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新人魔導師、3回目の発掘調査に参加する
同日、移動の時
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時刻は午前9時。ようやく全員が揃い、朝食が済んだところで、夏希が口を開いた。
「さて、今回の調査だが」
「前と一緒じゃないんスか?」
普段よりもあちこちが跳ねた髪のまま、葵が口を挟んだ。邪魔するなとばかりに、透が手刀をいれる。夏希はそれをスルーして話し続けようとしている。やはり慣れている。そして慣れつつある自分もいる。天音はそのことに少し驚いていた。慣れたくなかったような気もする。ちなみに、由紀奈はまだ慣れていない。
「基本は変えねぇ。ただ、天音」
「はい」
「今回は双子と組め。たまには違うチームで動いた方がいいだろ。で、由紀奈」
「は、はい」
「今回は負傷者の手当ては主に雅に任せて、技術班の手伝いをしてくれ」
「え……わ、私、ちゃんとできます! 手当て、やらせてください!」
ガタン、と音を立てて由紀奈が立ち上がった。胸元に手をあて、必死に訴えている。それを見て、零がそっと立ち上がり、由紀奈を庇うように首を振った。
「落ち着いてください。ほら、座って」
「で、でも……」
「話は最後まで聞いてみないとわからないものですよ」
「……はい」
悔しそうな顔をしつつも、由紀奈は座った。ぎゅっと手を握り、耐えている。手袋をしていなかったら血が出ていそうなほど強い力だ。
「夏希も。言い方がよくないですよ」
「あ~……悪ぃ」
バツが悪そうに、夏希は俯きがちに言った。自分の言い方が悪かったのだと反省しているようだ。言葉を探すように視線を彷徨わせている。
「ほら、ちゃんと理由を言って」
「その……お前は調査班でもねぇし、前回は出土品もねぇしで……研究テーマを決めづらいんじゃねぇかと思ってよ……出土品の整理をしつつ、発掘調査について知ってもらえたらと思ったんだよ……」
もちろん、雅の許可は取ったし、忙しかったら医療班として仕事はしてもらうぜ?
その言葉を聞いて、安心したらしく、由紀奈の体から力が抜けていった。
「は、はい! ありがとうございます……」
戦力外通告ではなかった。ただ、夏希は気を遣ったつもりだったのだ。伝え方が少し悪かっただけで。優秀な頭脳を持っているせいか、頭の回転に話すスピードが追い付かないようで、夏希はたまに会話を2、3箇所すっ飛ばしてしまうという悪癖がある。元々あまり喋るタイプでもなく、必要だから多く話している、というのも原因かもしれない。
「悪ぃな。その、あたしはお前のコト、信頼してるぜ」
「そうじゃ。こやつ、わらわのところに来ては、そなたのことを褒めておったぞ。上達が早いだの、人一倍やる気があるだの、大人しそうに見えて根性があるだの、毎日のように言っておった」
雅が微笑み、元気づけるように小さな手で由紀奈の肩を叩いた。ほっとした様子の由紀奈は、ふにゃりと笑った。
由紀奈はああして褒められているけれど、自分はどうなんだろう。思わず不安になった天音だが、それにすぐ気づいたかなたが口を開く。
「天音も、とっても成長した。適性値も上がった。もう和馬に負けないくらい」
「え、そんなに? 俺も頑張らないとなあ」
はるかを看病していたことがあるからか、双子の妹ではあるが、かなたの方が世話焼きな部分があった。ずっと訓練の相手をしてくれていた人に言われて、天音も安心する。やはり、褒められるのが一番いい。それをわかって、彼女も言ってくれたのだろう。
「そういうワケで。期待の新人2人にもきっちり働いてもらうからな。5分後に移動するから準備して来い」
夏希の締めの一言に、全員が返事をして立ち上がった。
「班長、せめてその頭どうにかしてから来てくださいよ!」
という透の声に、当事者を除く全員が笑ってしまった。第5研究所らしい仕事の始まり方である。
5分程度では直らなかったのか、はたまた直す気がなかったのか。恐らく後者だが、葵はそのままの頭で現れた。ただ、自身の発明品だけはしっかりと準備し、大量に持っている。
それを見越していた透がひたすら髪に櫛を通し、どうにか見れる姿にしようとしている。が、それでも直らぬ寝癖に、全てを諦めたように櫛を放り投げた。匙を投げた、の方が正確だろうか。
「まぁ、仕事に影響はねぇし、いいぞ」
「普通の社会人ならアウトなんですよ! ああもう!」
同じく癖毛の夏希はわかるところがあるのか、葵側に立つようだ。透は正論を言っているはずなのだが、全員普通の社会人経験がないうえにあまり身なりに気を遣わないタイプなので少数派の意見としてもみ消されてしまった。
「移動後、遺跡前で待機してる真子と秋楽と合流する。2人は今回、警護と、必要に応じて調査のサポートをしてくれるコトになってる。お役人サマに第5研究所の力を見せてやろうぜ」
言い終わると、白と黒の魔力が辺りを包んだ。魔力を温存するために、零が6人を、夏希が5人を移動させることになっているのだ。この2人には必要のないことかもしれないが、万が一、ということもある。天音は目を閉じ、ゆっくりと呼吸をした。甘い、薔薇のような香りがするような気がした。
