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旅に出ます
考えるのはやめた
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『ご主人様。清々しい朝ですね』
「………」
『朝食はパンとチーズですか?良いですねぇ』
「………」
『ご主人様は今日も美しい。なんと美しい瞳なのでしょう。貴方様の輝く瞳がコチラに向けられる度に胸が張り裂けそうです』
私は隣から聞こえる声を無視してせっせと朝食の支度をしていた。ケイレブはうとうとしつつも出された肉の丸焼き(買っておいて収納に入れておいたもの)をカジカジと噛んで食べている。
収納ポーチからパンを取り出し、食べやすい大きさに切る。チーズも取り出して切り分けてパンに挟んでサンドイッチに。飲み物はあったかぁぁいお茶。気温が暑くなる前に出発しなければならない。
『今日もいい天気ですねぇ』
呑気な声で語りかけるアイツは暑さも寒さも感じないのか、のんびりとしている。昨日契約してからというものの、呼び名が〈ご主人様〉になった。
めっちゃイケメンからご主人様呼ばわり。あの状況がなければアリ寄りのアリ。
でも、コレは、知らない、見ない、絆されない!!
声も姿も見えているが私もケイレブもアイツを無視し、食べ物を咀嚼する事に専念していた。
『そろそろ出発ですか?』
身支度を整え、野宿の片付けを終えた私達に呑気なアイツはニコニコと微笑んで話しかけてくる。
もちろん、無視した。
2人でゴーグルをつけ、『なんですか!?それは!』なんて声も聞こえたが聞こえない。
天気もいいし、砂嵐もまだ発生してない様子なためケイレブに鞍をつけて私が跨ると、ケイレブはアイツを引き離す勢いで猛ダッシュを始めた。
『あっあああ、お待ちくださいいいぃ』
なんて声が遠くから聞こえてくる頃に私達はやっと口を開いた。
「あの、ピーチクパーチク話すアレ、ほんとうるさい」
「ガウ(自己責任だろ)」
「だってぇええ、何年振りかの幼児に興奮しちゃって…禁断症状出てたからさ、ね?反動が凄くって」
「ガウ…ガウガウ(だからってアレはないだろ…全く)」
「ごめんってぇええ。でも、置いてこれた感じだしなんとかなったんじゃない?」
「ガウ(だといいけど)」
『お二人はどうやって意思疎通されているのですか?何か魔道具を利用されて?』
「え?いや、生まれた時から話せ…………」
「…………」
『おお!それはすごい!』
「「!?!?、?!?!」」
私達の会話に入ってきた声が何かを理解したケイレブはキキキキキィっと音がしそうなほどの急ブレーキをかけた。実際には砂埃がズシャー!ワッサー!と舞ったのだが。
私は咄嗟に鞍の紐に捕まって、内腿に力を入れたから放り出される事は無かったが背中からゾゾゾーっと悪寒を感じていた。
『おや?止まってしまうのですか?進み始めたばかりですがもうご休憩を?』
「なんであんたここにいるのおおおお!!?!」
声がする方を見れば真っ黒な鳥、まるでカラスの様な鳥が私達と並走して飛んでいた。
見た目はまんまカラス。この世界のカラスは確かクチバシが黄緑色だったはず。でも見た目は私の前世のカラスだった。
カラスはのほほんとしながらケイレブの頭の上に止まると、コロコロと鈴が鳴るような声で笑った。
『何をおっしゃっておられるのか。私達はすでに一心同体。常にご主人様が何処にいらっしゃるのか分かるのです。あ、もしや姿が違うからびっくりされたのですか?契約した事で実体を持つことができましたが、あの身体を保つのは大変でしょう?どんな姿になってついて行こうかと考えてる間にお二人が出発してしまい焦りました。あまりに速いスピードでしたので、追いつくには空を飛ぶのが1番かと!』
「いや、そこじゃない!一心同体ってなに!?!」
『そのまんまの意味では?』
「まってまってまって!?いついかなる時もアンタがついてくるってこと!?」
『流石に入浴など女性にとって異性に見られたくない場所にまでは着いていきませんよ?』
「そんなことされた日には丸焼きにしてやる!!!」
『あはは。ほんと愉快なご主人様だ』
