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始まった新生活

お仕事の見学※

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 ムニュっとした感触がした後に、僕の唇がヌルッと撫でられた。僕は口を開けて門も開けて、熱いものが入ってくるのを待った。

「ん……んっ…ん」

 熱いのが中に入ってくると、僕の熱いのと遊び始めた。お互いに絡み合ったりするたびに、体がムズムズしてくる。せっかく下半身の熱が冷めてたのに、また熱を溜め込んできたのを感じた。

「はふ…ん…ん…っちゅ…ん」

 時折オリバーさんは僕の下唇を吸ってから少し唇を離して口の角度を変えて、また再び合わせてくる。門をなぞったり、天井を撫でたり、熱い物を絡めあったりとお互いの口の中を行き来して口づけあっていた。

「んっ…ん…ぁ…ん…ん」

 天井や門の周りを撫でられるとゾワゾワする。でも、されればされるほど、なんだか…気持ちがよくなってきた。朝みたいに変な声も無意識的に出てしまう。

 僕は夢中になって、オリバーさんがくれる刺激を受け入れた。気持ちがいいのは、なんだか好きかもしれない。この快感とも呼べるものに浸ると、僕が僕ではないような感覚になる。何かかが溶けてしまう感覚を覚え始めた。

「…ちゅ…全く甘くはないな。やはり魔道具の影響と同じで1時間の効果だな。でも、お前の味はすごくいいな。もっとしてもいいか?」

 下唇と吸って名残惜しそうに僕から唇と離したオリバーさんは僕に甘く囁いてきた。僕はゆっくり目を開けて、熱っぽいオリバーさんの瞳を見つめた。

 ギラギラしてる瞳は何かを狙っているようだった。僕は狙われている感覚にブルリと体が震えて、溶けていた何かが急に形を取り戻してきた。冷静になった僕はスッと目を細めてオリバーさんを見つめた。

「お仕事は体液の確認では?」

「ちっ…初めての快楽に酔うのかと思ったら、なかなか芯が強いな」

 オリバーさんは少しだけ瞳の熱を冷まして、ニッと笑うと僕の頭を撫できた。僕は撫でられながらチラッと時刻魔導を眺めると、赤色が半分薄くなっていた。自分がどれだけ何をしていたのか確認できるのは確かにいい。

 いくらくらいするだろうか。今日の買い物で値段だけでも見たいな。じーっと時刻を眺めている僕の頭からオリバーさんは手を離した。

「さて、俺は結果をまとめる。お前は自由にしててくれ」

「自由ですか…。本棚の本を読んでもいいですか?」

「いいぞ」

 オリバーさんはソファーから立ち上がるとデスクに向かった。僕も立ち上がって扉に一番近い本棚の前に向かった。

 本棚には色々な本があった。魔道具の本が多い気がする。ウロウロと目を動かして本の背表紙を眺めていると、青色の表紙の本が目に入った。

「あ、懐かしい」

 学校に通っていた頃は、図書室の本を読むこともあった。その時読んでいた本の続編を見つめて、僕は青い本を手に取ってソファーに座った。

 カリカリとオリバーさんが何かを書いている音しか聞こえない空間で、僕は久しぶりの読書を楽しんだ。



    コンコンコン



 しばらくすると、扉を叩く音がした。僕が本から顔を上げて返事をする前に、オリバーさんが返事を返した。

「なんの用事だー」

「シャルムせ…んせ、たりま…せん」

「っち、おバカかがきたか」

 苦しそうな男性の声が聞こえて、僕は本をテーブルの上に置いて立ち上がると扉に駆け寄って開けた。すると扉の前で青白い顔で、苦しそうに胸を押さえている薄い紫色の髪の毛に、茶色い瞳の男子生徒が立っていた。上着には黄がついていた。3年生のようだ。

「…軽めのやつか」

 オリバーさんはこちらに寄ってきて僕の後ろから生徒を確認すると、生徒の左腕を右手で掴んで立ち上がらせ、ズリズリと引きずって自分のデクスの椅子に座らせた。椅子に座っても苦しそうな様子に近くに立って眺めている僕はとても心配になってきた。

