異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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「…………それでは伯爵様へくれぐれもよしなにお伝えくだ」

 コンコン!

「入れ」

 もう帰ろうかとしたところで執務室のドアがノックされた。
 そう言えばロイターのおっさんと話し中に誰か来るのは初めてだな。
 ひょっとして緊急事態とかだろうか?

「失礼します」

 マイナさん?
 姫様付きの補佐官であるマイナさんが執務室に入ってきた。

「ロイター子爵、殿下がお呼びです。すぐにいらしてください」

「わかりました。
 それにしてもマイナ殿直々に呼びに来られなくても…………それほど重大な事態ですか?」

「詳しくは殿下からお聞きください」

 マイナ…………殿?
 おっさんが『殿』で呼ぶなんて、マイナさんって結構偉い人なのか?
 確かマイナさんは姫様の家臣というわけではなくて、中立派から派遣されて来てるのだったな。
 ああ、でもそのことを話したナナイさんもマイナさんのことを『様』付けで呼んでたっけ。
 ひょっとして俺もマイナ様と呼んだほうがいいのだろうか?

「それと、受付で冒険者ツトムが登城してるとのことでしたので、私がここに」

「自分も…………ですか?」

「当然です。殿下の臣としての自覚を常日頃から忘れぬように」

「は、はぁ…………」

 自覚とか言われても…………
 それとマイナさんの俺への当たりが段々とキツくなってきてるような。
 出会った当初はツトム殿と呼ばれていたのに、今では呼び捨てだし…………



 姫様のところに連れて行かされた俺とおっさんは、挨拶もそこそこに用件を切り出された。

「…………先ほど冒険者によってレイシスからの書状が届けられました」

 レイシス姫からか。
 確か最後に会ったのは武闘大会後の…………そうだ! 魔術研究所への立ち入り申請を行った後にアルタナ王国に行ったのだった。なので1ヵ月前だ。
 その時に胸をジロジロ見たのをとがめられて、気まずい感じで別れたのだっけ。
 あのお姫様のことだからバッチリと覚えているだろうなぁ。

「明朝レイシス自ら部隊を率いて、ルミナス大要塞の南に集結中の魔物に攻撃を仕掛けるとのこと。
 ついてはツトムに助力して欲しいそうです。
 ロイター子爵、よろしいですか?」

「どうぞご随意に」

「ツトム、お願いできますか?」

「もちろんでございます。
 必ずや殿下の名を汚さぬ働きをして御覧に入れましょう」

 通常種だけなら軽く蹴散らして、また姫様とのご褒美タイムをゲットするチャンスだ!

「私のことなどどうでもよい。
 無理だけはしないで無事帰還するように。よろしいですね?」

「承知しました」

「頼みましたよ」

 おっさんと共に一礼して謁見部屋を後にする。
 もっと姫様の美しいお姿を眺めていたかったが、そんな雰囲気ではなかった。
 姫様もドレス姿であったものの露出は少なく、地味目な感じだった。
 まぁ後で頂いた肖像画でも見てロイヤルなエロスを存分に補給するとして…………

 明朝の出撃か。
 具体的な時間は聞かなかった(聞けなかった)けど、明日家を出るのでは間に合わないかもしれない。
 夜が明けぬ内に出発する方法もあるが、バルーカからルミナス大要塞への飛行ルートは一度飛んだだけだ。
 万が一迷うなんて事態になったら目も当てられない。まして夜間に飛ぶのだし。
 戦場への遅参は一番やってはいけないことの一つだ。
 結論としては、今日中に出発して要塞で1泊しなければいけない、ということになる。

「…………ツトム君」

「なんでしょう?」

 俺と同じく考え事をしていて無言だったおっさんが口を開いた。

「今回はコートダールの時とは違って、中央(=ベルガーナ王国府)を通した正規のルートを経ていない要請になる。
 なのでバルーカから公式に派遣するという形にはできない」

 あくまでもレイシス姫個人のお願いを聞いてアルタナ王国に赴くってことか。

「何かトラブルが起こってそれが外交問題にまで発展してしまうと、私や閣下では口出しすらできなくなる。
 そうならないようにくれぐれも言動には細心の注意を払って欲しい」

「気を付けます」

 問題を起こすと姫様にも迷惑が掛かるからな。
 常日頃から自重を心掛けている俺なら大丈夫だと思うが。

「…………それと、どうにも引っ掛かることがある。
 君は2ヵ月半前にアルタナに赴いた時のことを覚えているね?」

「もちろんです」

「あの時被った損害からアルタナ軍は…………特にルミナス要塞の守備隊はまだ回復してないはずなんだ。
 守備隊が万全になったのであれば、こちら(ベルガーナ王国)から派遣されている第3騎士団には帰国命令が出るはずだからね」

 一旦大きな損害を受けてしまうと立て直すのはかなり大変みたいだ。
 当たり前か。後方から補充して人数だけ回復したとしても、やって来るのが実戦経験の乏しい兵士では戦力は低下したままだ。

「そんな状況下で要塞から討って出るなど、にわかには信じられぬことだ」

「集結してるという魔物の数が少ないとかでしょうか?」

「それなら出撃する前から君に助勢を頼むのもおかしな話だろう」

「それもそう…………ですね」

 レイシス姫ならそんなこと関係なく俺をコキ使いそうだけどな。
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