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03 おや?王子の様子が……
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辿り着いたのはベッドが置かれた客間のような寝室。
灯りがともされ、ベッドも綺麗に整えられていることから、事前に準備されていた部屋らしい。
(な、なんなのかしらこの部屋……)
目を白黒させている間にもリオネルはマルティナをベッドに座らせると、なぜか上着を脱ぎ始め、すでにシャツに手をかけている。
突然の急展開に目を剥いた。
なぜこの人は脱ぎ始めているのだろうか。
「で、殿下!?」
おそらく――いや間違いなく、人違いから始まりなにか大きな勘違いが発生していってる気がする。
とはいえ、こんなしがない伯爵令嬢が第二王子に物申していいのだろうか。指摘なんてしようものなら激しい叱責を受けないだろうか。
マルティナにとって、目上の者に異を唱えるなどありえない。これまでの経験からそんな思いがグルグルと頭を巡った。
ただただ、どうしようという困惑だけが胸の中で渦巻いていく。
結果としてマルティナは反論する機会を失い、完全にこの場の勢いに流されている。
「あなたの名前を聞いてもよろしいですか?」
問われてようやく我に返った。
「マ、マルティナと申します……?」
「リオネルです。よろしく願いします」
わざわざ名乗ってもらわなくとも、相手の名前はよく知っている。
そして一体なにがよろしくなのかがわからない。
「今日は感謝します。あなたはかなりの手練れだと聞いているので、ぜひ感じたことをすべてご教授願いたいのです。その……指南役を任されたのならばすでに知っていると思いますが、私も急がなくてはならなくて……」
シュンと両肩を下げながら困り切ったように言われたとて、マルティナの感想はただひとつ。
(すでにどころか、私はなにも知りませんが)
ぽかんと見上げていたら、しばしの沈黙が流れた。
すると、なにやらハッと思い至ったようにリオネルが慌てだす。
「あの、でん――」
「なるほど、まずはお相手を脱がせるところから。というわけですね、失礼しました……!」
「脱が……?」
あわあわと眉を下げる気弱そうな青年の口から、とんでもない台詞が聞こえた気がする。
脱がせるとは? と、固まっている間にリオネルの手がマルティナの背中に伸びた。かと思えば、堅苦しいドレスはさっさと剥かれて、気付けばマルティナはあっという間に肌着姿となる。
言葉通り、見事に脱がされた。
「えっ?」
口を挟む暇がないほど、やけにリオネルの手際が良すぎではないだろうか。
頼りない外見に反して女性の服を脱がせる手に迷いがない。
ここまでひとすらに混乱しっぱなしなのだが、マルティナこそ厳しすぎる両親の教育の賜物というべきか、感情表現が酷く乏しいため顔には出ていないことだろう。
きっとこちらがすっかり取り乱しているだなんて、露ほども思っていないに違いない。
傍から見たら、へにょりと眉を下げておどおどとした半裸の青年が、大層真面目な顔をした令嬢のドレスを粛々と脱がせている光景。
どう考えてもおかしい気がするが、さらにおかしなことに、リオネルの手は真っすぐとマルティナの胸に伸ばされた。
そして当然のように、膨らんだ豊かな乳房に男性らしい骨ばった手のひらが添えられる。
「ええっ!?」
「なるべく詳細に身体の状態を教えてもらえると助かります。あと、できるだけ意識を保ってもらえるとありがたいのですが……」
「か、かしこまりました……?」
身体の状態とは? 意識を保つ? と、疑問が浮かんだが、乳房に添えられていただけの手が肌着の隙間から直接素肌に触れてきたことで、さすがにマルティナにもこれからなにが起こるのかが察せられた。
それまで気弱にしか見えなかったリオネルの様子が、明らかに変わったのだ。
所在なさげだった手は明確な意思を持ったように、指の腹で肌の感触を確かめながら、ゆるゆると弧を描くように膨らみの横を撫でてくる。
突然情欲をまとった指先にマルティナの身体は一瞬緊張が走ったが、リオネルの手は肌になじむ温かさで、不思議なことに肌と同化したかのような一体感があった。触れられていることに違和感を感じず、それよりもむしろ――。
「……ふあっ」
熱を帯びた吐息に、マルティナ自身が戸惑った。
男性に触れられてこんな感想を抱いたことは無かったから。
自分の身体に起きた反応が信じられなかった。
触れられて違和感を感じるどころか、むしろ――『心地いい』だなんて自分が思うとは。
こぼれる吐息が熱を増していくのも、きっと気のせいではないだろう。
瞼を震わせながら、混乱のまま不意に視線を上げたマルティナは思わず息を詰まらせた。
「――っ」
そこには気弱な第二王子などいなかった。
すっかり人が変わったように、黄金の眼差しがマルティナのグレーの瞳を射抜くように真っすぐと見つめている。
ごくりと喉が鳴った。
「いっそ、どこまで持つか楽しみですね」
妖艶なまでに、ふっと細められた瞳に目を奪われる。
第一王子の陰に霞んでしまう印象に残らない第二王子。だなどと、この姿を見て信じる者がはたしているだろうか。
(どっ、どういうことぉっ?)
