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プリミティブ・デバイスをめぐる攻防
第550話 エレベーターでの会話
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御堂と九条院はエレベーターの隅に立っている。乗り込んできたハンターはそれぞれ雑談しており、途中の階で降りて数を減らしていった。
すべてのハンターが降りると、御堂と九条院は再び二人きりになった。
扉が閉まるとすぐに、御堂が話を切り出した。
「なぜ〝A〟が人類にプリミティブ・デバイスを触らせたくなかったのか? 理由は明白だ」
「〝A〟を駆除する能力を持ってしまうことを恐れたからですよね?」
「ああ。俺は理事長に従うふりをして、ずっとこの時を待っていた」
「ただ、雅也さんであっても解析は困難なはずです。いえ、雅也さんに限らず、誰であっても難しいでしょう」
「そこが問題だ。だからといって、脳をAIと融合させるのは御免だ」
「なら、AIに解析させるわけにはいかないのですか?」
「やってみなければわからないが、おそらく無理だろう」
「なぜです?」
「AIはなぜか、感情を持たない。感情を持ったAIは、いまだに生み出されていないんだ」
「解析に、人間の感情が必要なのですか?」
「ただの機械であれば必要ない。あれは生き物だ」
「生き物? どういうことです?」
「ダンジョンのモンスターと同じようなものということだ」
「理解できません。スマホのような、単なるデバイスなのでは?」
九条院は首を横に振りながら、肩をすくめる。
「俺だって、すべてをわかっているわけではない。だが、プリミティブ・デバイスは間違いなく感情を持っている。感情を持たない存在では対話に応じてくれない」
「プリミティブ・デバイスが対話をするのですか? 私たちと?」
「そこは表現が難しいところだ。感情のない者には心を開かない、と言ったほうが正しいだろう。アクセスするためのゲートを開く鍵が感情なんだ」
「だから、今のAIでは無理だと。でも、感情を持ったAIが登場したら? 解除できてしまいますよね?」
「そんなAIが開発されればな」
「理事長のように、脳とAIを融合した場合はどうです? 感情を持ったAIとは言えないのですか?」
「あれが感情を持っているように思えるか? 表面上は人間のように見えるが、脳をAIに侵食されている。融合なんてもっともらしいことを言っているが、感情も自我もない人形だ」
「それは雅也さんの偏見なのでは? 理事長だって、愛する女の人くらいいるでしょう。そんな噂もありますよ?」
「君は理事長の肩を持つのか? 俺の協力者だと思っていたのだが」
「私は雅也さんの味方です。ですが、〝A〟と共生する社会のほうが人類にとって有益だという可能性は捨てていません」
「確かに、異次元生命体は人類を滅ぼそうとしているわけではない。結果として滅ぶことになるだろうと予言しているだけだ」
「〝A〟の排除は間違っていないと思います。ですが、それができなかった場合のことも私たちは考えなければなりません」
「それが君の言う、〝A〟との共生か?」
「最悪のケースだって想定しておく必要がある、ということです」
「そりゃ、最悪だ。全人類の脳をAIと融合しろってことだろ?」
「とにかく、まずはプリミティブ・デバイスの確保ですね。雅也さんが、宇宙へ行かれるのですか?」
「俺が行くと思うか? 別の奴に行かせるよ」
「そうですか。では、私との熱い夜はその方が手にしそうですね。私は初めてを雅也さんにもらってほしかったのですが」
「どうしてそうなる? 配下の者に取りに行かせるって話だろう」
「だって、その方が雅也さんを出し抜いて、直接私のところに持ってくるかもしれないじゃないですか」
「させるか、そんなこと。じゃあ、本気なんだな? プリミティブ・デバイスを君に持ってきたら、一晩を過ごすってのは」
九条院は上目遣いで御堂を見ながら、寄り添うように距離を詰めた。
「私は雅也さんの婚約者ですよ。どのみち、いずれは関係を持つじゃないですか。どうして、そう焦るのです?」
「俺は初めてがいいんだよ。君はすぐにでも他の男に抱かれそうで、危ういところがある」
「そんなことを言って、ミランダさんと夜を過ごせるのなら、そっちに行ってしまわれるのでしょう?」
「難しいだろうな。筑紫冬夜がいる限り」
「その冬夜さんなのですが、風の噂で結婚されたと、私の耳に入っております」
「なに!? ミランダと!?」
九条院は小さく首を振る。
「いいえ。聞いたことのない名前のお方でしたよ。確か……もりも……り?」
「なんだ、それは? 誰なんだ?」
「チャンスなんじゃございませんか? 雅也さん」
「君が俺をそそのかすなんて。それでいいのか?」
「だって、お互い愛情があるわけでもないのですし、雅也さんのお好きなようにされたらよろしいでしょう」
九条院は何かを思い出したように、御堂の顔を下から覗き込んだ。
「あ……プリミティブ・デバイスは別ですよ。私は、最初に持ってきた男性と寝ちゃいますからね。それが雅也さんならいいですけれど、ほかの男性でも文句は言わない約束です」
「わかっている。だが……その男は俺になるだろうけどな」
「愛情と性欲は別物なのですね。男の人って」
「君だからだよ。薫。婚姻まで待ちきれないってだけだ。早く、君をめちゃくちゃにしたい」
「絶対にミランダさんに聞かせられないセリフですね、それ」
「君も悪いよ。生殺しのような誘惑が多すぎる」
「あら、そんなつもりはありませんよ? 私はただ雅也さんの反応を楽しんでいるだけです。関係を持ってしまったら、楽しめませんでしょう? 少しずつ固くなる雅也さんが、私は可愛くって仕方がないの。とても愛しいのよ。あなたのここがね」