「…ワフッ…フゥ………ガウ?(なんか話が噛み合ってないような。しかもこいつなんか性格変わったな。初めの泣き虫は演技か?)」
私達の戸惑いすら何も気にしてない様子の真っ黒なカラスことベルナールは、頭をガシガシ掻きむしって苛立ちを隠せない私を尻目に右側の羽を広げて道を指し示すような姿勢になった。
『ご主人様。彼方の方角が目的地の近道でございます。そのまま真っ直ぐ進みましょう。さすれば陽が沈む頃には緑地が見えてくることでしょう。一晩そこで野宿をしたのち、隣国に入国されるのがよろしいかと』
まるで有能な執事カラスことベルナールは、話をした後にニコッと微笑んで私を見つめた。カラスなので実際に微笑んでいるわけではないが、何故かコレが微笑んでいるのが分かる。
掻きむしってボサボサになった髪のまま私はジトっとした目でベルナールを見つめた。
「それが正しいって保証はないわよね?あと、日中、凄く、暑いの。進める距離なんてたかがしれてるわ。この砂漠は砂嵐がなく天候に恵まれて最短で3日で抜けれるって話なの。貴方の話では今日1日で隣国の国境付近まで行けるってことじゃない。無理に決まってるわ」
私が反論すればベルナールはやれやれといった様子で羽を広げた。
『ご主人様。それは私がいない旅人の場合です。私がいれば問題ありません』
「いーや?問題しかないけど??むしろ面倒しかないけど??」
『私ほど有能な者はおりません!』
「国滅ぼしたくせに?」
『アレはアレ、ソレはソレ、コレはコレでございます』
「ガウガウ…(ああ言えばこう言う…)」
『信じてください!』なんて言って胸を張るベルナール。カラスなので胸を張れば胸毛がモフモフっと目立つ。
(あの胸毛、引っ張りたい…または顔を……)
おっと、危ない危ない。モフモフ大好き欲望が前にですぎてしまった。
少し垂れた涎を手の甲で拭うと、私はケイレブの首あたりにある毛皮をギニュッと掴んだ。
「日中、暑いのよ」
『左様でございますね。砂漠ですから』
「この、毛皮の塊に乗ってるの。お互いに暑いの。ね?分かるわよね?そのまんま進めば動物愛護団体案件になるの!」
『ケイレブ様はとても艶やかな毛皮で、素晴らしいですね。さすがご主人様の兄上でございます』
「……だーかーら!暑いんだから長距離は進めないって言ってるでしょ!!!!」
私の苛立つ様子すら楽しいのかベルナールはまたクスクスと笑った。
『大丈夫ですよ。とりあえず進みましょう。ささ、ケイレブ様。その逞しい御御足を動かしてくださいませ』
狼の頭の上に止まるカラスはピョンピョンッと跳ねる。ソレを煩わしそうな顔で狼はブンブンと顔を振った。
「……ガウ!…ガウガウ(ちょ、頭の上で飛び跳ねるな!鉤爪が刺さってる)」
『おやおや、申し訳ございません。さあ、さあ。急ぎましょう。先ほどの速度であれば砂嵐にも出会うことなく進めます。ささ、レッツらゴーでございます』
「…ガウ、ガウガウ…ヴヴヴ(いでぇ、わかったわかったから、飛び跳ねるな)」
「ちょ、待って私はわかってなっ、ちょっとおおおお!?」
まだ話は終わってないぞっと声をかける前にケイレブはベルナールの鉤爪から逃れようと走り始めた。ベルナールはすぐに頭から飛び立って私達の横を並走し始めた。
「待って、ケイレブ。私は納得してない!」
「ガウガウ?ガウ(永遠に刺さる爪に耐えろと?無理)」
「だからって鵜呑みにして進むのはダメでしょ!?」
「ガウガウ!(そもそも全部エヴィのせい!)」
「くっ、くううう。そうだけどもさぁああ」
口喧嘩しながら私達は前に進んだ。
びっくりする事に、そしてムカつく事に、ベルナールの言う通りにしたら国境沿いのオアシスに陽が沈む前には辿り着いた。
しかもしかも、あんなに照り照りの日差しを浴びたにもかかわらず。私達は暑さにバテる事なく進めてしまったのだ。
なんならケイレブはずっと走り続けていたにも関わらず疲れもなく、オアシスについて水を飲むまで特に喉が渇くこともなく…。
私は汗一つかかず、涼しさを感じていたぐらいだった。速度もかなりあったため、砂埃もすごかったが鼻と口を隠さなくても穴に入り込むこともなかった…。
