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16.任務内容
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「セシルは話した通り、箱を解錠する任務をして貰う。今回の目的は悪魔を箱に封じる事だ。王都に一体いると言った事を覚えているか?」
悪魔?魔、とは聞きましたが、悪魔とは聞いていません。
殿下の突拍子も無い、お話に驚きました。
「それは覚えていますが、魔が成長して形を持つと、物語に登場する、あの悪魔になるのですか?」
「いや、魔と言う性質は同じだが、悪魔は全くの別物だ。だが、箱は魔の力を引き寄せて消し去るから、悪魔にも有効とされている。」
「魔の成長と関係のない悪魔が、何故王都にいるのですか?どこからやって来たのですか?それに、悪魔とは実際、何をする者なのですか?」
殿下の話に疑問しか浮かびません。
「とても良い質問だよ、セシル嬢。それをこれから話す所なんだ。」
アレク団長は褒めて伸ばすタイプの方みたいです。
殿下は話を続けました。
「三か月程前から行方不明になっている青騎士団の団長、エドワード。我々はエドと呼んでいるが、そのエドが、悪魔召還を成功させてしまったせいだ。」
またしても物語みたいな話をされました。
「悪魔召還なんて、出来るのですか?」
「普通は無理だ。しかし、エドは陣を描く加護があり、魔道具についても天才的な才能がある。だから、誰も読み解けなかった古代書に載っている陣も読み解いてしまったらしい。」
困りました。聞けば聞くほど知らない単語が出てきます。
「レリック団長、申し訳ありませんが、陣や魔道具の意味が分かりません。陣の加護なんて、どうやって得るのですか?」
加護は強い思いによって発現します。
騎士団限定で使われる陣や魔道具なんて特殊な物に、幼い子供が簡単に関われるとは思えません。
「ああそうか、済まない。今の話は全て秘匿事項だった。これから話す全てがそうだ。もう、秘匿が普通だと思ってくれ。」
「……はい。」
もう諦めて慣れるしかありません。
「陣とは、陣書に載っている図形の事だ。描く陣によって記録、転送、通信、停止等、様々な効果がある。陣の効果に合わせて道具を作り、陣を道具に貼り付けた物が魔道具だ。我が国には国を守る為、陣や魔道具に関わる加護を代々輩出する貴族家系が存在する。エドもその家系出身だ。陣や魔道具に関わる加護を持つ者は、強制的に青騎士団の入団が決まる。」
なるほど。私達の国、ガリア王国の貴族は、結婚や地位に有利な加護を子供に授けようと、親が子供の興味を誘導するのが常識となっています。
陣の加護を我が子に授ける目的を持つ貴族が密かに存在していても、おかしくはありません。
「ご説明、有り難うございます。理解出来ました。」
それにしても、悪魔召還なんて騎士団長にもなった方ならば、何か余程の理由がない限り、手を出さないのではないでしょうか。
「悪魔召還の動機は分かっているのですか?」
「婚約者を元に戻す、だ。」
元に戻す?不思議な言い方です。
違和感を感じつつも、そのまま殿下の話に耳を傾けました。
「その為に、千の命を悪魔に捧げる契約をしたと分かった。今、王都で起きている殺人事件は、エドが関わっている。」
そう言えば、お兄様とお母様も殺人事件の話をしていました。
「亡くなった方は何かしら犯罪を犯している方々で、皆、天罰だと噂していると耳にしました。」
「ああ、エドは正義感が強い。だから、命を狩り取る人間を、犯罪者に限定しているようだが、殺人は殺人だ。騎士団としては看過出来ないし、エドを止めなければならない。」
エド団長が全ての殺人事件に関わっていると殿下は確信しているようです。
「どうしてエド団長が犯人だと言えるのですか?」
「エドから、我々宛てに手紙が届くんだよ。どこそこに悪い事している奴がいるから殺す、ってね。」
アレク団長は執務机にある小さな陣を指差しました。
その陣から、手紙が送られて来るそうです。
陣とは便利ですね。
「その連絡は殺し終えた直後に来る。我々に命を狩り取った後の死体処理や、犯罪者の裏付け調査をさせる為だろう。犯罪者について、我々も調査はしているが、証拠が揃わない限り動けない。だから、どうしても後手に回ってしまう。」
殿下は悔しそうにしながらも、淡々と話を続けました。
「悪魔の言う通り命を捧げても、婚約者は元に戻らないと私は思っている。せいぜい幻覚を見せられて、最終的にエドの命も悪魔に奪われる可能性が高い。」
「そうなのですか?」
青騎士団の執務室で見つかった悪魔の契約書は「婚約者を元に戻す」とだけ書かれていたそうです。
殿下が青騎士団と悪魔の契約について調べたところ、悪魔と契約するには、反古にされたり騙さない為に、それはそれは細かく条件を付けなければならないそうです。
元に戻す。だけでは、心の中で、とか、夢の中でも良いと解釈されたり、一部だけとか、一瞬だけ、なんて事もあるそうです。
「あの契約では、願いは叶わないだろう。エドが罪を重ねて悪魔に殺されない為にも、エドを見つけ、憑いている悪魔を、いち早く箱に封じなければならない。」
エド団長の命まで奪われてしまうなんて、殿下が任務の解決を急ぐのも分かります。
ただ、私は解錠しか出来ません。
それに、箱は悪魔を前にしなければ使えないようです。
エド団長が何処にいるのか分からない状況では、残念ながら、お役に立てません。
「箱を開ける以外に、私が出来る事なんて、あるのでしょうか?」