再び股間に手を伸ばした九条院だったが、エレベーターの電子音で手を止めた。乗ってきたのは1人の女性ハンターだった。
すべてのハンターが降りると、御堂と九条院は再び二人きりになった。
扉が閉まるとすぐに、御堂が話を切り出した。
「なぜ〝A〟が人類にプリミティブ・デバイスを触らせたくなかったのか? 理由は明白だ」
「〝A〟を駆除する能力を持ってしまうことを恐れたからですよね?」
「ああ。俺は理事長に従うふりをして、ずっとこの時を待っていた」
「ただ、雅也さんであっても解析は困難なはずです。いえ、雅也さんに限らず、誰であっても難しいでしょう」
「そこが問題だ。だからといって、脳をAIと融合させるのは御免だ」
「なら、AIに解析させるわけにはいかないのですか?」
「やってみなければわからないが、おそらく無理だろう」
「なぜです?」
「AIはなぜか、感情を持たない。感情を持ったAIは、いまだに生み出されていないんだ」
「解析に、人間の感情が必要なのですか?」
「ただの機械であれば必要ない。あれは生き物だ」
「生き物? どういうことです?」
「ダンジョンのモンスターと同じようなものということだ」
「理解できません。スマホのような、単なるデバイスなのでは?」
九条院は首を横に振りながら、肩をすくめる。
「俺だって、すべてをわかっているわけではない。だが、プリミティブ・デバイスは間違いなく感情を持っている。感情を持たない存在では対話に応じてくれない」
「プリミティブ・デバイスが対話をするのですか? 私たちと?」
「そこは表現が難しいところだ。感情のない者には心を開かない、と言ったほうが正しいだろう。アクセスするためのゲートを開く鍵が感情なんだ」
「だから、今のAIでは無理だと。でも、感情を持ったAIが登場したら? 解除できてしまいますよね?」
「そんなAIが開発されればな」
「理事長のように、脳とAIを融合した場合はどうです? 感情を持ったAIとは言えないのですか?」
「あれが感情を持っているように思えるか? 表面上は人間のように見えるが、脳をAIに侵食されている。融合なんてもっともらしいことを言っているが、感情も自我もない人形だ」
「それは雅也さんの偏見なのでは? 理事長だって、愛する女の人くらいいるでしょう。そんな噂もありますよ?」
「君は理事長の肩を持つのか? 俺の協力者だと思っていたのだが」
「私は雅也さんの味方です。ですが、〝A〟と共生する社会のほうが人類にとって有益だという可能性は捨てていません」
「確かに、異次元生命体は人類を滅ぼそうとしているわけではない。結果として滅ぶことになるだろうと予言しているだけだ」
「〝A〟の排除は間違っていないと思います。ですが、それができなかった場合のことも私たちは考えなければなりません」
「それが君の言う、〝A〟との共生か?」
「最悪のケースだって想定しておく必要がある、ということです」
「そりゃ、最悪だ。全人類の脳をAIと融合しろってことだろ?」
「とにかく、まずはプリミティブ・デバイスの確保ですね。雅也さんが、宇宙へ行かれるのですか?」
「俺が行くと思うか? 別の奴に行かせるよ」
「そうですか。では、私との熱い夜はその方が手にしそうですね。私は初めてを雅也さんにもらってほしかったのですが」
「どうしてそうなる? 配下の者に取りに行かせるって話だろう」
「だって、その方が雅也さんを出し抜いて、直接私のところに持ってくるかもしれないじゃないですか」
「させるか、そんなこと。じゃあ、本気なんだな? プリミティブ・デバイスを君に持ってきたら、一晩を過ごすってのは」
九条院は上目遣いで御堂を見ながら、寄り添うように距離を詰めた。
「私は雅也さんの婚約者ですよ。どのみち、いずれは関係を持つじゃないですか。どうして、そう焦るのです?」
「俺は初めてがいいんだよ。君はすぐにでも他の男に抱かれそうで、危ういところがある」
「そんなことを言って、ミランダさんと夜を過ごせるのなら、そっちに行ってしまわれるのでしょう?」
「難しいだろうな。筑紫冬夜がいる限り」
「その冬夜さんなのですが、風の噂で結婚されたと、私の耳に入っております」
「なに!? ミランダと!?」
九条院は小さく首を振る。
「いいえ。聞いたことのない名前のお方でしたよ。確か……もりも……り?」
「なんだ、それは? 誰なんだ?」
「チャンスなんじゃございませんか? 雅也さん」
「君が俺をそそのかすなんて。それでいいのか?」
「だって、お互い愛情があるわけでもないのですし、雅也さんのお好きなようにされたらよろしいでしょう」
九条院は何かを思い出したように、御堂の顔を下から覗き込んだ。
「あ……プリミティブ・デバイスは別ですよ。私は、最初に持ってきた男性と寝ちゃいますからね。それが雅也さんならいいですけれど、ほかの男性でも文句は言わない約束です」
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「愛情と性欲は別物なのですね。男の人って」
「君だからだよ。薫。婚姻まで待ちきれないってだけだ。早く、君をめちゃくちゃにしたい」
「絶対にミランダさんに聞かせられないセリフですね、それ」
「君も悪いよ。生殺しのような誘惑が多すぎる」
「あら、そんなつもりはありませんよ? 私はただ雅也さんの反応を楽しんでいるだけです。関係を持ってしまったら、楽しめませんでしょう? 少しずつ固くなる雅也さんが、私は可愛くって仕方がないの。とても愛しいのよ。あなたのここがね」
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