初日とは大違いな状態に私達2人は首を捻りつつ、この不思議現象の元凶であろう真っ黒なカラスに詰め寄ることにした。
「ちょっと、どういう事か説明しなさい」
両手を腰に当て、上から見下ろすように声をかければパシャパシャッとオアシスの泉で水浴びをしていたベルナールはこちらを向いてニコッと微笑んだ。そして水浴びをやめて地面に向かってピョンピョンッと跳ねて移動すると、私の足元までやってきて上を見上げた。
『私ほど万能な魔道具はございません。何故ならまるで神秘の森が与える力かのような力を与えることができるのですから。ケイレブ様のお身体が疲れ知らずになるように力を与え、ご主人様の周りが暑くならないように、また砂で辛くならない様に膜のようなモノを施しました。私がチョチョイのチョイッとしたというわけです』
「なんなのよ、その魔法みたいなチートは…」
『ふふふ。此処まで出来るのは契約出来たからでございます。ご主人様が作成される魔道具にも限界がございます。しかし、そこを補うことができるのが、私ベルナール。万能の魔石である私の出番でございます!魔獣よりも優れた力を持つ私を手元に置いて損はございません!』
「ガウガウ…ガウ?(万能の魔石…聞いたこともない。ナニソレ?)」
私の隣にちょこんとっ座っていたケイレブが首を傾げれば、ベルナールはふふん!っとまた胸を張った。
『この世界で唯一無二の魔石でございますからね。ご存知ないのは当然です!私は神秘の森が直接作り出した魔石。しかも意思がある魔石でございます。本契約できるのは一度きりですが、契約者の足りぬ部分を補う役目の適任者は私以外におりません!』
「…ちょっと本当昨日と様子が違いすぎる。人間から魔石になって国を護りたいしてた王太子はどこいったのよ」
『そんな者は魔石になり変わるために肉体を差し出した時点で死んでおります。私はその者の執念、ただの思念であり、魂ではないのです。かの者の魂はすでに輪廻の輪に加わっておりますよ』
ふふふっと少しだけ悲しそうな瞳で微笑むと、ベルナールはバサバサッと音を立てて飛び立った。少しだけ話題から逃げようとしてる様にも見えるが、私達は飛び立ったベルナールをジト目で見上げた。
『魔獣が寄り付かぬよう処置をしてまいります。お二方はお疲れでしょうから、お早めに水浴びやお食事をなさってください。朝日と共に起床し、国境に向かえばお昼頃には入国が出来ますよ』
私達の頭上を旋回しながら話していたベルナールは、言うことだけ言って飛び立って行った。
そして、私達はしばらく2人でボーッと空を眺めた。双子だからなのか、お互いに何となく考えていることがわかる。
空から目線を外し、同時にお互いに目線を向けると私達は同時に小さく頷いた。
「なんか、色々ツッコミどころが多すぎるけど深く考えるのをやめようと思う」
ケイレブは私の呟きに頷くと、慰めるように私の足を前足でポンポンッと軽く叩いた。
「ガウガウ(明日に備えて早く寝よう)」
「そうね。寝ましょ」
何故を追求すべき点は幾つもあるが、私達はベルナールについて詮索することをやめた。
何故なら、やぶ蛇で寝た子を起こすのは面倒だったからだ。
「………」
『朝食はパンとチーズですか?良いですねぇ』
「………」
『ご主人様は今日も美しい。なんと美しい瞳なのでしょう。貴方様の輝く瞳がコチラに向けられる度に胸が張り裂けそうです』
私は隣から聞こえる声を無視してせっせと朝食の支度をしていた。ケイレブはうとうとしつつも出された肉の丸焼き(買っておいて収納に入れておいたもの)をカジカジと噛んで食べている。
収納ポーチからパンを取り出し、食べやすい大きさに切る。チーズも取り出して切り分けてパンに挟んでサンドイッチに。飲み物はあったかぁぁいお茶。気温が暑くなる前に出発しなければならない。
『今日もいい天気ですねぇ』
呑気な声で語りかけるアイツは暑さも寒さも感じないのか、のんびりとしている。昨日契約してからというものの、呼び名が〈ご主人様〉になった。
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でも、コレは、知らない、見ない、絆されない!!
