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幼馴染を寝取られた僕、何故か学年一の美少女に惚れられました。その一
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その日は、劇場版アニメの公開日だった。
今はちょうど春休み。僕は浮かれた気持ちで家を出た。
映画館までは電車で一駅、そこからさらに市電に乗って市街地へと向かう。
前売券はすでに買ってある。もちろん特典付きのやつだ。
「有紗と一緒に観に行けたらもっと良かったんだけどな」
思わず独り言を呟いてしまう。
有紗も結構オタ趣味があるから、思い切って誘ってみたのだけれど、その日は友達と出かける予定があると言われてしまった。
さっき、家を出て有紗ん家の前を通りかかった時にちょうど彼女のお母さんとばったり出くわしたので、少し話をした。
有紗は昨日から小坂さんと泊り掛けの旅行にいっているらしい。
「小坂仁美」さんは有紗の親友で、テニス部ではダブルスのペアを組んでいる間柄だ。
女の子二人で大阪のVSJに遊びに行ったそうで、ちょっと心配ではあるけれど、まあ大丈夫だろう。有紗はしっかり者だしな。
劇場版『ケーキを五等分できない花嫁』は、期待以上の出来だった。涙あり笑いあり。ラストシーンはマジで感動した。
満足しながら帰りの電車に乗り、最寄りの駅に降り立ったところで、僕は有紗の姿を見かけた。
特徴的なポニーテールは遠くからでも一目でわかる。
有紗たちもちょうど帰って来たところなのかな。
「有……さ……」
声を掛けようとして、僕はその場で固まった。
有紗は、男と腕を組んでいたのだ。
「げっ! 佳宏!? 何でこんなとこに!?」
有紗も僕に気付き、顔をしかめる。
「映画を観に行ってたんだよ。それより有紗! どういうことだよ! 小坂さんと遊びに行ったんじゃなかったのか!?」
僕がそう詰め寄ると、有紗は気まずそうに、
「仁美も一緒だよ。ほらそこに」
そう言われて僕も気が付いた。
腕を組んだ二人の傍に、もう一組の男女がいる。
ショートボブの少女・小坂仁美さんは、やはり背の高い男と腕を組んでいた。
僕らと同学年――高校一年で陸上部の奴だ。名前は「中山」と言っただろうか。
そして、あらためて有紗と一緒にいる男を凝視する。
やはり同学年でバレー部の男子。確か一年生ながらエースアタッカーを務めているとか何とか、聞いたことがある。
名前は確か、高橋祐司。ちょっと茶色がかった髪色の、いかにもチャラそうな男だ。
要するに、小坂さんと遊びに行くという名目で、それぞれ男連れだったってわけか。泊り掛けということは、当然昨夜は……。
「そ、そいつとヤったのか!?」
「はぁ!? 馬鹿! こんなとこでそんなこと大きい声で言うな!」
有紗が顔を真っ赤にして怒鳴る。逆ギレか!?
「ぼ、僕というものがありながら、そんな奴と……!」
それに対し、有紗はすぅっと真顔になって、
「は? あたしが彼氏とナニしようと、あんたには関係ないでしょ?」
「か、彼氏!? だ、だって、僕と君とは将来結婚しようねって誓い合った仲じゃないか!」
「え、そうなのか?」
高橋が真面目な顔で有紗に尋ねる。お前はちょっと黙ってろ!
「……ええっと、それ確か幼稚園の時の話だよね? そんな昔の話蒸し返されても知らないって」
「そんな! それに毎年バレンタインデーにはチョコだってくれてたし!」
「いやいや、あれ思いっ切り義理チョコなんだけど? ……え? あんたもしかして、あたし以外の誰からもチョコ貰ったことないの?」
眉を顰めて、有紗が僕の顔をまじまじと見つめる。
傍らでは、高橋のみならず小坂さんや中山までも、何やら気の毒そうな眼差しを僕に向けていた。やめろォ! そんな目で僕を見るなァ!
