156 / 454
153
しおりを挟む
今回の昇格試験の会場であるメルクの冒険者ギルドの訓練場は既に準備が整っていた。
バルーカで試験を受けた際と同じように試合が行われる場所がロープで区切られ、簡易的な観客席が作られている。
その観客席の最前列に机が置かれており2人の男性が座っているが、その内の1人に見覚えがあった。
「あの人は確かバルーカの試験の時に……」
「ああ、ラックさんだな。
俺達がバルーカの冒険者ということでメルクのギルドから解説を依頼されたんだと。
昨日宿に来て色々聞かれたよ」
よその街のギルドから解説を依頼されるとか、本当に解説者が職業とか……
いや、落ち着け、依頼されたということは冒険者ではある訳だ。
「ラックさん自体は何等級なんです?」
「確か4等級じゃなかったかな?
もうかなり前から実質的には引退状態みたいだが」
「引退状態なのにあんなに冒険者事情に詳しいのですか?」
「引退状態だからこそだな。
パーティー組んでいたら情報収集できる時間なんて限られるからな」
「解説する為にそこまでの努力を……」
「ほとんど趣味みたいなもんだと思うぞ。
色々な冒険者のことを知るのが楽しいとか言ってたしな。
ギルドもラックさんから冒険者に関する情報を定期的に買い取っているみたいだ」
結局は趣味ってことかい。
まぁ好きなことして生活できるのならそれが一番か……この世界に来て好きに生きている俺自身が最も実感していることだ。
ワァー! ワァー! ワァー! ワァー!
突然試合会場が大きな歓声に包まれた。
「お! 俺達の対戦相手がお出ましだな」
観客が左右に分かれて出来た通路を悠然とこちらに歩いて来る5人。
さすが3等級パーティーと言うべきか、中々に雰囲気がある。
パッと見、巨漢の盾が1人、長身の重戦士が1人、魔術士が1人、残り2人はおそらくアタッカーだろう。
相手パーティーはこちらまで来て、長身の重戦士がグリードさんと対峙する。
「ようこそメルクへ。3等級パーティー武烈のリーダー、ヘンダークだ。
今日はよろしく」
ヘンダークと名乗った重戦士がグリードさんに右手を差し出す。
「こちらこそよろしくお願いする。
バルーカの4等級パーティーリーダーのグリードだ」
グリードさんは差し出された右手をガッチリ握り返して握手した。
「良い試合をしよう。健闘を祈る」
「望むところだ!」
ヘンダークはこちらのメンバーを一睨みして自分のパーティーと共に試合場の対面に移動した。
漫画のように俺のとこで視線が止まるなんてことはなかった。
もっとも、奴の視界に俺が入ってなかった可能性もあるが……身長的な原因で。
それにしてもパーティー名が『武烈』か。
これはランテスのいた『烈火』に憧れてとかではなく、『烈』の字を入れたパーティー名にしないといけないといった決まりでもあるのではないだろうか?
あるいは異世界言語スキルの仕様でパーティー名によく使われる文字が『烈』に変換されるとかか?
結論を出すにはもう少しパーティー名を集めないと何とも言えないか……
『皆様お待たせしました!
只今より3等級昇格試験を行います!』
ワァー! ワァー! ワァー! ワァー!
凄い歓声が沸き起こる。
周囲を見渡すと、いつの間にやら観客でギッシリだ。
「武烈頼むぞー!!」
「頼む、勝ってくれ~、負けたら野宿だぁ」
「バルーカから来たパーティー勝て!!」
「武烈負けんなぁ!」
札を買った時の賭け率もそうだったが必ずしも無条件で武烈を応援しているという訳ではないようだ。
こちらへの声援もチラホラと聞こえて来る。
もっとも俺達への声援はオッズが高いからという理由だけだろうから純粋に喜んでいいのかどうか……
『今回は隣街のバルーカからパーティーを招いての昇格試験ということで、特別にバルーカの冒険者事情に詳しいラックさんに解説をお願いしました。
ラックさんよろしくお願いします』
『こちらこそよろしくお願いします』
『早速ですがラックさんに今回の挑戦者パーティーの特徴含めた紹介をお願いできますか?』
『わかりました。
バルーカのパーティーは重戦士のグリードをリーダーとして、剣士のシビックにヒーラーであるモイヤー、盾職であるナタリアの4人パーティーです。
それぞれは3等級昇格試験に臨むのに相応しい実力があり、特にリーダーのグリードの大剣捌きに注目して頂きたいですね。
そしてこの試験の為に臨時に魔術士であるツトムを加えての5人で昇格試験への挑戦となります』
『ヒーラーがいるパーティーというのは珍しいですね』
『そう思います。
モイヤーは20代半ばで魔法の才能が開花した珍しいタイプです。
回復魔法の使い手は10代の内に各組織が囲い込むのが常態化していますので、魔法関係の教育機関出身でないのも大きいのでしょう』
俺が使う回復魔法の扱いはどんな感じなのだろうか?