声も姿も見えているが私もケイレブもアイツを無視し、食べ物を咀嚼する事に専念していた。
『そろそろ出発ですか?』
身支度を整え、野宿の片付けを終えた私達に呑気なアイツはニコニコと微笑んで話しかけてくる。
もちろん、無視した。
2人でゴーグルをつけ、『なんですか!?それは!』なんて声も聞こえたが聞こえない。
天気もいいし、砂嵐もまだ発生してない様子なためケイレブに鞍をつけて私が跨ると、ケイレブはアイツを引き離す勢いで猛ダッシュを始めた。
『あっあああ、お待ちくださいいいぃ』
なんて声が遠くから聞こえてくる頃に私達はやっと口を開いた。
「あの、ピーチクパーチク話すアレ、ほんとうるさい」
「ガウ(自己責任だろ)」
「だってぇええ、何年振りかの幼児に興奮しちゃって…禁断症状出てたからさ、ね?反動が凄くって」
「ガウ…ガウガウ(だからってアレはないだろ…全く)」
「ごめんってぇええ。でも、置いてこれた感じだしなんとかなったんじゃない?」
「ガウ(だといいけど)」
『お二人はどうやって意思疎通されているのですか?何か魔道具を利用されて?』
「え?いや、生まれた時から話せ…………」
「…………」
『おお!それはすごい!』
「「!?!?、?!?!」」
私達の会話に入ってきた声が何かを理解したケイレブはキキキキキィっと音がしそうなほどの急ブレーキをかけた。実際には砂埃がズシャー!ワッサー!と舞ったのだが。
私は咄嗟に鞍の紐に捕まって、内腿に力を入れたから放り出される事は無かったが背中からゾゾゾーっと悪寒を感じていた。
『おや?止まってしまうのですか?進み始めたばかりですがもうご休憩を?』
「なんであんたここにいるのおおおお!!?!」
声がする方を見れば真っ黒な鳥、まるでカラスの様な鳥が私達と並走して飛んでいた。
見た目はまんまカラス。この世界のカラスは確かクチバシが黄緑色だったはず。でも見た目は私の前世のカラスだった。
カラスはのほほんとしながらケイレブの頭の上に止まると、コロコロと鈴が鳴るような声で笑った。
『何をおっしゃっておられるのか。私達はすでに一心同体。常にご主人様が何処にいらっしゃるのか分かるのです。あ、もしや姿が違うからびっくりされたのですか?契約した事で実体を持つことができましたが、あの身体を保つのは大変でしょう?どんな姿になってついて行こうかと考えてる間にお二人が出発してしまい焦りました。あまりに速いスピードでしたので、追いつくには空を飛ぶのが1番かと!』
「いや、そこじゃない!一心同体ってなに!?!」
『そのまんまの意味では?』
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『流石に入浴など女性にとって異性に見られたくない場所にまでは着いていきませんよ?』
「そんなことされた日には丸焼きにしてやる!!!」
『あはは。ほんと愉快なご主人様だ』
「…ワフッ…フゥ………ガウ?(なんか話が噛み合ってないような。しかもこいつなんか性格変わったな。初めの泣き虫は演技か?)」
私達の戸惑いすら何も気にしてない様子の真っ黒なカラスことベルナールは、頭をガシガシ掻きむしって苛立ちを隠せない私を尻目に右側の羽を広げて道を指し示すような姿勢になった。
『ご主人様。彼方の方角が目的地の近道でございます。そのまま真っ直ぐ進みましょう。さすれば陽が沈む頃には緑地が見えてくることでしょう。一晩そこで野宿をしたのち、隣国に入国されるのがよろしいかと』
まるで有能な執事カラスことベルナールは、話をした後にニコッと微笑んで私を見つめた。カラスなので実際に微笑んでいるわけではないが、何故かコレが微笑んでいるのが分かる。
掻きむしってボサボサになった髪のまま私はジトっとした目でベルナールを見つめた。
「それが正しいって保証はないわよね?あと、日中、凄く、暑いの。進める距離なんてたかがしれてるわ。この砂漠は砂嵐がなく天候に恵まれて最短で3日で抜けれるって話なの。貴方の話では今日1日で隣国の国境付近まで行けるってことじゃない。無理に決まってるわ」
私が反論すればベルナールはやれやれといった様子で羽を広げた。
『ご主人様。それは私がいない旅人の場合です。私がいれば問題ありません』
