学校転移﹣ひとりぼっちの挑戦者﹣

空碧

文字の大きさ
107 / 125

105話 転職2

しおりを挟む
「健太、魔法のキャスティング待機はできるか?」
「キャスティング?」
「あー、えっと…魔法発動を寸止めしておいて、任意のタイミングで発動できるように、って感じ」
「ああ、多分できる」
「んじゃ、俺が合図を送るからそのタイミングで魔法を発動してくれ」
「おう!」
「まずは作戦を整理するぞ。俺が物理、健太が魔法、そして対魔の鱗になったタイミングで、体力が少なくなったら守谷に槍を落としてもらって倒す。
経験値は分配されるとはいえ、Aランクの魔物ならレベルも大分上がる筈だ。
 んで、まず小手調べで確認しておきたいのは、物理と魔法のそれぞれの対抗する鱗がどんなものかを確認すること。
次に、魔法と物理の鱗を変化させるのに必要な時間の確認と、ダメージの確認。
これが終わったら、魔闘術で2人で攻撃していく。
それまでは健太は後方で魔法待機」
「「了解!」」
「んじゃ…始めるぞ!」

その掛け声と共に、マルチノセロスの方へと想良は走り出し、奇襲をしかけた。
咄嗟に武器を見たノセロスはすぐさま鱗を変化させると、赤色の鱗へと変化したのを確認した後、そのまま短剣で攻撃したが、鋼鉄を相手に攻撃しているような、まるで攻撃が通ってない感覚があった。

「チッ…やっぱ耐性はきついな」
「大丈夫そうか?」
「おう。動きは遅いから問題ない。じゃ、連撃の後に合図を送るから魔法を頼む」
「おうよ」

暫く連撃を繰り出し、意識をこちらに向け切った瞬間を見抜き、想良は最後の一撃を合図に後ろへ下がる。
その瞬間に健太は魔法を発動し、ノセロスの反応を3人は確認した。

「今だ!」
「【火槍】!」

命中した途端、爆発が起きて煙が溢れた。その煙が冷めるのを見ると、魔法ダメージはしっかりと通っているようで、今度は青の鱗へと変化していた。

「…そんなに変化は早くないみたいだな。発射から命中まで約1.5秒、そんだけ時間があるなら、問題なく倒せそうだ。
んじゃ、こっからは──」
「「【魔闘術:魔身】」」

無属性による魔力変化を行い、状況に応じて属性開花を発動する。移動ならば風や雷を、防御は土や氷を、攻撃には火を使える。

「んじゃ、俺は左から」
「なら俺は右か」

2人は同時にノセロスの方へ走ると、手前で二手に分かれた。ノセロスはどちらを先に対処するか悩んだ末、魔法を使った健太の方へと向きを変え、赤の鱗へと戻した。

「想良!」
「おう!【魔闘術:火身】【火竜の牙】」

右手を軸に、その腕は火竜の口へと変化し、巨大な火竜はその牙でノセロスを攻撃する。
 それを見てノセロスは驚き、鱗を変化させようとすると、今度は魔力強化によって物理を強化した健太に攻撃された。

「警戒された瞬間に役割をチェンジするぞ!攻撃は通っているとは言え、耐久が高いから魔力管理はきちんとしておけ!」
「おう!」

«【ハードウェイブ】»
「これは…地震攻撃だ!【重力魔法】」
「【飛翔魔法】…想良、俺に重力魔法を!」
「【重力魔法:引力増加】」
「魔力消費は多いが…出血大サービスだ!
【魔闘術:炎身】【炎龍の息吹】」

垂直落下の物理攻撃と上位属性の魔法攻撃、変化途中の鱗も合わさり、双方の攻撃が当たると、ノセロスは既に満身創痍だった。
 しかし、その目には殺気が溢れており、道連れ覚悟で足掻こうとしていた。

「…マルチノセロス、お前のその耐久は厄介だった。お前がもう少し判断を間違えていなければ、俺たちに【共鳴】がなかったり、魔力が多くなければ、何か一つ欠けていればどちらが負けるかは分からなかっただろう。
だが…この勝負、俺たちの勝ちだ」

鱗はもうボロボロになり、変化もまともに出来ないようだった。
 それを見て想良が合図を送ると、重力魔法と突貫強化の付与魔法が加わった槍が遥か上空からノセロスを貫いた。
 その雄叫びを合図に、3人は勝利を迎えた。

「ふぅ…俺たちの勝利だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...