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何はともあれ、魔術研究所に入る許可は出たのだ。
すぐにも向かおうとして、ふと足を止めた。
俺のことを推薦してくれたリュドスキーという外務卿。
伯爵(=バルーカの領主)やロイターのおっさんと同じ中立派と思われるので、お礼ぐらい言っておいても損はないように思える。あるいは姫派の現在の苦境を鑑みれば、こちらから積極的に接触を図るべき相手なのかもしれない。
よしっ!
外務卿にお礼を言うことに決める。
外務部は軍務部と同じく王城の周囲の塔にある。
一般人にはほぼ縁のない部署なので、近くにいた使用人に場所を聞いた際には怪訝な表情をされてしまった。
問題は果たして俺に会ってくれるのか、ってことだろうな。
外務卿は現代でいうなら大臣職に相当するだろう。
3人しかいないのなら(三職という呼称から)大臣よりも希少性は高い。すぐ交代することもないだろうし。
国王や軍務卿と会えたのは向こうがそれを望んだからだ。
俺のほうから面会を望んでも叶うことはなかっただろう。
まぁ近くなので行くだけ行ってみるが…………
「約束がなければ取り次ぐことはできません」
ですよねー。
一般人には約束のしようがない、実質お断りな文言だ。
外務部の受付は1つしかなく待ってる人もいない。一般人お断りな雰囲気は部署全体からも漂って来る。ちなみに受付は男性だ。
「では、リュドスキー様宛に伝言をお願いすることはできますか?」
「必ずしも閣下が目を通されるとは限りませんよ」
「構いません」
お礼を言いに訪れた、という事実があればいいだろう。
魔術研究所。
王都の第2区画にある3階建ての普通な建物だ。
1階にある受付で名前を告げれば中に入れるはずだが…………
「軍務部からの許可は届いています。
入所目的は…………闇の軍? 創設??」
マズイな。
軍務ねーちゃんに対して意地になって出願理由は変えずにいたのだった。
「簡単に言うと、死霊術を教えて頂きたいのです」
「ああ! 死霊術でしたら導士しか適任者はいませんね」
「導士とは?」
「この魔術研究所の所長であるノイエダーフ男爵のことです。
所長になる前は王室魔術士を務められたほどのお方ですよ。
(…………少し変わっていますが)」
導士とか王室魔術士とか、よくわからん名称が出てきたな。
最後何か呟いてたが?!
「導士の部屋は3階の一番奥です」
「どうも」
魔術研究所の内部は…………いや、内部も外観と同じで至って普通だった。
時折魔法の発動音らしき音が聞こえてくるぐらいで。
研究所というからにはもっとおどろおどろしく、禁忌な魔法でも研究していて欲しいところだが…………
3階の一番奥の部屋の前に立つ。
コンコン!
「入りなさい」
「失礼します」
部屋の中も至って普通の執務室だった。
そして奥の大きな机に、白もじゃのいかにもな髭を蓄えた老人が座っていた。
「初めまして。バルーカから参りました4等級冒険者のツトムと申します。
死霊術を教えて頂きたくてこの研究所にやって来ました」
「ここの責任者のノイエダーフじゃ。
そうか。死霊術をのぉ…………」
老人は立派な髭を持つ者がよくやる仕草で髭を撫でている。
「君は随分と若く見えるが、学院を卒業したのはいつだね?」
学院とは、ここ王都にある魔法学院のことだ。
国中から秀才が集まるエリート校で、騎士学校と共に国に仕える優秀な人材を育成しているらしい。
「自分は15歳ですが、魔法学院の出ではありません」
「ふむ…………隣の部屋へ移動しようか」
隣の部屋は学校の教室2つ分ぐらいの広さがあった。
ドアが3つもあるので、複数の部屋の壁を取り払って1つの大部屋としたみたいだ。
「君の最大の魔法を見せてみなさい。
死霊術は魔力が潤沢にないと習得する意味がないのでな」
最大の魔法か…………
MP消費が最も多いのは風槌の弾幕全力ヴァージョンだが、この部屋をかなり破壊してしまうことになる。いくら大部屋と言ってもギルドの訓練場ほどには広くはないし。
次に消費が多いのは地面ごと上へと押し上げる土魔法だ。
この魔術研究所ごと天空に押し上げることが可能だが、王都の真っただ中でそんなことをしたら絶対に怒られる…………いや、怒られるだけならまだマシか。下手したらテロリスト扱いされて姫様討伐の口実にでもされかねない。
というわけで、3番目にMP消費が多い零式改を選択する。
「むっ?!
新魔法を9つ同時発動じゃと!!」
ヴォォォォンッ!!
何もない空間に零式改を放った。
多少床と天井を破壊したが、まぁ許容範囲内だろう。
「…………その魔法、まだ未完成じゃな?」
「はい。どうしても圧縮する最終段階で上手くいかなくて」
一度見ただけで未完成だと見抜いたか。
この老人の魔法の腕は確かなようだ。
「もう一度今の魔法を撃てるかね?」
「ええ」
再び零式改の発動準備に入ろうとするが。
「ま、待て! 本当に撃たんでいい! これ以上部屋を壊されたらたまらん。
…………どうやらワシよりも魔力が多いようじゃな。
良かろう。死霊術を教えよう」
「ありがとうございます! ノイエダーフ様!!」
「ワシのことは以後導士と呼ぶように」
だから導士ってなんなんだよ!?
