでも俺だけ夜の女性を呼んでハメ外してたって思われるのが……」
「どうせ第一も、飲んでから仲良く街の娼館に繰り出したんじゃないのか?」
「……今日ばかりは、そうであってほしいと思ってしまう……」
「第一はそうなんだなって思われるだけだって。それに、昨夜のオリバーはハメ外してなかったのか?」

 あれで? と視線で訴えれば、もはや反論出来なくなったらしい黒い頭が項垂れた。

「ということで、最優先事項は隊の面子にばれないこと。オリバーはこの部屋の処理を頼む。互いに迅速にな」
「……了解した」

 そして頷き合いメリッサは立ち上がるが、同時に昨夜の名残がドロリと溢れ出す感覚に慌てて部屋に駆け戻った。
 案の定同室者は不在で、急いで身体を洗い事後処理するものの、次から次にオリバーのものが溢れて太ももを伝い落ちる。なんだこの量?! と、昨夜のお互いの痴態に引きながら、朝方から一体何をしているのだろう……と一人遠い目になってしまった。
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