異世界転生しましたが、魔王も復活してヤンデレ勇者も転生してきました

KOUAN

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転生者と勇者

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目を覚ますと天蓋付きベッドの上で、窓から差し込む月明かりが照らしていた。
ロズは体を起こし、手足が自由に動く事を確認すると安堵の溜息をつく。


「まさか、塁が来てるなんて……」


彼、であった、塁。
愛していると言いながら、葵を束縛し、嫉妬で狂えば強引な事もいとわない男だった。
まさか、勇者として同じ世界に生きているとは夢にも思わなかった。
葵として生きた最後の願いは、彼との別れであったからだ。


「死んでも私を逃がしはしないのね」


震える体を抑え、ロズは支度を始める。
白い寝間着のワンピースを脱ぎ、アストルムの真紅のワンピースを着る。
この服の祝福は『破壊力の向上』『魔力干渉の低減』。もし勇者が捕らえようとするなら、力尽くで逃げられるようにする。


「大丈夫。今の私は。もう、過去のようには生きない」


姿見越しに言い聞かせるように言うと、震えは少しづつおさまる。


「スリザス、エリオ。ごめんなさい」


「なんで謝るんだい?」


振り返るとロズと同じ年頃の少女がソファーで寛いでいた。
その存在に気付き、ロズは鋭い視線で少女を警戒する。


「スーもエリーもアンタに謝ってほしくはないだろうよ。なんだって自分でここまで連れてきたんだからね」


ピョンと跳ねるように立つと、月明かりによって姿が露わになる。
淡いピンクのワンピースに、たっぷりのパニエ。
プラチナブロンドの豊かな髪には大きなリボンが付いている。
同じではないが見覚えのあるデザインの服に、ロズは自分の姿を確認した。


「……もしかして、アストルムさん?」


「スーとエリーから私の話しを聞いてるのかい?それなら話しは早い。
私は竜の嫁、アストルム。アンタに恩を返しに来たよ」


「恩?」


身に覚えのない事にロズは首を傾げる。
アストルムの話は聞いていても、初対面だ。
彼女の家族であるスリザス、エリオに助けられたロズは感謝こそあっても、恩を返される覚えはなかった。それに、アストルムの祝福付きの服にも助けられている。


「カストラの小屋の結界さ。結界が破られて急いで向かったけど、私が着いた時にはもうアンタの結界が張られてて驚いたわ。
アンタが来て、アタシより強い結界を張ったんだろう?」


ニヤリと含みを持たせた笑いを浮かべて、アストルムはロズの周りをぐるりと歩いた。


「歳の割には落ち着いていて、鋭い眼を持っているんだねえ。アンタがカストラを助けてくれて良かったよ。
本当にありがとうねえ」


服装と容姿こそ可憐な少女だが、その存在感はまるで頼り甲斐のある母親のようでもある。
アストルムはロズの両手を握り、今度は優しい笑みを浮かべた。


「アタシがひとまずだけど、ここから連れ出してやろう。そこで勇者の話しもしようかね」


バルコニーへ出る窓を開けて、ゆっくりとアストルムは外に出る。
一歩進む度、大きくなる体。背中が丸まったと思った瞬間、尾のようなものが見える。
ロズが瞬きをすると、バルコニーに収まりきらない大きな竜がいた。
燃えるような赤は、ロズのワンピースと同じ色だった。


「本気で勇者と闘うつもりだったんだねえ。そのワンピースも懐かしいよ。アタシの勝負服だったんだ」


勝負服とはそのまま戦闘服を意味している。
懐かしい姿のロズにアストルムは眼を細めてクスクスと笑っていた。


「よろしくお願いします」


「しっかり掴まりな。竜の里に向かうよ」


ロズはアストルムの背に乗り、大きく羽ばたく翼の風に飛ばされないようしがみついた。

グングンと王城は小さくなり、大樹の姿も見えなくなる。
しかし、ロズの不安が消えることはなく、城にいるスリザスとエリオが心配だった。
元の世界にいた塁は葵が人と関われば、極端に否定し葵を孤立させた。
それでも葵の側に寄る人がいれば、脅迫・暴力、何をしてでも離れさせた。
スリザスとエリオの場合、ロズとの関わりも深く、塁である勇者の不興を買うには十分だ。


ロズは遠くなる二人の無事を祈りながら、アストルムの背に掴まる力を強めた。

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