【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)

高瀬ユキカズ

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もりもりさんの結婚

第405話 男と戦うことに

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「俺たちのこの装備を狙っているな」
「私たちの見た目が幼いから舐められたんだろうね」

 私たちはすっかりハンターたちに囲まれてしまう。男の1人は、生きて返さないと言っていた。どこまで本気だろうか。

「本当にこちらを殺しにくるつもりかな?」
「どうだろ?」
「ダンジョン配信をしていることも理解していない?」

 現在は配信中だ。頭上をドローンが飛んでいて、映像は全世界に配信されている。
 私は相手を刺激しないように、落ち着いて対処するようにしていた。

「私たちをどうするつもりですか?」

「のこのこと俺等おれらの巣にやってきたお前らが悪い。装備をいただいて、お前らはモンスターの餌にでもする」

「私たちを殺すということですか?」
「そういうことになるな」

「たかが、装備を得るためだけに? それだけのために?」
「ただの装備じゃないだろう? 1人あたりの装備は数億DPはしそうだ」

 私たちが身につけている装備は、ランクで言ったら上の下といったところだ。装備は1人あたり平均5億DPの仕入れだ。それなりの高級品ではある。だが実際は、すべてのパーツでエンチャントに成功しており、価値的にも性能的にも10倍以上に跳ね上がる。

「この様子を誰も見てないと思っているかもしれませんが、私たちはダンジョン配信を行っています。ここでの様子は世界中に配信されています」

 男は頭上に目を向ける。ドローンは無音で飛んでいるわけではない。気が付かないはずがなかった。

「だな。撮影しているのはわかっていた。しかし、そっちが悪いんだぜ。ここに来たのは、アイテムを奪おうとする強盗3人組。危険を感じた俺等おれらが、お前ら3人を殺してもしかたないと思うが?」

「どういう理屈ですか……」

 ハンターは自分の正当性を主張するが、完全な屁理屈だった。

「てめぇらが悪い。階段を降りてこの光景を目にしたら、引き返しゃあいいんだ。ここを狩り場にしているのは明らか。なのに、そこに居座ってゴミ拾いなどと抜かしながらゴーレム鉱石を拾い集めようとするんだからな」

 周囲を取り巻くハンターたちも、主張してくる。「許されねえだろ」「俺たちの縄張りに入ってくるほうが悪い」「この盗人どもが」私たちを悪者にしようと勝手なことを言っていた。

「ダンジョンの一部を占有する権利なんて、誰にもありません。他のハンターが入ってくることは当たり前に起こります」

 少し離れた場所から、「だから、そうならねえようにしたんじゃねえか」と声が聞こえた。

「お前! 黙ってろ!!」

 男が叫ぶと、しまったという感じに引っ込んでいくハンターがいた。

「やはり、上のモンスターはあなたがたが集めたのですね?」

 呆れながら私が言うと、男は開き直る。

「だったらどうした? 集めたら何か悪いんかい? ダンジョンで何をしようが自由だろうが」

「自由なわけがありません。日本人ハンターが多かった頃は、みんな暗黙のルールとマナーを守っていました。モンスターを意図的に集めるのは他のハンターを危険に晒します。許されない行為です」

「うるせえ小娘だ。もういい。迷惑料として1億DPを置いていけや。今回はそれで手を打ってやる」

 男は手を差し出すが、そんな大金を支払えるはずもない。

「払うわけがないでしょう」

「なら、力づくで奪うだけだ。切り刻んで豚の餌にしてくれる。生意気な日本人の小娘めが」

 床にペッと唾を吐く。周囲を取り巻くハンターたちもじりじりと包囲を狭めてきた。
 私も湊ちゃんも春日井君も武器を取ることはしない。彼らと戦うつもりはなかった。ハンター同士で戦うなんて馬鹿げているからだ。

「私たちに戦う意思はないですよ。それに、上にいたあの大量のモンスターは後ろの2人が倒したんです。それだけのハンターを前にしていることがわからないのですか?」

「その2人だけで? あの数を倒しただと? あはははは。わかりやすい嘘だ。それと、お前はどうしたんだ? 戦いに参加しなかったのか?」

「私は1人でゴミ拾いをしていましたから」

「お前が一番ザコか。ゴミ拾いしかできない能無しが」

「私がこの3人では一番強いんですが」

「ほう、ならその鼻をへし折ると気持ちよさそうだなあ」

 男は剣を抜き、切っ先をこちらに突きつけてきた。まだ間合いは遠い。すぐに斬りつけられるような距離ではない。

「ほら、抜けよ。俺様にまいったと言わせたら謝ってやる。どの程度の実力なんだ? ゴーレムの1体でも倒せるのかよ?」

「だから、戦う意思なんてないですって」

 ミスリルの大剣は背中に背負ったままだ。武器を持つ意思はないことを示すため、手を開いて相手に見せる。
 だが、男はなおも煽ってくる。

「ほら、やりあおうぜ。自信があるんだろ? 俺に勝ったら、ここの仲間も全部、日本から出ていってやるよ。国に帰って少女に負けちゃいましたってベソかきながらハンターは引退だな」

 男からは威嚇だけでなく、本当に向かってきそうな雰囲気があった。剣を両手で握っており、下半身はいつでも踏み出せる姿勢を取っていたからだ。

 私は軽くため息を吐く。

「ちなみに、あなたのレベルは?」

「教えるわけねえだろ」

「90以下じゃまったく相手にならないですよ?」

 もちろん目の前の男1人の話ではなく、ここにいる全員のことだ。全員がレベル90を超えていて、やっとまともな戦いとして成立するだろう。

「はん? ふざけた物言いが」

 男は今にも飛びかかってきそうだった。争いになることは避けられなそうであった。
 私は諦めて男に問いかける。

「勝敗はどうやって付けますか? まいったと言ったら? 戦闘不能になったら?」

「あるいは、てめえがおっ死んだらな!」

 質問している途中で、突然男は剣を頭上に振り上げながら一歩を踏み出した。
 私は後方へステップを踏んで下がりながら、魔法を詠唱する。

「メタル・プリズン!」

 メタル・プリズンは金属製の丸い棒を出現させる。床から天井まで伸びるが、これ自体を攻撃や防御に使うわけではない。
 金属の棒は男を中心に円を描くように20本出現していた。斜めに交差するように伸びた棒もあり、男の剣を止めていた。

「なんだ! これは!?」

 もりもりさんはこれからの時代、ハンター同士の戦闘が行われると言っていた。私もその考えに倣って、対人対策を考えてきた。

 相手を拘束するための手段、簡易的な牢を作り出すのがメタル・プリズンだ。

 20本の金属の柱に囚われ、男は身動きが取れずにいる。

「おい、卑怯だろうが! 早くこれをなんとかしやがれ!」

 周りを取り巻くハンターたちもどうしたらいいかわからない様子で、ただ見ている。

 後ろでは春日井君が呑気そうな声で言った。

「筑紫、ブラック・ゴーレムがこっちに来ちゃったけど」

 ここにいるハンターたちはブラック・ゴーレム狩りの途中だったのだろう。ゴーレムを放置してここに集まったようだ。

 ブラック・ゴーレムがゆっくりと近づいてくる。何をターゲットにしているのかは明らかだった。

 男が後ろを振り向きながら、叫んでいた。

「待て! 待て! 死ぬって! 早くこの柱を解け! 解いてくれ!!」

 他のハンターたちは、いつでも逃げられる態勢でいた。
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