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引き揚げ船
しおりを挟むこの世の悲惨さを沢山経験した私
生きる事食べる事に必死で
その他の事は考えられない程
ひもじい思いをしてきた私達
だけどやっとそんな日々から
開放さる日がやって来た
昭和46年
遂に日本に帰る引き揚げ船に
乗れる事になったのだ
「美紀!
やっと日本に帰る事が
できそうだぞ」
トクさんはこの何ヶ月間で
すっかり痩せてしまった体で
そう言った
「日本に帰れるの!
嬉しい!
本当に帰れるんだね、、」
私もげっそり痩せた体で
そう言った
みんな痩せてガリガリで
モンペも汚れ果て
顔も体も真っ黒だった
だけどようやく
日本に帰れると言う希望が
私達の荒みきった心に
光を灯した
これまでの悲惨な生活の中で
家族みんなが生き延びたのは
奇跡だった
沢山の人が無惨にも亡くなって
いったのだから、、
そしていよいよ引き揚げ船に
明日乗れると言う前日
運悪く1歳の次子が
高熱を出した
真っ赤な顔をして
ぐったりしている
もちろん薬などない、、
もし明日の引き揚げ船に
乗れなかったら
もう日本に帰れないかもしれない、。
私は不安に襲われた
「トクさん、、
次子大変な事になったね、、
明日どうなるんだろう、、」
私は不安な顔でトクさんを見つめた
「大丈夫だ!
明日はどんなに高熱あっても
意地でもみんなを日本に
連れて帰るからな、、
今まで苦しい中
必死で生き抜いて
きたんだから、、
美紀は富子をしっかり頼むぞ、、」
「トクさん
分かった、、
絶対に日本に帰ろうね!
私、富子の事しっかり見て
船に乗せるからね!」
私は次子の看病をしている
トクさんを見つめた
次子の熱は全く下がる
様子を見せなかった
私達は祈る様な気持ちで
夜を過した、、
そしてほとんど寝る事が
出来ないまま朝を迎えた
運命の朝だった、、
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