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「フォル様、騎士様方、今日は差し入れを持ってまいりましたの」
ここ数日で騎士団の面々と打ち解けた少女の声に騎士たちは訓練の手を止め、フォルに伺うような視線を向けてきた。それに彼女は仕方ない、と、言うように休憩を取るように指示を出す。
お付きの侍女と共に持ってきたお菓子を手ずから配る彼女の様子を眩しそうに見ている騎士は1人や2人ではない。傍から見れば狼の群れに仔ウサギを放り込んだようにしか見えないのだが、中々女性との出会いの無い職場である。彼らとしてもせっかく自分たちを怖がることなく接してくれる少女の存在が嬉しいのか、彼女の前では借りてきた猫の様におとなしい。そのくせ、訓練が始まればいいところを見せたいのか、張り切っているので監督する側でもあるフォルティナやハロルドとしては、その差を内心面白がってもいるのだが・・・。何より、彼女が来ることで騎士たちの士気が上がるなら、その方が良いだろう、と言うことで今のところ日参してきていることに対しては黙認することにしていた。
「フォル様も食べてくださいな」
そう言って差し出された焼き菓子が他の騎士たちのモノよりもちょっとだけ手の込んだラッピングがされているのは、フォルティナが同じ貴族令嬢だからなのか、好かれているからなのか・・・。おそらくは後者なのだろうが彼女のそれは妹が姉を慕うような、幼い子が近所の年上のお姉さんに憧れを抱いているようなそんな感じの親愛の情のようなので、フォルティナとしても無碍には出来なかった。
「ありがとう」
そう言って少女ーカンナ・ゼフィランス、子爵令嬢である彼女に礼を述べれば、アナシタシアより一つ上だという彼女は嬉しそうに頬を染めた。
そういう反応は他の騎士たちにしてあげればいいのに、と思わなくも無いが純粋に自分を慕ってくれているらしいカンナは女のフォルティナから見ても可愛らしいので、もう少しこのままにしておくことにしていた。
それに、好いた男が出来ればまた変わってくるだろうし・・・。
「何をしているんだい?」
こちらも、最近、耳慣れてしまった声で問われ、フォルティナとカンナは声の主の方へ顔を向けた。
「やぁ、フォルティナ。休憩中かい?」
そう言って、クラウスは迷わずフォルティナのところまで足を進めると、まるでそこは誰にも譲らないとばかりにフォルティナの隣に収まる。その距離が、よく並んで立つことの多いハロルドと比べてかなり近いのは、おそらくフォルティナの気のせいではないだろう。最初の頃こそ、この恋人たちが寄り添っているようにしか見えない距離に抗議し、離れようとしたが、毎度毎度それが無駄になるにつれて、最後はフォルティナの方が折れた。
フォルティナとしてはあまり近くに来られると落ち着かないので止めて欲しかったが、言うだけ無駄、と、完全に諦めている。
そして、そんなフォルティナの内心を知ってか知らずか、騎士団の仲間たちは2人を生暖かい目で見守っていた。
「デルフィニウス公爵様、いつも言っておりますが、フォル様に近づき過ぎですわ。婚約者でもないのにそんなに寄り添うだなんて!フォル様のお名前に傷がついてしまいます!」
唯一、最近ここに出入りするようになったカンナだけが、キャンキャンと抗議の声をあげる。
その様子が本当にフォルティナのことを心配しているようなので、クラウスやハロルドに惹かれる女性ばかりではないのだ、と周りの騎士たちは、おそらく、いや、確実に少数派に入る少女に淡い夢を抱くと共に3人のやり取りを見守るのだった。
ここ数日で騎士団の面々と打ち解けた少女の声に騎士たちは訓練の手を止め、フォルに伺うような視線を向けてきた。それに彼女は仕方ない、と、言うように休憩を取るように指示を出す。
お付きの侍女と共に持ってきたお菓子を手ずから配る彼女の様子を眩しそうに見ている騎士は1人や2人ではない。傍から見れば狼の群れに仔ウサギを放り込んだようにしか見えないのだが、中々女性との出会いの無い職場である。彼らとしてもせっかく自分たちを怖がることなく接してくれる少女の存在が嬉しいのか、彼女の前では借りてきた猫の様におとなしい。そのくせ、訓練が始まればいいところを見せたいのか、張り切っているので監督する側でもあるフォルティナやハロルドとしては、その差を内心面白がってもいるのだが・・・。何より、彼女が来ることで騎士たちの士気が上がるなら、その方が良いだろう、と言うことで今のところ日参してきていることに対しては黙認することにしていた。
「フォル様も食べてくださいな」
そう言って差し出された焼き菓子が他の騎士たちのモノよりもちょっとだけ手の込んだラッピングがされているのは、フォルティナが同じ貴族令嬢だからなのか、好かれているからなのか・・・。おそらくは後者なのだろうが彼女のそれは妹が姉を慕うような、幼い子が近所の年上のお姉さんに憧れを抱いているようなそんな感じの親愛の情のようなので、フォルティナとしても無碍には出来なかった。
「ありがとう」
そう言って少女ーカンナ・ゼフィランス、子爵令嬢である彼女に礼を述べれば、アナシタシアより一つ上だという彼女は嬉しそうに頬を染めた。
そういう反応は他の騎士たちにしてあげればいいのに、と思わなくも無いが純粋に自分を慕ってくれているらしいカンナは女のフォルティナから見ても可愛らしいので、もう少しこのままにしておくことにしていた。
それに、好いた男が出来ればまた変わってくるだろうし・・・。
「何をしているんだい?」
こちらも、最近、耳慣れてしまった声で問われ、フォルティナとカンナは声の主の方へ顔を向けた。
「やぁ、フォルティナ。休憩中かい?」
そう言って、クラウスは迷わずフォルティナのところまで足を進めると、まるでそこは誰にも譲らないとばかりにフォルティナの隣に収まる。その距離が、よく並んで立つことの多いハロルドと比べてかなり近いのは、おそらくフォルティナの気のせいではないだろう。最初の頃こそ、この恋人たちが寄り添っているようにしか見えない距離に抗議し、離れようとしたが、毎度毎度それが無駄になるにつれて、最後はフォルティナの方が折れた。
フォルティナとしてはあまり近くに来られると落ち着かないので止めて欲しかったが、言うだけ無駄、と、完全に諦めている。
そして、そんなフォルティナの内心を知ってか知らずか、騎士団の仲間たちは2人を生暖かい目で見守っていた。
「デルフィニウス公爵様、いつも言っておりますが、フォル様に近づき過ぎですわ。婚約者でもないのにそんなに寄り添うだなんて!フォル様のお名前に傷がついてしまいます!」
唯一、最近ここに出入りするようになったカンナだけが、キャンキャンと抗議の声をあげる。
その様子が本当にフォルティナのことを心配しているようなので、クラウスやハロルドに惹かれる女性ばかりではないのだ、と周りの騎士たちは、おそらく、いや、確実に少数派に入る少女に淡い夢を抱くと共に3人のやり取りを見守るのだった。
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