この学園には神々の集う部活ヴァルハラが存在する

乾いたガラス瓶

文字の大きさ
1 / 1

1-1 ヴァルハラに招かれる

しおりを挟む
「ど、どうか......どうか、愚かな私たちに友人の作り方をご教授くださいッ!!」

「「聖母様ッ!」」

「えぇ......」


 俺は、神々に頭を下げられながら、困惑していた。

 学園で神と呼ばれている人たちに頭を下げられているから、それとも、神々の会談が友人を作る方法だからか......いや、俺が一番驚いたのは――――


 この学園で聖母と呼ばれていることだ。

 ちなみに言っておくが、俺は男子だ。 俺っ娘では決してない。 すまない。


―――――――――

神々に囲まれる数十分前.......



「おい、かおる、俺さっきさ、化学室に忘れ物しちゃって......」

「あーはいはい、お前部活あるもんなこの後......わかったよ、俺が取りに行っとくよ」

「助かる! さすがせい......いや、俺の友人! 今度なんかおごるから!」

「お、絶対覚えておくから忘れんなよな~」


 申し訳なさそうに、教室を走り出る友人の後姿を見送りながら、俺も化学室へと歩みを向けた。
 
 俺は、他人に頼まれるとどうも断れないらしい。
 親からの遺伝なのか、それとも高校まで成長するうちに勝手に身についたものなのか。
 それはわからないが、俺は決してこの生き方に苦労を感じたことはない。

 友人たちも無理難題なことを頼んでくるわけではないし、今回の忘れ物を取りに行くことも5分程度歩けば済む話だ。
 
 よく赤の他人からは、「ボランティア精神の塊」とか、「真のお人好し人間」なんていわれているらしい。
 まぁ、これも友人からの話だから、あまり信ぴょう性はないが......

 だが、そのおかげか、友人だってクラスにとどまらず、他クラスにもかなりいる。
 それに、先生方からの信頼も、自分で言うのもなんだが、かなり厚い。
 まぁ、ほぼ毎日授業の準備を手伝ったり、プリントをまとめたりと、いろんなことをしているが......。

 それでも、やってて心がスッキリする感じがするから、俺にとってはプラスだらけだ。


「よし、もう少しで化学室か......ふぅ、放課後のせいか静かだ」


 それもそのはず。
 化学室があるこの2号館は、生徒たちが普段いる1号館から渡り廊下を挟んでいるせいで、賑わいがない。
 それに、部活動の教室もこの2号館では1つを除いてないため、放課後になれば、閑古鳥が鳴いている。

 その静けさは、教室に設置してある時計の針の音が廊下まで聞こえるくらいだ。


 と、その静けさを楽しんでいたその時だった。

 
 俺は、化学室に付く手前でその一つの部活のことを思い出した。


 部活名は、通称―ヴァルハラ―文字通り、神々が集まる場所だ。
 俺が通うこの学園には、他称 神々が存在する。

 それぞれが専門の分野で秀でている......まぁ、一言でいえばとがっている人物たちのことだ。
 そして、俺の憧れでもあったりする。

 一般的な人間であること......それが、俺の唯一のコンプレックスのため、自分の特技を持っており他人に認められている神々は、俺にとっては憧れの存在だ。


 と、久しぶりにネガティブ思考を頭に浮かべながら、例のヴァルハラの前を通り過ぎようとした。
 その時だった。


「貴様たち、そろそろ今回の議題を説明する。 これは、長年我々にとって悩みの種であるものだ」

「あぁ、ついに来てしまったか......」

「くっ、パンドラの箱をあれほど開けるなといったのに......ッ!」

「いや、きもいこと言わないでよ......それよりも、その議題はさ、私たちだけじゃ無理じゃない?」


 音があまりない空間である故、話し声が、廊下まで響いていた。
 中で会談を行っている、神々たちも、まさか放課後に生徒がここら辺を歩いていないと思っていたのだろう。
 話が筒抜けである。