すぐにも向かおうとして、ふと足を止めた。
俺のことを推薦してくれたリュドスキーという外務卿。
伯爵(=バルーカの領主)やロイターのおっさんと同じ中立派と思われるので、お礼ぐらい言っておいても損はないように思える。あるいは姫派の現在の苦境を鑑みれば、こちらから積極的に接触を図るべき相手なのかもしれない。
よしっ!
外務卿にお礼を言うことに決める。
外務部は軍務部と同じく王城の周囲の塔にある。
一般人にはほぼ縁のない部署なので、近くにいた使用人に場所を聞いた際には怪訝な表情をされてしまった。
問題は果たして俺に会ってくれるのか、ってことだろうな。
外務卿は現代でいうなら大臣職に相当するだろう。
3人しかいないのなら(三職という呼称から)大臣よりも希少性は高い。すぐ交代することもないだろうし。
国王や軍務卿と会えたのは向こうがそれを望んだからだ。
俺のほうから面会を望んでも叶うことはなかっただろう。
まぁ近くなので行くだけ行ってみるが…………
「約束がなければ取り次ぐことはできません」
ですよねー。
一般人には約束のしようがない、実質お断りな文言だ。
外務部の受付は1つしかなく待ってる人もいない。一般人お断りな雰囲気は部署全体からも漂って来る。ちなみに受付は男性だ。
「では、リュドスキー様宛に伝言をお願いすることはできますか?」
「必ずしも閣下が目を通されるとは限りませんよ」
「構いません」
お礼を言いに訪れた、という事実があればいいだろう。
魔術研究所。
王都の第2区画にある3階建ての普通な建物だ。
1階にある受付で名前を告げれば中に入れるはずだが…………
「軍務部からの許可は届いています。
入所目的は…………闇の軍? 創設??」
マズイな。
軍務ねーちゃんに対して意地になって出願理由は変えずにいたのだった。
「簡単に言うと、死霊術を教えて頂きたいのです」
「ああ! 死霊術でしたら導士しか適任者はいませんね」
「導士とは?」
「この魔術研究所の所長であるノイエダーフ男爵のことです。
所長になる前は王室魔術士を務められたほどのお方ですよ。
(…………少し変わっていますが)」
導士とか王室魔術士とか、よくわからん名称が出てきたな。
最後何か呟いてたが?!
「導士の部屋は3階の一番奥です」
「どうも」
魔術研究所の内部は…………いや、内部も外観と同じで至って普通だった。
時折魔法の発動音らしき音が聞こえてくるぐらいで。
研究所というからにはもっとおどろおどろしく、禁忌な魔法でも研究していて欲しいところだが…………
3階の一番奥の部屋の前に立つ。
コンコン!
「入りなさい」
「失礼します」
部屋の中も至って普通の執務室だった。
そして奥の大きな机に、白もじゃのいかにもな髭を蓄えた老人が座っていた。
「初めまして。バルーカから参りました4等級冒険者のツトムと申します。
死霊術を教えて頂きたくてこの研究所にやって来ました」
「ここの責任者のノイエダーフじゃ。
そうか。死霊術をのぉ…………」
老人は立派な髭を持つ者がよくやる仕草で髭を撫でている。
「君は随分と若く見えるが、学院を卒業したのはいつだね?」
学院とは、ここ王都にある魔法学院のことだ。
国中から秀才が集まるエリート校で、騎士学校と共に国に仕える優秀な人材を育成しているらしい。
「自分は15歳ですが、魔法学院の出ではありません」
「ふむ…………隣の部屋へ移動しようか」
隣の部屋は学校の教室2つ分ぐらいの広さがあった。
ドアが3つもあるので、複数の部屋の壁を取り払って1つの大部屋としたみたいだ。
「君の最大の魔法を見せてみなさい。
死霊術は魔力が潤沢にないと習得する意味がないのでな」
最大の魔法か…………
MP消費が最も多いのは風槌の弾幕全力ヴァージョンだが、この部屋をかなり破壊してしまうことになる。いくら大部屋と言ってもギルドの訓練場ほどには広くはないし。
次に消費が多いのは地面ごと上へと押し上げる土魔法だ。
この魔術研究所ごと天空に押し上げることが可能だが、王都の真っただ中でそんなことをしたら絶対に怒られる…………いや、怒られるだけならまだマシか。下手したらテロリスト扱いされて姫様討伐の口実にでもされかねない。
というわけで、3番目にMP消費が多い零式改を選択する。
「むっ?!
新魔法を9つ同時発動じゃと!!」
ヴォォォォンッ!!
何もない空間に零式改を放った。
多少床と天井を破壊したが、まぁ許容範囲内だろう。
「…………その魔法、まだ未完成じゃな?」
「はい。どうしても圧縮する最終段階で上手くいかなくて」
一度見ただけで未完成だと見抜いたか。
この老人の魔法の腕は確かなようだ。
「もう一度今の魔法を撃てるかね?」
「ええ」
再び零式改の発動準備に入ろうとするが。
「ま、待て! 本当に撃たんでいい! これ以上部屋を壊されたらたまらん。
…………どうやらワシよりも魔力が多いようじゃな。
良かろう。死霊術を教えよう」
「ありがとうございます! ノイエダーフ様!!」
「ワシのことは以後導士と呼ぶように」
だから導士ってなんなんだよ!?
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