異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

文字の大きさ
399 / 454

396

しおりを挟む
 何はともあれ、魔術研究所に入る許可は出たのだ。
 すぐにも向かおうとして、ふと足を止めた。

 俺のことを推薦してくれたリュドスキーという外務卿。
 伯爵(=バルーカの領主)やロイターのおっさんと同じ中立派と思われるので、お礼ぐらい言っておいても損はないように思える。あるいは姫派の現在の苦境をかんがみれば、こちらから積極的に接触を図るべき相手なのかもしれない。

 よしっ!

 外務卿にお礼を言うことに決める。
 外務部は軍務部と同じく王城の周囲の塔にある。
 一般人にはほぼ縁のない部署なので、近くにいた使用人に場所を聞いた際には怪訝けげんな表情をされてしまった。

 問題は果たして俺に会ってくれるのか、ってことだろうな。
 外務卿は現代でいうなら大臣職に相当するだろう。
 3人しかいないのなら(三職という呼称から)大臣よりも希少性は高い。すぐ交代することもないだろうし。
 国王や軍務卿と会えたのは向こうがそれを望んだからだ。
 俺のほうから面会を望んでも叶うことはなかっただろう。
 まぁ近くなので行くだけ行ってみるが…………

「約束がなければ取り次ぐことはできません」

 ですよねー。
 一般人には約束のしようがない、実質お断りな文言だ。
 外務部の受付は1つしかなく待ってる人もいない。一般人お断りな雰囲気は部署全体からも漂って来る。ちなみに受付は男性だ。

「では、リュドスキー様宛に伝言をお願いすることはできますか?」

「必ずしも閣下が目を通されるとは限りませんよ」

「構いません」

 お礼を言いに訪れた、という事実があればいいだろう。



 魔術研究所。
 王都の第2区画にある3階建ての普通な建物だ。
 1階にある受付で名前を告げれば中に入れるはずだが…………

「軍務部からの許可は届いています。
 入所目的は…………闇の軍? 創設??」

 マズイな。
 軍務ねーちゃんに対して意地になって出願理由は変えずにいたのだった。

「簡単に言うと、死霊術を教えて頂きたいのです」

「ああ! 死霊術でしたら導士しか適任者はいませんね」

「導士とは?」

「この魔術研究所の所長であるノイエダーフ男爵のことです。
 所長になる前は王室魔術士を務められたほどのお方ですよ。
 (…………少し変わっていますが)」

 導士とか王室魔術士とか、よくわからん名称が出てきたな。
 最後何か呟いてたが?!

「導士の部屋は3階の一番奥です」

「どうも」



 魔術研究所の内部は…………いや、内部も外観と同じで至って普通だった。
 時折魔法の発動音らしき音が聞こえてくるぐらいで。
 研究所というからにはもっとおどろおどろしく、禁忌な魔法でも研究していて欲しいところだが…………


 3階の一番奥の部屋の前に立つ。

 コンコン!

「入りなさい」

「失礼します」

 部屋の中も至って普通の執務室だった。
 そして奥の大きな机に、白もじゃのいかにもな髭を蓄えた老人が座っていた。

「初めまして。バルーカから参りました4等級冒険者のツトムと申します。
 死霊術を教えて頂きたくてこの研究所にやって来ました」

「ここの責任者のノイエダーフじゃ。
 そうか。死霊術をのぉ…………」

 老人は立派な髭を持つ者がよくやる仕草で髭を撫でている。

「君は随分と若く見えるが、学院を卒業したのはいつだね?」

 学院とは、ここ王都にある魔法学院のことだ。
 国中から秀才が集まるエリート校で、騎士学校と共に国に仕える優秀な人材を育成しているらしい。

「自分は15歳ですが、魔法学院の出ではありません」

「ふむ…………隣の部屋へ移動しようか」

 隣の部屋は学校の教室2つ分ぐらいの広さがあった。
 ドアが3つもあるので、複数の部屋の壁を取り払って1つの大部屋としたみたいだ。

「君の最大の魔法を見せてみなさい。
 死霊術は魔力が潤沢にないと習得する意味がないのでな」

 最大の魔法か…………
 MP消費が最も多いのは風槌の弾幕全力ヴァージョンだが、この部屋をかなり破壊してしまうことになる。いくら大部屋と言ってもギルドの訓練場ほどには広くはないし。
 次に消費が多いのは地面ごと上へと押し上げる土魔法だ。
 この魔術研究所ごと天空に押し上げることが可能だが、王都の真っただ中でそんなことをしたら絶対に怒られる…………いや、怒られるだけならまだマシか。下手したらテロリスト扱いされて姫様討伐の口実にでもされかねない。

 というわけで、3番目にMP消費が多い零式改を選択する。

「むっ?!
 新魔法を9つ同時発動じゃと!!」

 ヴォォォォンッ!!

 何もない空間に零式改を放った。
 多少床と天井を破壊したが、まぁ許容範囲内だろう。

「…………その魔法、まだ未完成じゃな?」

「はい。どうしても圧縮する最終段階で上手くいかなくて」

 一度見ただけで未完成だと見抜いたか。
 この老人の魔法の腕は確かなようだ。

「もう一度今の魔法を撃てるかね?」

「ええ」

 再び零式改の発動準備に入ろうとするが。

「ま、待て! 本当に撃たんでいい! これ以上部屋を壊されたらたまらん。
 …………どうやらワシよりも魔力が多いようじゃな。
 良かろう。死霊術を教えよう」

「ありがとうございます! ノイエダーフ様!!」

「ワシのことは以後導士と呼ぶように」

 だから導士ってなんなんだよ!?
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。 しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。 全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。 クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆1/19〜1/27まで、予約投稿を1話ずつ行います。 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...