僕はその場にいたたまれず、彼女らに背を向けて走り出した。
-----------------------------------------------------------------------
「寝取られた」というのはあくまで佳宏の主観です。
なお、有紗が最初焦っていたのは、佳宏の口から親に伝わることを懸念したからです。
今はちょうど春休み。僕は浮かれた気持ちで家を出た。
映画館までは電車で一駅、そこからさらに市電に乗って市街地へと向かう。
前売券はすでに買ってある。もちろん特典付きのやつだ。
「有紗と一緒に観に行けたらもっと良かったんだけどな」
思わず独り言を呟いてしまう。
有紗も結構オタ趣味があるから、思い切って誘ってみたのだけれど、その日は友達と出かける予定があると言われてしまった。
さっき、家を出て有紗ん家の前を通りかかった時にちょうど彼女のお母さんとばったり出くわしたので、少し話をした。
有紗は昨日から小坂さんと泊り掛けの旅行にいっているらしい。
「小坂仁美」さんは有紗の親友で、テニス部ではダブルスのペアを組んでいる間柄だ。
女の子二人で大阪のVSJに遊びに行ったそうで、ちょっと心配ではあるけれど、まあ大丈夫だろう。有紗はしっかり者だしな。
劇場版『ケーキを五等分できない花嫁』は、期待以上の出来だった。涙あり笑いあり。ラストシーンはマジで感動した。
満足しながら帰りの電車に乗り、最寄りの駅に降り立ったところで、僕は有紗の姿を見かけた。
特徴的なポニーテールは遠くからでも一目でわかる。
有紗たちもちょうど帰って来たところなのかな。
「有……さ……」
声を掛けようとして、僕はその場で固まった。
有紗は、男と腕を組んでいたのだ。
「げっ! 佳宏!? 何でこんなとこに!?」
有紗も僕に気付き、顔をしかめる。
「映画を観に行ってたんだよ。それより有紗! どういうことだよ! 小坂さんと遊びに行ったんじゃなかったのか!?」
僕がそう詰め寄ると、有紗は気まずそうに、
「仁美も一緒だよ。ほらそこに」
そう言われて僕も気が付いた。
腕を組んだ二人の傍に、もう一組の男女がいる。
ショートボブの少女・小坂仁美さんは、やはり背の高い男と腕を組んでいた。
僕らと同学年――高校一年で陸上部の奴だ。名前は「中山」と言っただろうか。
そして、あらためて有紗と一緒にいる男を凝視する。
やはり同学年でバレー部の男子。確か一年生ながらエースアタッカーを務めているとか何とか、聞いたことがある。
名前は確か、高橋祐司。ちょっと茶色がかった髪色の、いかにもチャラそうな男だ。
要するに、小坂さんと遊びに行くという名目で、それぞれ男連れだったってわけか。泊り掛けということは、当然昨夜は……。
「そ、そいつとヤったのか!?」
「はぁ!? 馬鹿! こんなとこでそんなこと大きい声で言うな!」
有紗が顔を真っ赤にして怒鳴る。逆ギレか!?
「ぼ、僕というものがありながら、そんな奴と……!」
それに対し、有紗はすぅっと真顔になって、
「は? あたしが彼氏とナニしようと、あんたには関係ないでしょ?」
「か、彼氏!? だ、だって、僕と君とは将来結婚しようねって誓い合った仲じゃないか!」
「え、そうなのか?」
高橋が真面目な顔で有紗に尋ねる。お前はちょっと黙ってろ!
「……ええっと、それ確か幼稚園の時の話だよね? そんな昔の話蒸し返されても知らないって」
「そんな! それに毎年バレンタインデーにはチョコだってくれてたし!」
「いやいや、あれ思いっ切り義理チョコなんだけど? ……え? あんたもしかして、あたし以外の誰からもチョコ貰ったことないの?」
眉を顰めて、有紗が僕の顔をまじまじと見つめる。
傍らでは、高橋のみならず小坂さんや中山までも、何やら気の毒そうな眼差しを僕に向けていた。やめろォ! そんな目で僕を見るなァ!
僕はその場にいたたまれず、彼女らに背を向けて走り出した。
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「寝取られた」というのはあくまで佳宏の主観です。
なお、有紗が最初焦っていたのは、佳宏の口から親に伝わることを懸念したからです。
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