 俺は、神々の話を聞くなんて恐れ多いと思う一方で、学園で神々として謳わられている彼らでさえも解決できない問題を気になってしまった。

 普段なら、立ち止まらずに、立ち去っていたがこの時だけはどうしても、教室の前でぴたりと張り付くように止まってしまった。


「うん......私もそう思う......あれは、無理、絶対」

「うむ、まぁそれを含め、今日もあの話題に触れようと思う」

「「友人の作り方ッ!」」


 ぶふぉっ! 咳をするときよりも、盛大に吹き出してしまった。

 あの神々がまさか、友人の作り方で悩んでいるとはだれが考えようか。

 
 と、その時だ。

 
 ガラッといきなり、教室の戸が開いく。

 そこからは、机を円状にして並べて座っている神々の様子が、よく見れた。


「貴様、聞いてしまったようだ......ッ!? ま、まさかあなた様は!?」

「はっ!? そ、そんな!」

「こ、ここここここんなところにあの方が!?」

「うぇ!? マジやばっ! えーッ!?」


 座っていた神々は、一斉に立ち上がったと思えば、俺の顔を見るなり唖然とし、額に冷や汗をかいている。
 どちらかというと俺がかきたいくらいだ。

 神々に一斉に見られた瞬間、普段ならば感じることのない圧がものすごい......いや、本当にすごい、重い。

 神々は、ゆっくりと歩き出すと、額に汗をかいたまま俺を囲むようにして集まる。

 何事か。

 これはいったい何の儀式だろうか。 それぞれが頭を垂れた状態で、俺を囲んでいるせいでなんかオカルト的な儀式の最中のようにも感じる。


 一体これから何が......


「......ださい」

「え?」

「ど、どうか......どうか、愚かな私たちに友人の作り方をご教授くださいッ!!」


 この時俺の平穏な日々が音を立てて崩れていくような感じがした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

【朗報】俺をこっぴどく振った幼馴染がレンカノしてたので2時間15,000円でレンタルしてみました

田中又雄
恋愛
俺には幼稚園の頃からの幼馴染がいた。 しかし、高校進学にあたり、別々の高校に行くことになったため、中学卒業のタイミングで思い切って告白してみた。 だが、返ってきたのは…「はぁ!?誰があんたみたいなのと付き合うのよ!」という酷い言葉だった。 それからは家は近所だったが、それからは一度も話をすることもなく、高校を卒業して、俺たちは同じ大学に行くことになった。 そんなある日、とある噂を聞いた。 どうやら、あいつがレンタル彼女なるものを始めたとか…。 気持ち悪いと思いながらも俺は予約を入れるのであった。 そうして、デート当日。 待ち合わせ場所に着くと、後ろから彼女がやってきた。 「あ、ごめんね!待たせちゃっ…た…よ…ね」と、どんどんと顔が青ざめる。 「…待ってないよ。マイハニー」 「なっ…!?なんであんたが…!ばっかじゃないの!?」 「あんた…?何を言っているんだい?彼女が彼氏にあんたとか言わないよね?」 「頭おかしいんじゃないの…」 そうして、ドン引きする幼馴染と俺は初デートをするのだった。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?

宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。 そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。 婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。 彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。 婚約者を前に彼らはどうするのだろうか? 短編になる予定です。 たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます! 【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。 ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

俺は、こんな力を望んでいなかった‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
俺の名は、グレン。 転移前の名は、紅 蓮(くれない 蓮)という。 年齢は26歳……だった筈なのだが、異世界に来たら若返っていた。 魔物を倒せばレベルが上がるという話だったのだが、どうみてもこれは…オーバーキルの様な気がする。 もう…チートとか、そういうレベルでは無い。 そもそも俺は、こんな力を望んではいなかった。 何処かの田舎で、ひっそりとスローライフを送りたかった。 だけど、俺の考えとは対照的に戦いの日々に駆り出される事に。 ………で、俺はこの世界で何をすれば良いんだ?

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...