ぺろりと、リオネルの薄い唇の隙間から覗いた赤い舌が、上唇を右から左へ舐めるように動く。その様をマルティナは食い入るように見つめていた。
心臓が脈打つ鼓動が早まる。
血が沸き立つように全身が熱くなる。
捕食者に見定められたかのようだった。
「ええぇぇ……っ?」
一体なにがおきているのかさっぱりわからないマルティナの口からは、呆気にあとられた素っ頓狂な声しか出なかった。
灯りがともされ、ベッドも綺麗に整えられていることから、事前に準備されていた部屋らしい。
(な、なんなのかしらこの部屋……)
目を白黒させている間にもリオネルはマルティナをベッドに座らせると、なぜか上着を脱ぎ始め、すでにシャツに手をかけている。
突然の急展開に目を剥いた。
なぜこの人は脱ぎ始めているのだろうか。
「で、殿下!?」
おそらく――いや間違いなく、人違いから始まりなにか大きな勘違いが発生していってる気がする。
とはいえ、こんなしがない伯爵令嬢が第二王子に物申していいのだろうか。指摘なんてしようものなら激しい叱責を受けないだろうか。
マルティナにとって、目上の者に異を唱えるなどありえない。これまでの経験からそんな思いがグルグルと頭を巡った。
ただただ、どうしようという困惑だけが胸の中で渦巻いていく。
結果としてマルティナは反論する機会を失い、完全にこの場の勢いに流されている。
「あなたの名前を聞いてもよろしいですか?」
問われてようやく我に返った。
「マ、マルティナと申します……?」
「リオネルです。よろしく願いします」
わざわざ名乗ってもらわなくとも、相手の名前はよく知っている。
そして一体なにがよろしくなのかがわからない。
「今日は感謝します。あなたはかなりの手練れだと聞いているので、ぜひ感じたことをすべてご教授願いたいのです。その……指南役を任されたのならばすでに知っていると思いますが、私も急がなくてはならなくて……」
シュンと両肩を下げながら困り切ったように言われたとて、マルティナの感想はただひとつ。
(すでにどころか、私はなにも知りませんが)
ぽかんと見上げていたら、しばしの沈黙が流れた。
すると、なにやらハッと思い至ったようにリオネルが慌てだす。
「あの、でん――」
「なるほど、まずはお相手を脱がせるところから。というわけですね、失礼しました……!」
「脱が……?」
あわあわと眉を下げる気弱そうな青年の口から、とんでもない台詞が聞こえた気がする。
脱がせるとは? と、固まっている間にリオネルの手がマルティナの背中に伸びた。かと思えば、堅苦しいドレスはさっさと剥かれて、気付けばマルティナはあっという間に肌着姿となる。
言葉通り、見事に脱がされた。
「えっ?」
口を挟む暇がないほど、やけにリオネルの手際が良すぎではないだろうか。
頼りない外見に反して女性の服を脱がせる手に迷いがない。
ここまでひとすらに混乱しっぱなしなのだが、マルティナこそ厳しすぎる両親の教育の賜物というべきか、感情表現が酷く乏しいため顔には出ていないことだろう。
きっとこちらがすっかり取り乱しているだなんて、露ほども思っていないに違いない。
傍から見たら、へにょりと眉を下げておどおどとした半裸の青年が、大層真面目な顔をした令嬢のドレスを粛々と脱がせている光景。
どう考えてもおかしい気がするが、さらにおかしなことに、リオネルの手は真っすぐとマルティナの胸に伸ばされた。
そして当然のように、膨らんだ豊かな乳房に男性らしい骨ばった手のひらが添えられる。
「ええっ!?」
「なるべく詳細に身体の状態を教えてもらえると助かります。あと、できるだけ意識を保ってもらえるとありがたいのですが……」
「か、かしこまりました……?」
身体の状態とは? 意識を保つ? と、疑問が浮かんだが、乳房に添えられていただけの手が肌着の隙間から直接素肌に触れてきたことで、さすがにマルティナにもこれからなにが起こるのかが察せられた。
それまで気弱にしか見えなかったリオネルの様子が、明らかに変わったのだ。
所在なさげだった手は明確な意思を持ったように、指の腹で肌の感触を確かめながら、ゆるゆると弧を描くように膨らみの横を撫でてくる。
突然情欲をまとった指先にマルティナの身体は一瞬緊張が走ったが、リオネルの手は肌になじむ温かさで、不思議なことに肌と同化したかのような一体感があった。触れられていることに違和感を感じず、それよりもむしろ――。
「……ふあっ」
熱を帯びた吐息に、マルティナ自身が戸惑った。
男性に触れられてこんな感想を抱いたことは無かったから。
自分の身体に起きた反応が信じられなかった。
触れられて違和感を感じるどころか、むしろ――『心地いい』だなんて自分が思うとは。
こぼれる吐息が熱を増していくのも、きっと気のせいではないだろう。
瞼を震わせながら、混乱のまま不意に視線を上げたマルティナは思わず息を詰まらせた。
「――っ」
そこには気弱な第二王子などいなかった。
すっかり人が変わったように、黄金の眼差しがマルティナのグレーの瞳を射抜くように真っすぐと見つめている。
ごくりと喉が鳴った。
「いっそ、どこまで持つか楽しみですね」
妖艶なまでに、ふっと細められた瞳に目を奪われる。
第一王子の陰に霞んでしまう印象に残らない第二王子。だなどと、この姿を見て信じる者がはたしているだろうか。
(どっ、どういうことぉっ?)
ぺろりと、リオネルの薄い唇の隙間から覗いた赤い舌が、上唇を右から左へ舐めるように動く。その様をマルティナは食い入るように見つめていた。
心臓が脈打つ鼓動が早まる。
血が沸き立つように全身が熱くなる。
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「ええぇぇ……っ?」
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