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新人魔導師、発表会に参加する
9月13日、発表2日目
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2日目、再び第1研究所の発表の日。天音は特に聞きたい発表もなく、休憩スペースにいた。そこには葵もいて、天音に気付くと手を振った。
「あまねんも休憩ッスか?」
「はい」
「まー、第1って言うと、成果主義のお堅いトコッスからね。興味のあるコトより今人気のテーマ、役立つコト、そんなのばっかッス」
「こ、声が大きいですよ!」
「いいんスよ。どーせ自分、『爆発魔』って渾名つけられてる変人なんで」
「副所長とかでなくても、そういう名前がつくんですね……」
「目立つとつくッス。そのうちあまねんもつくんじゃないんスか?」
葵は置いてあるポットから珈琲を注いだ。天音の分も用意してくれている。礼を言って、1口飲んだ。和馬の淹れてくれるものとは違い、強い酸味がして天音はミルクと砂糖を足した。
「副所長は二つ名を教えてくださらなかったんですけど、北山さんはご存じですか?」
「あー、あのヤベーヤツ」
「と、言いますと?」
「『純白の破壊者』ってヤツッスね」
思っていたよりも中二病的センスだった。隠したくなるのも当然である。知ってしまった気まずさから、天音は話を変えることにした。
「そういえば、他の方は発表を聞きに行ってるんですか?」
「チビミヤとユッキーはそうッス。昔デカミヤのとき殴った上司の発表聞きに行くって言ってたッスよ。いやあ、いい度胸してるッスよねー」
「武村さんらしいといえばらしいですけど……」
きっと、難しい質問をして答えられなくなる相手の顔を見に行くのだろう。「わらわに見下される気分はどうじゃ?」という声が聞こえてきそうだ。
「質問のときもあの口調だったらサイコーッスよね」
「流石に副所長に止められると思います」
夏希は意外と真面目なところがある。猫かぶりのあの口調も、普段のままではふさわしい口調ではないということをわかっているからこそのものだ。あえて普段の口調で周りを挑発するようなこともあるが、根は比較的真面である。あくまで比較的、ではあるが。
「カラシは発表は聞いてないッスけど、会場にはいるッスよ。他の研究所の魔導衣を見に行くらしいッス。ただ、他のトコはお手本どおりのモンばっかでつまんないっぽいッス」
そのことは天音も薄々気が付いていた。会場を見渡しても、あまり凝った魔導衣を着ている者がいないのだ。講評者として座っていた、所長、副所長クラスの者は個性豊かな魔導衣を纏っていたが、一般の研究員となると、軍服のようなデザインばかりだった。
「まあ、そうそうアイツみたいな変態……拘りが強いヤツはいないッスからね!」
「もう全部言っちゃってますよ」
「きゃはははは!」
葵は腹を抱えて大笑いした。会場の方に響いていないか、天音は心配になった。ちらりと休憩スペースの外を見る。何の音もしないので、きっと防音の術が使われているはずだ。
「ほ、他の方は?」
「あ、えーと」
笑いがおさまった葵は、休憩スペースの外を指さした。
「双子は化粧直すって言ってたッス。んで、リトモリはチビミヤと同じく、元上司のツラ拝みに行くって言ってたッスね。グッチーは律儀に発表聞いてるはずッスよ」
「純粋な気持ちで聞いてる人が2人しかいない……」
和馬と、雅に引きずられながらではあるが真面目に聞いているであろう由紀奈の2人以外、第1研究所の発表に興味がないようだ。講評役の清水夫妻も、義務だから聞いているだけなのはわかっている。
「ウチにそんなヤツがいっぱいいると思うッスか?」
「それもそうですね……」
「ってか、自分はあまねんが聞きに行かなかったのが意外ッス」
てっきり、全発表聞きに行くと思っていたらしい。葵はやたらと酸っぱい珈琲を飲みながら天音を見つめた。
「……昨日の発表で、ちょっと嫌になってしまいまして」
「ん? あー……夏希が言ってたッス。最初の子、同期なんスよね?」
「はい。その……」
「言わなくてもなんとなくわかるッスよ。そうッスね。嫌にもなるッス。残念なコトに、それが今の社会なんスよね……ウチが例外なだけで、大抵どこもかしこも、魔導先進国のステータス保持のために必死ッス」
近くに別の研究所の研究員が通ったため、葵はそっと天音の耳元で言った。溜息まで吐いている。
「ま、無理に聞く必要はないッスよ。興味のあるヤツだけ聞いときましょ。明日は聞きに行く予定あるんスか?」
「あ、はい。明日は一応、全部聞こうと思ってます。旧都の魔導は気になりますから」
「そッスか。第2の新副所長キャラ濃いから気を付けるんスよ」
「新副所長?」
「2年前くらいッスかね。カラシがこっちに来てから変わったッス。公平だけどヤバいヤツッス」
「それ、副所長も言ってました……」
「面白いっちゃ面白いッスよ」
葵は1人笑っている。彼女に「ヤバいヤツ」と言われるとは、一体どんな人物なのだろう。天音は会ってもいないのに怖くなってきた。
「……どんな方ですか?」
覚悟を決めて質問する。夏希はあまり答えてくれなかったが、葵なら答えてくれるかもしれない。知らないより、知って対策をしておきたいのだ。
「うーん……みおりんより占い師占い師してるというか……人より星を視てるというか……そんなカンジッス」
「占い師占い師してるってなんですか!?」
「会えばわかるッス」
