ヤンデレ姫と一途な星

七井 望月

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一途な星

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 「黒薔薇有栖の秘密を教える」という誘い文句に釣られ、俺は地味なクラスメイトの女子に付いていき、辿り着いたのはとある公園だった。

 その公園は以前有栖にも連れてこられた彼女曰く“思い出の場所”であり、やはりこの女は何かを知っている、そう息を飲んだのだが……

「……ハズレだったか」

 地味女の口から出たのは有栖に対してのいわれの無い罵詈雑言、誹謗中傷であった。

 嘘だとか本当だとかはもうどうでも良くて、ただ悪意しかない彼女の言動にはほとほとうんざりした。

 ただ意外だったのは、リアルな彼氏を目の前にして、その彼女に対する悪口を平然と言ってのけるほど、あの地味女に肝が据わっていたことだ。

 嘘をつかない人間は他人に気を遣わない。無愛想、無遠慮な正論人間。……彼女の嘘をついたことが無いという発言はもしや真のものだったのか……?

「……まあ、もうどうでもいいさ」

 嘘も真実も、結局ひどく曖昧なものだ。嘘か冗談かは人の裁量次第、百回言われて本当になった嘘もある。だから嘘だとか本当だとかはどうでも良い。彼女はもう嘘をつく事も無いのだから。

 ……俺は帰路を辿る。早く家に帰ってサボりの有栖をみっちり叱ってやらねば。




 ※




「ねぇ、どういう事?ちゃんと説明して星くん」

「……はい、すいません」

 ……あれ、おかしいぞ。無断欠席を遂行した有栖を叱責する筈が、何故俺が怒られているんだ?

「はいすいませんじゃなくて、理由を説明してって言ってるの!!通学路で私以外の女と一緒に喋ってたのは何でよ!!答えなさい!!」

「…………」

 ああ、アイツとの会話を見られていたのか。くそう、いなくなっても俺の邪魔をするとは、どこがラッキーパーソンだ。やっぱり占いなんて嘘じゃねぇか!!畜生め!!

 俺が脳内で思い浮かべるのはあの地味女の顔と「あの子、普通に人殺すよ」という彼女の証言。オイ、マジかよ!まだ死にたくねぇよ!!「私、生まれてから一度も嘘をついたことが無いの!!」うるせぇ黙れ!!!

「早く答えて!!」

「は、はい!」

 俺の脳内に召喚させた地味女と漫才を繰り広げていると、有栖がぶちギレた。すいませんごめんなさい殺さないで下さい!!

「……まあ、待て。まず一つだけ言い訳をさせて貰うと、あの女には俺から話しかけた訳じゃない。もちろん好意なんてのも更々無い。これだけは分かってくれ」

「……本当に?」

「ああ」

 有栖は俺の目をまじまじと見つめる。こ、怖えぇぇぇ。

 しかし“目は口ほどに物を言う”等という諺があるが、実際人は目だけで嘘を暴く等出来やしないだろう。恋愛マスターな生徒会会計ですら目から情報を引き出すのは5、6%が限界らしいし、だ、大丈夫だよな?

「……分かったわ、私は星くんを信じる。……だけどあのアバズレ女だけは絶対に許さないッ!!絶対に地獄を見せてやる!!莫連!!クソビッチ!!男乞食!!許さない許さない許さない許さないッ!!!!」

 ……何とか俺は許されたみたいだが、有栖は随分と錯乱している様に感じた。……学校をサボった理由については聞き出せそうに無いな。ひとまず落ち着いて貰おうと俺は言葉を投げ掛けた。

「……とりあえず落ち着け。それと俺と話してた女についてはもう大丈夫だ。別に君が何かする必要は無い」

「……?何でよ」

「……俺が殺したから」

「…………え?」

「だってあの地味女、君の事、クソだとか死ぬべきだとか言ってたんだぜ?許せるわけ無いだろう。それに、こんなことで君の手を汚させるわけにはいかない。君の仕事は俺がこなすし、欲しいものは全て与える。何より君は裏切らない。それはこのネックレスが証明している。今だって俺を許してくれた。……過去に一度、俺は君を疑ったことがある。ああ、許しがたい事だ。だけど君は俺を許してくれた。そして俺は誓ったんだ。ああ、生涯君だけを愛し続けようと、俺に必要なのは君だけなんだと。だからあの地味女は不要だった。不要だし君を嘲笑ったんだ。許せるわけ無いじゃあないか。邪魔で邪魔で邪魔で邪魔で邪魔で邪魔で邪魔で邪魔で、酷く不快で、この世に要らない人間だったんだ。だから殺した。もう君は手を汚す必要は無い。君が要らないものは俺が全て消すし、君が欲しいものは全て与えよう。だから君と俺。いつまでも一緒に居よう。いつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも」

「…………」

 俺はポケットからナイフを取り出した。

 ……赤い赤い赤い赤い赤い。これは血だ。地味女の血だ。

「……こ、来ないで!!」

 有栖は酷く怯えながら俺から距離を取る。

「……ああ、不要か?“コレ”は不要か?」

「…………え?何……」

 アレも不要コレも不要ソレも不要ドレも不要?……ああ、全くワガママなお姫様だ。また、またまた、またまたまた、不要なものが生まれたようで……

「ならば“コレ”はもう要らないな……」

 ……俺は自身の喉にナイフを突き立てた。




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