「さて、今回の調査だが」
「前と一緒じゃないんスか?」
普段よりもあちこちが跳ねた髪のまま、葵が口を挟んだ。邪魔するなとばかりに、透が手刀をいれる。夏希はそれをスルーして話し続けようとしている。やはり慣れている。そして慣れつつある自分もいる。天音はそのことに少し驚いていた。慣れたくなかったような気もする。ちなみに、由紀奈はまだ慣れていない。
「基本は変えねぇ。ただ、天音」
「はい」
「今回は双子と組め。たまには違うチームで動いた方がいいだろ。で、由紀奈」
「は、はい」
「今回は負傷者の手当ては主に雅に任せて、技術班の手伝いをしてくれ」
「え……わ、私、ちゃんとできます! 手当て、やらせてください!」
ガタン、と音を立てて由紀奈が立ち上がった。胸元に手をあて、必死に訴えている。それを見て、零がそっと立ち上がり、由紀奈を庇うように首を振った。
「落ち着いてください。ほら、座って」
「で、でも……」
「話は最後まで聞いてみないとわからないものですよ」
「……はい」
悔しそうな顔をしつつも、由紀奈は座った。ぎゅっと手を握り、耐えている。手袋をしていなかったら血が出ていそうなほど強い力だ。
「夏希も。言い方がよくないですよ」
「あ~……悪ぃ」
バツが悪そうに、夏希は俯きがちに言った。自分の言い方が悪かったのだと反省しているようだ。言葉を探すように視線を彷徨わせている。
「ほら、ちゃんと理由を言って」
「その……お前は調査班でもねぇし、前回は出土品もねぇしで……研究テーマを決めづらいんじゃねぇかと思ってよ……出土品の整理をしつつ、発掘調査について知ってもらえたらと思ったんだよ……」
もちろん、雅の許可は取ったし、忙しかったら医療班として仕事はしてもらうぜ?
その言葉を聞いて、安心したらしく、由紀奈の体から力が抜けていった。
「は、はい! ありがとうございます……」
戦力外通告ではなかった。ただ、夏希は気を遣ったつもりだったのだ。伝え方が少し悪かっただけで。優秀な頭脳を持っているせいか、頭の回転に話すスピードが追い付かないようで、夏希はたまに会話を2、3箇所すっ飛ばしてしまうという悪癖がある。元々あまり喋るタイプでもなく、必要だから多く話している、というのも原因かもしれない。
「悪ぃな。その、あたしはお前のコト、信頼してるぜ」
「そうじゃ。こやつ、わらわのところに来ては、そなたのことを褒めておったぞ。上達が早いだの、人一倍やる気があるだの、大人しそうに見えて根性があるだの、毎日のように言っておった」
雅が微笑み、元気づけるように小さな手で由紀奈の肩を叩いた。ほっとした様子の由紀奈は、ふにゃりと笑った。
由紀奈はああして褒められているけれど、自分はどうなんだろう。思わず不安になった天音だが、それにすぐ気づいたかなたが口を開く。
「天音も、とっても成長した。適性値も上がった。もう和馬に負けないくらい」
「え、そんなに? 俺も頑張らないとなあ」
はるかを看病していたことがあるからか、双子の妹ではあるが、かなたの方が世話焼きな部分があった。ずっと訓練の相手をしてくれていた人に言われて、天音も安心する。やはり、褒められるのが一番いい。それをわかって、彼女も言ってくれたのだろう。
「そういうワケで。期待の新人2人にもきっちり働いてもらうからな。5分後に移動するから準備して来い」
夏希の締めの一言に、全員が返事をして立ち上がった。
「班長、せめてその頭どうにかしてから来てくださいよ!」
という透の声に、当事者を除く全員が笑ってしまった。第5研究所らしい仕事の始まり方である。
5分程度では直らなかったのか、はたまた直す気がなかったのか。恐らく後者だが、葵はそのままの頭で現れた。ただ、自身の発明品だけはしっかりと準備し、大量に持っている。
それを見越していた透がひたすら髪に櫛を通し、どうにか見れる姿にしようとしている。が、それでも直らぬ寝癖に、全てを諦めたように櫛を放り投げた。匙を投げた、の方が正確だろうか。
「まぁ、仕事に影響はねぇし、いいぞ」
「普通の社会人ならアウトなんですよ! ああもう!」
同じく癖毛の夏希はわかるところがあるのか、葵側に立つようだ。透は正論を言っているはずなのだが、全員普通の社会人経験がないうえにあまり身なりに気を遣わないタイプなので少数派の意見としてもみ消されてしまった。
「移動後、遺跡前で待機してる真子と秋楽と合流する。2人は今回、警護と、必要に応じて調査のサポートをしてくれるコトになってる。お役人サマに第5研究所の力を見せてやろうぜ」
言い終わると、白と黒の魔力が辺りを包んだ。魔力を温存するために、零が6人を、夏希が5人を移動させることになっているのだ。この2人には必要のないことかもしれないが、万が一、ということもある。天音は目を閉じ、ゆっくりと呼吸をした。甘い、薔薇のような香りがするような気がした。
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