結局、葵も夏希と同じように「会えばわかる」としか言わなかった。上手くイメージできず、もやもやとしたまま、天音は3日目を迎えるのだった。
「あまねんも休憩ッスか?」
「はい」
「まー、第1って言うと、成果主義のお堅いトコッスからね。興味のあるコトより今人気のテーマ、役立つコト、そんなのばっかッス」
「こ、声が大きいですよ!」
「いいんスよ。どーせ自分、『爆発魔』って渾名つけられてる変人なんで」
「副所長とかでなくても、そういう名前がつくんですね……」
「目立つとつくッス。そのうちあまねんもつくんじゃないんスか?」
葵は置いてあるポットから珈琲を注いだ。天音の分も用意してくれている。礼を言って、1口飲んだ。和馬の淹れてくれるものとは違い、強い酸味がして天音はミルクと砂糖を足した。
「副所長は二つ名を教えてくださらなかったんですけど、北山さんはご存じですか?」
「あー、あのヤベーヤツ」
「と、言いますと?」
「『純白の破壊者』ってヤツッスね」
思っていたよりも中二病的センスだった。隠したくなるのも当然である。知ってしまった気まずさから、天音は話を変えることにした。
「そういえば、他の方は発表を聞きに行ってるんですか?」
「チビミヤとユッキーはそうッス。昔デカミヤのとき殴った上司の発表聞きに行くって言ってたッスよ。いやあ、いい度胸してるッスよねー」
「武村さんらしいといえばらしいですけど……」
きっと、難しい質問をして答えられなくなる相手の顔を見に行くのだろう。「わらわに見下される気分はどうじゃ?」という声が聞こえてきそうだ。
「質問のときもあの口調だったらサイコーッスよね」
「流石に副所長に止められると思います」
夏希は意外と真面目なところがある。猫かぶりのあの口調も、普段のままではふさわしい口調ではないということをわかっているからこそのものだ。あえて普段の口調で周りを挑発するようなこともあるが、根は比較的真面である。あくまで比較的、ではあるが。
「カラシは発表は聞いてないッスけど、会場にはいるッスよ。他の研究所の魔導衣を見に行くらしいッス。ただ、他のトコはお手本どおりのモンばっかでつまんないっぽいッス」
そのことは天音も薄々気が付いていた。会場を見渡しても、あまり凝った魔導衣を着ている者がいないのだ。講評者として座っていた、所長、副所長クラスの者は個性豊かな魔導衣を纏っていたが、一般の研究員となると、軍服のようなデザインばかりだった。
「まあ、そうそうアイツみたいな変態……拘りが強いヤツはいないッスからね!」
「もう全部言っちゃってますよ」
「きゃはははは!」
葵は腹を抱えて大笑いした。会場の方に響いていないか、天音は心配になった。ちらりと休憩スペースの外を見る。何の音もしないので、きっと防音の術が使われているはずだ。
「ほ、他の方は?」
「あ、えーと」
笑いがおさまった葵は、休憩スペースの外を指さした。
「双子は化粧直すって言ってたッス。んで、リトモリはチビミヤと同じく、元上司のツラ拝みに行くって言ってたッスね。グッチーは律儀に発表聞いてるはずッスよ」
「純粋な気持ちで聞いてる人が2人しかいない……」
和馬と、雅に引きずられながらではあるが真面目に聞いているであろう由紀奈の2人以外、第1研究所の発表に興味がないようだ。講評役の清水夫妻も、義務だから聞いているだけなのはわかっている。
「ウチにそんなヤツがいっぱいいると思うッスか?」
「それもそうですね……」
「ってか、自分はあまねんが聞きに行かなかったのが意外ッス」
てっきり、全発表聞きに行くと思っていたらしい。葵はやたらと酸っぱい珈琲を飲みながら天音を見つめた。
「……昨日の発表で、ちょっと嫌になってしまいまして」
「ん? あー……夏希が言ってたッス。最初の子、同期なんスよね?」
「はい。その……」
「言わなくてもなんとなくわかるッスよ。そうッスね。嫌にもなるッス。残念なコトに、それが今の社会なんスよね……ウチが例外なだけで、大抵どこもかしこも、魔導先進国のステータス保持のために必死ッス」
近くに別の研究所の研究員が通ったため、葵はそっと天音の耳元で言った。溜息まで吐いている。
「ま、無理に聞く必要はないッスよ。興味のあるヤツだけ聞いときましょ。明日は聞きに行く予定あるんスか?」
「あ、はい。明日は一応、全部聞こうと思ってます。旧都の魔導は気になりますから」
「そッスか。第2の新副所長キャラ濃いから気を付けるんスよ」
「新副所長?」
「2年前くらいッスかね。カラシがこっちに来てから変わったッス。公平だけどヤバいヤツッス」
「それ、副所長も言ってました……」
「面白いっちゃ面白いッスよ」
葵は1人笑っている。彼女に「ヤバいヤツ」と言われるとは、一体どんな人物なのだろう。天音は会ってもいないのに怖くなってきた。
「……どんな方ですか?」
覚悟を決めて質問する。夏希はあまり答えてくれなかったが、葵なら答えてくれるかもしれない。知らないより、知って対策をしておきたいのだ。
「うーん……みおりんより占い師占い師してるというか……人より星を視てるというか……そんなカンジッス」
「占い師占い師してるってなんですか!?」
「会えばわかるッス」
結局、葵も夏希と同じように「会えばわかる」としか言わなかった。上手くイメージできず、もやもやとしたまま、天音は3日目を迎えるのだった。
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