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其之三 ルディコ
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「じゃあ私は帰るでな、まあ、母子ともに健康じゃて、心配なかろう」
お婆はこれでもかというぐらいの笑みを浮かべ、よしよしとルディコのほっぺたに指をついて言った。
「ありがとう、お婆、助かったよ」
なあルディコ、ルディコ、ルディコ、と言いながらダルは、ルディコの手を持って振った。
「なあに、ダル、礼には及ばん、これが仕事じゃ」
お婆の指をルディコが握った。可愛い、可愛い、ルディコ、ルディコ、とダルは呟いた。エリザが笑っていた。
「……それにしてもこの吹雪、おさまらないな、さらに激しくなっているんじゃないか? 大丈夫かよ、お婆、こんな時に帰って」
「ジルーロがいれば、平気じゃ」
「え、俺がお供ですかい?」
「そうじゃ」
ジルーロは大きな肩をすくめた。
「へいへい、分かりましたよ、じゃあな、ダル……ん、どうした?」
ダルの顔が強張って、そして小刻みに震えていた。額には汗が滲んで、今にも滴り落ちそうだった。
「おい、ダル、どうしたんだ?」
「こ、これを……」
ダルはルディコを包んでいた布を強く握り締めて、か細い声で呟いた。
ダルのあまりの形相に、エリザも言葉が出なかった。
「何を見ろって?」
ジルーロはそう言うと、お婆と同時にルディコの顔を覗き込んだ。
「な、なんじゃ……こ、これは……」
お婆はこれでもかというぐらいの笑みを浮かべ、よしよしとルディコのほっぺたに指をついて言った。
「ありがとう、お婆、助かったよ」
なあルディコ、ルディコ、ルディコ、と言いながらダルは、ルディコの手を持って振った。
「なあに、ダル、礼には及ばん、これが仕事じゃ」
お婆の指をルディコが握った。可愛い、可愛い、ルディコ、ルディコ、とダルは呟いた。エリザが笑っていた。
「……それにしてもこの吹雪、おさまらないな、さらに激しくなっているんじゃないか? 大丈夫かよ、お婆、こんな時に帰って」
「ジルーロがいれば、平気じゃ」
「え、俺がお供ですかい?」
「そうじゃ」
ジルーロは大きな肩をすくめた。
「へいへい、分かりましたよ、じゃあな、ダル……ん、どうした?」
ダルの顔が強張って、そして小刻みに震えていた。額には汗が滲んで、今にも滴り落ちそうだった。
「おい、ダル、どうしたんだ?」
「こ、これを……」
ダルはルディコを包んでいた布を強く握り締めて、か細い声で呟いた。
ダルのあまりの形相に、エリザも言葉が出なかった。
「何を見ろって?」
ジルーロはそう言うと、お婆と同時にルディコの顔を覗き込んだ。
「な、なんじゃ……こ、これは……」
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