現状だとモグリの使い手的な感じだと思うのだが……なんかブラック〇ャックみたいでかっこいい響きだ!
実際軍にも冒険者ギルドにも回復魔法を使えることはバレているものの特に目立った動きはない。
教会(聖トルスト教)にさえ知られなければ大丈夫な感じか。
『そして手元の資料では、今回パーティーに特別参加している魔術士ツトムは5等級冒険者とありますが?』
『間違いありません。
2週間ほど前に行われた昇格試験で5等級に昇格したバルーカギルド期待の魔術士です。
その試験の際には私も解説していました』
『率直に言ってしまえば数合わせ、と考えてよろしいのでしょうか?』
『いえ、今回バルーカギルドはツトムを戦力としてこの試験に参加させています。
私もツトムには3等級冒険者と渡り合える実力があると考えています』
当然の見解だな。
もっとも5等級と侮ってもらったほうが楽に戦えるのかも?
『さぁ、今回の対戦方式は5回戦勝負!
バルーカパーティーの1番手が今話していた魔術士ツトムとなります!!』
実況とラック氏の話を聞いてたらグリードさんに肘で突かれたので慌てて立ち上がる。
リハーサルとか何もないから段取りが全然わからん。
とりあえず観客に手を振りながら試合場の中央に進む。
ブゥー↓ ブゥー↓ ブゥー↓ ブゥー↓
アウェーなの忘れてたよ。
『いきなり会場を挑発するこの5等級!!
大胆不敵であることは間違いない!!
対して我らが3等級パーティー武烈の先鋒は~~~~
獣人アタッカーロイドォォォォ!!』
バルーカで試験を受けた際と同じように試合が行われる場所がロープで区切られ、簡易的な観客席が作られている。
その観客席の最前列に机が置かれており2人の男性が座っているが、その内の1人に見覚えがあった。
「あの人は確かバルーカの試験の時に……」
「ああ、ラックさんだな。
俺達がバルーカの冒険者ということでメルクのギルドから解説を依頼されたんだと。
昨日宿に来て色々聞かれたよ」
よその街のギルドから解説を依頼されるとか、本当に解説者が職業とか……
いや、落ち着け、依頼されたということは冒険者ではある訳だ。
「ラックさん自体は何等級なんです?」
「確か4等級じゃなかったかな?
もうかなり前から実質的には引退状態みたいだが」
「引退状態なのにあんなに冒険者事情に詳しいのですか?」
「引退状態だからこそだな。
パーティー組んでいたら情報収集できる時間なんて限られるからな」
「解説する為にそこまでの努力を……」
「ほとんど趣味みたいなもんだと思うぞ。
色々な冒険者のことを知るのが楽しいとか言ってたしな。
ギルドもラックさんから冒険者に関する情報を定期的に買い取っているみたいだ」
結局は趣味ってことかい。
まぁ好きなことして生活できるのならそれが一番か……この世界に来て好きに生きている俺自身が最も実感していることだ。
ワァー! ワァー! ワァー! ワァー!
突然試合会場が大きな歓声に包まれた。
「お! 俺達の対戦相手がお出ましだな」
観客が左右に分かれて出来た通路を悠然とこちらに歩いて来る5人。
さすが3等級パーティーと言うべきか、中々に雰囲気がある。
パッと見、巨漢の盾が1人、長身の重戦士が1人、魔術士が1人、残り2人はおそらくアタッカーだろう。
相手パーティーはこちらまで来て、長身の重戦士がグリードさんと対峙する。
「ようこそメルクへ。3等級パーティー武烈のリーダー、ヘンダークだ。
今日はよろしく」
ヘンダークと名乗った重戦士がグリードさんに右手を差し出す。
「こちらこそよろしくお願いする。
バルーカの4等級パーティーリーダーのグリードだ」
グリードさんは差し出された右手をガッチリ握り返して握手した。
「良い試合をしよう。健闘を祈る」
「望むところだ!」
ヘンダークはこちらのメンバーを一睨みして自分のパーティーと共に試合場の対面に移動した。
漫画のように俺のとこで視線が止まるなんてことはなかった。
もっとも、奴の視界に俺が入ってなかった可能性もあるが……身長的な原因で。
それにしてもパーティー名が『武烈』か。
これはランテスのいた『烈火』に憧れてとかではなく、『烈』の字を入れたパーティー名にしないといけないといった決まりでもあるのではないだろうか?