「アシェル。軽めのはまず皮膚から試す」

 オリバーさんは片膝をついて、生徒の顔を眺めるように見上げた。そして生徒の右手を右手で握って魔力を流し始めた。生徒はハァハァと苦しそうに肩で息をして、顔色は悪かった。

「うっ…」

 オリバーさんが流す量を増やしたのか、生徒は眉間に皺を寄せたが、徐々に皺がなくなって顔色も良くなってきた。息遣いも穏やかになってきた様子から、ある程度魔力が増えたようだ。

「よし、こんなもんだな。今日はもう生活魔法だけにして、もう帰れ。授業も終わったんだろ?」

「はい」

「帰って飯食って、寝ろ。いいな?」

 生徒はノロノロと立ち上がってオリバーさんに頭を下げてから、僕に目線を向けた。身長は僕より頭半分高くて、薄い紫色の髪は僕と同じぐらいの長さだ。1つに結って横に流している。左耳には茶色の耳飾りがついていた。左目元にある黒子が特徴な可愛らしい顔をしていた。

「もしかして、女子が騒いでる可愛い新人の先生?」

「え?あ、今日からここに勤めることになりました。アシェル・ランベルツです。よろしく」

「3年のローガン・ブルックスです。穫れの3月に卒業予定なので、しばらくの間ですがよろしくお願いします。シャルム先生曰く、超おバカからおバカになりました」

 くすっと笑ってオリバーさんを流し目で見つめたブルックス君は、変な色気を出していた。オリバーさんはハァっとため息をついてから立ち上がると、ブルックス君の頭を撫で始めた。

「ブルックスも卒業か。長かったなー…」

「先生の教え方が悪いのでは?ドバッときて、ガッとか言われても分かりませんから」

「ハァ?そのまんまだろ」

 オリバーさんは撫でるのをやめると、収納から蓄積魔導具を取り出して魔力を回復しながらブルックス君に話しかけた。

「使った魔力は明日から補充しとけよ。用事が終わったらさっさと帰れ」

「可愛い教え子に冷たいですね。わかってますよ。じゃ、ランベルツ先生。失礼します」

 僕にニコッと微笑んだブルックス君は軽い足取りで部屋から出ていった。

「あいつ、あー見えて、この国の公爵子息だから」

「え、アイミヤ公国統治者の公爵家ですか?」

「そ」

「国名と家名は同じでないのですね…」

 オリバーさんは魔道具を収納に入れると、また椅子に座ってデスクで何か作業を始めた。チラッと時刻を見ると薄い赤色の4をしめしていた。

「仕事は赤の8時から青の5時まで。青色の5になったら終わりだ」

「はい。わかりました」

 そういえば、アイザックさんもそんなことを言っていた気がする。僕はソファーに戻ってテーブルの上の本を手に取ると、残りの時間を読書で楽しんだ。


「終わったぞー」

 本から顔を上げると、時刻は青色の5だった。慌てて本を本棚に戻すと出入り口の前で立っているオリバーさんに近寄った。2人一緒に部屋から出て、オリバーさんは扉に鍵をかけた。

 そして僕を先導するように少し前を歩き出したオリバーさんの背中を追って僕は歩き始めた。

「飯は外で食うか?」

「お金…ないですけど…」

「払ってやるよ。使用人に連絡しとけ。湯浴みの手伝いがあるなら尚更な」

「湯浴みは1人でできます!」

 僕は歩きながら白ウサギを出すと、[買い物に行きます。夕飯は食べてきます。明日の朝まで大丈夫です]っとウサギにつぶやいて、イーサンの元へ送り出した。オリバーさんは目の端で僕のウサギを見てニヤッと笑った。

「お前にピッタリだな。ウサギ」

「…弱々しいってことですか?」

「ちげーよ。食うと美味いってこと」

「…………」

 僕はスッと表情を消して無言を貫いた。オリバーさんはケラケラ笑って前を向いて歩き始めた。僕たちはそのまま学園から出てオリバーさんが呼んだ馬車に乗って市場へと向かった。
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