異世界転生しましたが、魔王も復活してヤンデレ勇者も転生してきました

KOUAN

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魔族生活の薦め

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ガンガンと頭に響く頭痛に、突然ぐにゃりと視界が歪む。
ギルウスの腕を解こうにも、その華奢な腕からは想像できない力で抑えられる。


「ねえ、花嫁って何?冗談でも笑えないんだけど」


気持を奮い立たせて血の気の引いた手を握る。
ギルウスは狼狽える様子もなく、ロズの髪を指先で巻いて楽しんでいた。


「そのままだよ。婚姻するのは普通の事だろう?魔王は一人の伴侶を決める事が少ないが、私にはロズがいる。
婚姻すればその線引きとやらもなくなり、私達は対等になる」


にこにこと屈託のない笑顔で言われ拍子抜けしてしまう。
一瞬緩んだ隙にギルウスから離れる。寂しそうな顔は子供っぽく、ロズの緊張の糸が緩くなる。
見た目は青年の姿だが、その容姿とは反対に性格は子供の様に無邪気。婚姻の本質も重さも理解していない、珍しいおもちゃに固執する子供の我が儘なのだと、ロズは気持ちを落ち着かせる。


廊下から響く足音に視線を向けると、扉を激しく叩く音が響く。


「ロズ様!!ご無事ですか?!」


「ノワ、大丈夫だよ。ちょっとギルウスと話してただけだから」


心配そうなノワの声に扉を開けようと近付くが、ギルウスに腕を掴まれてしまう。


「……ロズと一緒にいたい」


しおらしく言うギルウスに、何故か責められているような感覚を覚える。
しかし突然ロズが消えて心配し、走ってきたであろうノワを無視はできない。

掴んでいるギルウスの手を握り、子供を引っ張る母親のように扉へ向かう。
ギルウスは一瞬驚いたが、繋がれた手をしっかりと握り返しては満足そうに笑っている。


鍵が見つからず、そのままドアノブに手を掛けるとすんなりと扉は開いた。


「ロズ様!!」


慌てたノワはロズの全身を隈無く見ると、どこも異常がない事に安心する。


「心配させちゃったね。ギルウスも無事だから安心して」


離れない手を少し上に上げて、無事のアピールをしてみる。
きょとんとしたギルウスはなすがままだった。


「ロズ様は転移の経験が無いかと思い、五体揃っているかと心配だったのです。魔王様のお部屋に向かうと言えど、経験のない転移には危険がありますから……」


初めて聞いた。とロズは驚き、ギルウスを睨む。


「ロズ様が無事であれば問題ありません。宴も終わりましたので、今日はお部屋に戻りましょう」


ノワはスッと手を廊下へ伸ばして、ロズに出るよう促す。
しかし、ギルウスが手を離さないので出るに出られない。
困ったロズの様子にノワは、後から駆けつけたレフィナードに目配せをした。


「魔王様、来賓への挨拶がまだ済んでません。ロズ様とは後日時間を取れるように致しますので」


「でも……」


「ギルウス。また会えるんだから、困らせちゃダメだよ。今日はギルウスの為のパーティーなんだから」


子供を宥めるように言えば、パッと表情が明るくなる。
少し罪悪感を感じるが、この場を収めるには仕方がないと諦めた。


「ロズがそう言うなら、魔王としての役割を果たそう。レフィナード、行くぞ」


ほっとした表情のレフィナードを連れて、ギルウスは部屋を後にする。
長い息を吐いてノワも緊張を解いていた。



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