あるいは異世界言語スキルの仕様でパーティー名によく使われる文字が『烈』に変換されるとかか?
結論を出すにはもう少しパーティー名を集めないと何とも言えないか……
『皆様お待たせしました!
只今より3等級昇格試験を行います!』
ワァー! ワァー! ワァー! ワァー!
凄い歓声が沸き起こる。
周囲を見渡すと、いつの間にやら観客でギッシリだ。
「武烈頼むぞー!!」
「頼む、勝ってくれ~、負けたら野宿だぁ」
「バルーカから来たパーティー勝て!!」
「武烈負けんなぁ!」
札を買った時の賭け率もそうだったが必ずしも無条件で武烈を応援しているという訳ではないようだ。
こちらへの声援もチラホラと聞こえて来る。
もっとも俺達への声援はオッズが高いからという理由だけだろうから純粋に喜んでいいのかどうか……
『今回は隣街のバルーカからパーティーを招いての昇格試験ということで、特別にバルーカの冒険者事情に詳しいラックさんに解説をお願いしました。
ラックさんよろしくお願いします』
『こちらこそよろしくお願いします』
『早速ですがラックさんに今回の挑戦者パーティーの特徴含めた紹介をお願いできますか?』
『わかりました。
バルーカのパーティーは重戦士のグリードをリーダーとして、剣士のシビックにヒーラーであるモイヤー、盾職であるナタリアの4人パーティーです。
それぞれは3等級昇格試験に臨むのに相応しい実力があり、特にリーダーのグリードの大剣捌きに注目して頂きたいですね。
そしてこの試験の為に臨時に魔術士であるツトムを加えての5人で昇格試験への挑戦となります』
『ヒーラーがいるパーティーというのは珍しいですね』
『そう思います。
モイヤーは20代半ばで魔法の才能が開花した珍しいタイプです。
回復魔法の使い手は10代の内に各組織が囲い込むのが常態化していますので、魔法関係の教育機関出身でないのも大きいのでしょう』
俺が使う回復魔法の扱いはどんな感じなのだろうか?
現状だとモグリの使い手的な感じだと思うのだが……なんかブラック〇ャックみたいでかっこいい響きだ!
実際軍にも冒険者ギルドにも回復魔法を使えることはバレているものの特に目立った動きはない。
教会(聖トルスト教)にさえ知られなければ大丈夫な感じか。
『そして手元の資料では、今回パーティーに特別参加している魔術士ツトムは5等級冒険者とありますが?』
『間違いありません。
2週間ほど前に行われた昇格試験で5等級に昇格したバルーカギルド期待の魔術士です。
その試験の際には私も解説していました』
『率直に言ってしまえば数合わせ、と考えてよろしいのでしょうか?』
『いえ、今回バルーカギルドはツトムを戦力としてこの試験に参加させています。
私もツトムには3等級冒険者と渡り合える実力があると考えています』
当然の見解だな。
もっとも5等級と侮ってもらったほうが楽に戦えるのかも?
『さぁ、今回の対戦方式は5回戦勝負!
バルーカパーティーの1番手が今話していた魔術士ツトムとなります!!』
実況とラック氏の話を聞いてたらグリードさんに肘で突かれたので慌てて立ち上がる。
リハーサルとか何もないから段取りが全然わからん。
とりあえず観客に手を振りながら試合場の中央に進む。
ブゥー↓ ブゥー↓ ブゥー↓ ブゥー↓
アウェーなの忘れてたよ。
『いきなり会場を挑発するこの5等級!!
大胆不敵であることは間違いない!!
対して我らが3等級パーティー武烈の先鋒は~~~~
獣人アタッカーロイドォォォォ!!』
52
あなたにおすすめの小説
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。
しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。
全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。
クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆1/19〜1/27まで、予約投稿を1話ずつ行います。
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる