幼馴染をチャラそうな男にかっさらわれた陰キャボッチ、ひょんなことから学年一の美少女とラブラブに。やればできるとわかって後悔してももう遅い。

平井敦史

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幼馴染を寝取られた僕、何故か学年一の美少女に惚れられました。その二

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 有紗たちに背を向けて闇雲やみくもに駆け出した僕は、しばらく走った後、息が切れて膝に手をついた。普段あんまり運動してないからなあ。
 ぜえぜえとあえぎながら周囲を見回すと、そこは全然知らない場所だった。
 我が家の最寄り駅、とはいうものの、2km近く離れているし、この辺りは中学の校区も違う。

「……まあいいか。スマホのナビアプリで帰り道はわかるだろ。それより少し休もう」

 そう呟いて、僕はふと目に入った公園に立ち寄った。

 公園には、春休みということもあって子供の姿がちらほら目に付くけど、それほど人影は多くない。自販機でジュースを買い、ベンチに腰掛けてキャップを開ける。

畜生ちくしょう、有紗の奴……。僕なんかよりあんなチャラそうな奴がいいのかよ!」

 さっきのことを思い出して、涙がこぼれ落ちる。

 有紗。うちの学年でも五本の指に入るほどの美人で、僕の自慢の幼馴染。オタクで陰キャでぼっちな僕にも、気さくに話しかけてくれ、彼女自身オタ趣味もあって、話も合った。こんな素敵な女の子と幼馴染だなんて、神様本当にありがとう。――そう思っていたのに。

「何でだよ有紗ぁ……。何であんな男に……!」

 ジュースをあおりながら、僕はしばらく愚痴と涙をこぼし続けたが、やがてペットボトルも空になり、仕方なしに立ち上がった。
 もう一本飲む気にもなれないし、そろそろ帰るか。
 そう思いつつ周りを見回した僕の目に、一人の少女の姿が映った。

 あれ。遠藤さんじゃないか?
遠藤えんどう舞音まいん」さん――。この一年間僕と同じクラスで、学年一との呼び声も高い美少女だ。こんなところで何をしているんだろう。
 興味を引かれ、僕は彼女に近付いて行った。

「あのー。遠藤さん? こんなところでどうしたの?」

 公園の片隅に植えられた一本の木を見上げ、何やらおろおろした様子の彼女に声を掛ける。

「きゃっ!」

 驚いた、というよりも悲鳴にも似た声を上げて――小さい声で良かった。もう少し大きかったら、通報されかねないところだ――、遠藤さんが振り向く。

 うわ、やっぱり可愛い。

 艶やかなストレートの黒髪に、つぶらな瞳。すっきりとした小顔で、ぷるぷるの唇がなまめかしい。
 よそおいは、桜色のカットソーにミントグリーンのカーディガン、オフホワイトのフレアスカート。
 うん。彼女の私服は初めて見るけど、学校でのイメージ通りだな。めっちゃ可愛い。
 そして、身長は150cmそこそこながら、非常にボリュームのある胸周りは圧巻だ。

「あ、えーっと、佐藤君、でしたっけ」

「わ、嬉しいな。僕の名前、憶えていてくれたんだ」

「そ、それは、一年間同じクラスでしたし……」

 そう言いつつも、遠藤さんは少しずつ後ずさりしている。し、しまった! うっかり声を掛けちゃったけど、彼女は重度の男性恐怖症なんだっけ!
 学年一の美少女である遠藤さんに言い寄ろうとする男どもは大勢いたけれど、彼女は男性が大の苦手で、断られるどころか、悲鳴を上げられて、職員室沙汰ざたになったことさえあったと聞いている。
 やばいな。こんなところで大声を上げられたら、職員室どころか警察沙汰だ。

 しかし彼女は立ち止まり、真っ直ぐに僕を見つめて言った。

「あ、あの! 佐藤君、ララちゃんを助けてくれませんか!?」

「ララ、ちゃん?」

 困惑する僕。彼女は木の枝を指さして、

「あの子です。一緒にお散歩していたら、犬に吠えられて、驚いて木に登ったはいいけど、降りられなくなってしまったみたいで……」

 なるほど、彼女が指し示す先には、一匹の子猫がいた。
 短い銀色の毛に、渦を巻いたような黒い縞模様。アメリカンショートヘアーってやつだな。
 そう言われてふと気が付いたけど、彼女はバスケットを抱えていた。それに子猫を入れて散歩していたんだろう。

「犬って、まさか野良犬?」

「いえ、小父おじさんが散歩させていた大型犬なんですけど、小父さんはそのまま行ってしまって……」

 何だよそれ。ひどい奴だな。いや、まあおっさんのことはどうでもいい。

「わかった。僕に任せてよ」

 僕は背負っていたリュックを置いて身軽になると、木に登っていった。
 木登りなんて、小さい頃に何度かやったことがある程度なんだけど、意外といけるもんだな。
 ララちゃんのいる枝に近付き、遠藤さんから手渡された猫のおやつを差し出して、声を掛ける。

「ほーら、ララちゃーん。もう大丈夫だよー」

 ララちゃんは最初のうちは警戒していたようだけれど、おやつの誘惑には勝てなかったのか、少しずつ近付いてきた。そして、おやつを食べ終えたところで、優しく抱きかかえてやる。

「よーしよし。いい子だねー」

 子猫をあやしながら、僕は木から降りていった。無事に地面に降り立つと、はらはらした表情で見守っていた遠藤さんがほっと胸を撫で下ろす。

「あのぅ……、佐藤君、本当にありがとうございました」

「いやいや、お安い御用だよ」

 本当、遠藤さんに喜んでもらえるなら、このくらい何度でもやってあげるよ。

「それじゃあ私、もう帰りますね」

「う、うん」

 遠藤さんちはこの近所なのかな? 

「よ、よかったら、家まで送っていくよ」

 口にしてから、しまった、と思った。男性恐怖症の遠藤さんにとってはありがた迷惑以外の何ものでもないだろう。――そう、思ったのだけれど。

「本当ですか? ありがとうございます!」

 遠藤さんは心底嬉しそうに笑って、そう答えたのだった。


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遠藤さんの服装、作者的には真面目に女子高生の可愛らしい春物私服ファッションのつもりで書いているのですが、「三色団子はないわ~」等、ご意見があればお寄せください^^;
まあ、ちょっと天然系のではではありますし……。
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