「セシル嬢にしか出来ない事が沢山あるよ。ね、レリック。」
「ああ。ひとまず移動だ。」
二人には心当たりがあるようです。
悪魔?魔、とは聞きましたが、悪魔とは聞いていません。
殿下の突拍子も無い、お話に驚きました。
「それは覚えていますが、魔が成長して形を持つと、物語に登場する、あの悪魔になるのですか?」
「いや、魔と言う性質は同じだが、悪魔は全くの別物だ。だが、箱は魔の力を引き寄せて消し去るから、悪魔にも有効とされている。」
「魔の成長と関係のない悪魔が、何故王都にいるのですか?どこからやって来たのですか?それに、悪魔とは実際、何をする者なのですか?」
殿下の話に疑問しか浮かびません。
「とても良い質問だよ、セシル嬢。それをこれから話す所なんだ。」
アレク団長は褒めて伸ばすタイプの方みたいです。
殿下は話を続けました。
「三か月程前から行方不明になっている青騎士団の団長、エドワード。我々はエドと呼んでいるが、そのエドが、悪魔召還を成功させてしまったせいだ。」
またしても物語みたいな話をされました。
「悪魔召還なんて、出来るのですか?」
「普通は無理だ。しかし、エドは陣を描く加護があり、魔道具についても天才的な才能がある。だから、誰も読み解けなかった古代書に載っている陣も読み解いてしまったらしい。」
困りました。聞けば聞くほど知らない単語が出てきます。
「レリック団長、申し訳ありませんが、陣や魔道具の意味が分かりません。陣の加護なんて、どうやって得るのですか?」
加護は強い思いによって発現します。
騎士団限定で使われる陣や魔道具なんて特殊な物に、幼い子供が簡単に関われるとは思えません。
「ああそうか、済まない。今の話は全て秘匿事項だった。これから話す全てがそうだ。もう、秘匿が普通だと思ってくれ。」
「……はい。」
もう諦めて慣れるしかありません。
「陣とは、陣書に載っている図形の事だ。描く陣によって記録、転送、通信、停止等、様々な効果がある。陣の効果に合わせて道具を作り、陣を道具に貼り付けた物が魔道具だ。我が国には国を守る為、陣や魔道具に関わる加護を代々輩出する貴族家系が存在する。エドもその家系出身だ。陣や魔道具に関わる加護を持つ者は、強制的に青騎士団の入団が決まる。」
なるほど。私達の国、ガリア王国の貴族は、結婚や地位に有利な加護を子供に授けようと、親が子供の興味を誘導するのが常識となっています。
陣の加護を我が子に授ける目的を持つ貴族が密かに存在していても、おかしくはありません。
「ご説明、有り難うございます。理解出来ました。」
それにしても、悪魔召還なんて騎士団長にもなった方ならば、何か余程の理由がない限り、手を出さないのではないでしょうか。
「悪魔召還の動機は分かっているのですか?」
「婚約者を元に戻す、だ。」
元に戻す?不思議な言い方です。
違和感を感じつつも、そのまま殿下の話に耳を傾けました。
「その為に、千の命を悪魔に捧げる契約をしたと分かった。今、王都で起きている殺人事件は、エドが関わっている。」
そう言えば、お兄様とお母様も殺人事件の話をしていました。
「亡くなった方は何かしら犯罪を犯している方々で、皆、天罰だと噂していると耳にしました。」
「ああ、エドは正義感が強い。だから、命を狩り取る人間を、犯罪者に限定しているようだが、殺人は殺人だ。騎士団としては看過出来ないし、エドを止めなければならない。」
エド団長が全ての殺人事件に関わっていると殿下は確信しているようです。
「どうしてエド団長が犯人だと言えるのですか?」
「エドから、我々宛てに手紙が届くんだよ。どこそこに悪い事している奴がいるから殺す、ってね。」
アレク団長は執務机にある小さな陣を指差しました。
その陣から、手紙が送られて来るそうです。
陣とは便利ですね。
「その連絡は殺し終えた直後に来る。我々に命を狩り取った後の死体処理や、犯罪者の裏付け調査をさせる為だろう。犯罪者について、我々も調査はしているが、証拠が揃わない限り動けない。だから、どうしても後手に回ってしまう。」
殿下は悔しそうにしながらも、淡々と話を続けました。
「悪魔の言う通り命を捧げても、婚約者は元に戻らないと私は思っている。せいぜい幻覚を見せられて、最終的にエドの命も悪魔に奪われる可能性が高い。」
「そうなのですか?」
青騎士団の執務室で見つかった悪魔の契約書は「婚約者を元に戻す」とだけ書かれていたそうです。
殿下が青騎士団と悪魔の契約について調べたところ、悪魔と契約するには、反古にされたり騙さない為に、それはそれは細かく条件を付けなければならないそうです。
元に戻す。だけでは、心の中で、とか、夢の中でも良いと解釈されたり、一部だけとか、一瞬だけ、なんて事もあるそうです。
「あの契約では、願いは叶わないだろう。エドが罪を重ねて悪魔に殺されない為にも、エドを見つけ、憑いている悪魔を、いち早く箱に封じなければならない。」
エド団長の命まで奪われてしまうなんて、殿下が任務の解決を急ぐのも分かります。
ただ、私は解錠しか出来ません。
それに、箱は悪魔を前にしなければ使えないようです。
エド団長が何処にいるのか分からない状況では、残念ながら、お役に立てません。
「箱を開ける以外に、私が出来る事なんて、あるのでしょうか?」
「セシル嬢にしか出来ない事が沢山あるよ。ね、レリック。」
「ああ。ひとまず移動だ。」
二人には心当たりがあるようです。
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