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転生者と勇者
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しおりを挟む「もう少しで友人の小屋が見えてきますので、休憩にしましょう。
養蜂を営んでいるので、美味しい蜂蜜もありますよ」
スリザスは精霊の話しに肩を落としたロズを気遣って、明るく話題を変える。
王城を目指す時からロズに新しい服を用意したり、お菓子を用意しては食べさせ、甲斐甲斐しく世話を焼く。
今も子供が拗ねた時に使う様な話題の変え方だ。ロズが容姿より年齢を重ねている事を忘れているのか、性格なのか。
場所の縁に肘を付いて長閑な草原を眺める。気分は遠足かピクニックのようだ。
「……雰囲気が、変?」
エリオが抽象的な言葉の後に手綱を引いて馬車を止める。
ロズとスリザスは馬車から身を出して先の様子を見るが、変わった所は無く平原の先に小さな小屋がぽつんとあるだけだ。
「どこも変わった様子はないけど、どう変なの?」
「変な感じ……あと、嫌な感じ?」
首を傾げたエリオ。祖母の血を濃く継いでいるエリオは精霊との相性も良い為、精霊の異変を察知する能力も高い。
ロズとスリザスは緊張した面持ちで目線を合わせる。
ロズは周囲の変化に対応出来るように神経を張り巡らせた。スリザスは腰の短剣に手を掛ける。
「……小屋にいるカストラが心配だ。先に私が行きますので、ロズとエリオは後から付いてきて下さい」
頷いてスリザスの後を追う。
魔物に遭遇せず、小屋の近くまでたどり着くと小屋をぐるりと囲むように土が抉れている。
入り口に近い場所だけ足で均されたように途切れていた。
土が均された場所をスリザスとエリオが見ると、青ざめた顔で小屋に入る。
「カストラ!!どこにいるの!?」
「……エリオお兄ちゃん?」
エリオが声の聞こえる方向へ走ると、部屋の隅に毛布を被った少女がいた。
怯えた様子だったが、エリオの姿を見ると瞳から大粒の涙が溢れる。
小学生くらいの背丈で、栗色の三つ編みの少女はエリオに縋り付く。
「カストラ……何があったのですか?祖母の護りが破壊されてましたが、そんな事が出来る人物なんて」
スリザス不安そうな面持ちで、ちらりとロズを横目で見たがロズは全力で否定した。
カストラと呼ばれた少女は安心したのか、エリオから離れて呼吸を整える。
「突然、男の人がアストルム様の護りを無理矢理壊して入ってきたの。
誰かを探してたみたいだけど、私を見てそのまま出て行っちゃった。
綺麗な男の人で、お姉ちゃんみたいな真っ黒な髪と眼だった……。
私、家の中に魔物が入って来ないか心配で怖くて隠れてたの」
少し怯えた様子でロズを見て、カストラはエリオの後ろに隠れてしまう。
「黒い髪と、瞳。私も近くで勇者を見てはいませんが、勇者も黒い髪でした。
それに祖母の護りを破壊できるとなると、王城にいる勇者の可能性も……」
ロズと同じ日本人の特徴を持っている勇者。
同郷である可能性が高い事を知ったロズだが、カストラの怯えた様子に怒りが湧く。
少女の家に侵入し、剰え重要な護りを破壊した勇者に、目的があったとしても許される事ではない。
「……少し休もう。カストラちゃんもいろいろあって疲れちゃったよね。
キッチンお借りしても大丈夫かな?」
不安を煽らないように笑顔でカストラを椅子に座らせる。
カストラは小さく頷いて、キッチンを指差した。
「あと、魔物の事は安心して大丈夫。私がいれば魔物除けの鈴より効果があるらしいから」
カストラは首を傾げて不思議そうな表情をしていたが、スリザスとエリオはバツが悪そうに視線を逸らした。
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