「いーや?問題しかないけど??むしろ面倒しかないけど??」
『私ほど有能な者はおりません!』
「国滅ぼしたくせに?」
『アレはアレ、ソレはソレ、コレはコレでございます』
「ガウガウ…(ああ言えばこう言う…)」
『信じてください!』なんて言って胸を張るベルナール。カラスなので胸を張れば胸毛がモフモフっと目立つ。
(あの胸毛、引っ張りたい…または顔を……)
おっと、危ない危ない。モフモフ大好き欲望が前にですぎてしまった。
少し垂れた涎を手の甲で拭うと、私はケイレブの首あたりにある毛皮をギニュッと掴んだ。
「日中、暑いのよ」
『左様でございますね。砂漠ですから』
「この、毛皮の塊に乗ってるの。お互いに暑いの。ね?分かるわよね?そのまんま進めば動物愛護団体案件になるの!」
『ケイレブ様はとても艶やかな毛皮で、素晴らしいですね。さすがご主人様の兄上でございます』
「……だーかーら!暑いんだから長距離は進めないって言ってるでしょ!!!!」
私の苛立つ様子すら楽しいのかベルナールはまたクスクスと笑った。
『大丈夫ですよ。とりあえず進みましょう。ささ、ケイレブ様。その逞しい御御足を動かしてくださいませ』
狼の頭の上に止まるカラスはピョンピョンッと跳ねる。ソレを煩わしそうな顔で狼はブンブンと顔を振った。
「……ガウ!…ガウガウ(ちょ、頭の上で飛び跳ねるな!鉤爪が刺さってる)」
『おやおや、申し訳ございません。さあ、さあ。急ぎましょう。先ほどの速度であれば砂嵐にも出会うことなく進めます。ささ、レッツらゴーでございます』
「…ガウ、ガウガウ…ヴヴヴ(いでぇ、わかったわかったから、飛び跳ねるな)」
「ちょ、待って私はわかってなっ、ちょっとおおおお!?」
まだ話は終わってないぞっと声をかける前にケイレブはベルナールの鉤爪から逃れようと走り始めた。ベルナールはすぐに頭から飛び立って私達の横を並走し始めた。
「待って、ケイレブ。私は納得してない!」
「ガウガウ?ガウ(永遠に刺さる爪に耐えろと?無理)」
「だからって鵜呑みにして進むのはダメでしょ!?」
「ガウガウ!(そもそも全部エヴィのせい!)」
「くっ、くううう。そうだけどもさぁああ」
口喧嘩しながら私達は前に進んだ。
びっくりする事に、そしてムカつく事に、ベルナールの言う通りにしたら国境沿いのオアシスに陽が沈む前には辿り着いた。
しかもしかも、あんなに照り照りの日差しを浴びたにもかかわらず。私達は暑さにバテる事なく進めてしまったのだ。
なんならケイレブはずっと走り続けていたにも関わらず疲れもなく、オアシスについて水を飲むまで特に喉が渇くこともなく…。
私は汗一つかかず、涼しさを感じていたぐらいだった。速度もかなりあったため、砂埃もすごかったが鼻と口を隠さなくても穴に入り込むこともなかった…。
初日とは大違いな状態に私達2人は首を捻りつつ、この不思議現象の元凶であろう真っ黒なカラスに詰め寄ることにした。
「ちょっと、どういう事か説明しなさい」
両手を腰に当て、上から見下ろすように声をかければパシャパシャッとオアシスの泉で水浴びをしていたベルナールはこちらを向いてニコッと微笑んだ。そして水浴びをやめて地面に向かってピョンピョンッと跳ねて移動すると、私の足元までやってきて上を見上げた。
『私ほど万能な魔道具はございません。何故ならまるで神秘の森が与える力かのような力を与えることができるのですから。ケイレブ様のお身体が疲れ知らずになるように力を与え、ご主人様の周りが暑くならないように、また砂で辛くならない様に膜のようなモノを施しました。私がチョチョイのチョイッとしたというわけです』
「なんなのよ、その魔法みたいなチートは…」
『ふふふ。此処まで出来るのは契約出来たからでございます。ご主人様が作成される魔道具にも限界がございます。しかし、そこを補うことができるのが、私ベルナール。万能の魔石である私の出番でございます!魔獣よりも優れた力を持つ私を手元に置いて損はございません!』
「ガウガウ…ガウ?(万能の魔石…聞いたこともない。ナニソレ?)」
私の隣にちょこんとっ座っていたケイレブが首を傾げれば、ベルナールはふふん!っとまた胸を張った。
『この世界で唯一無二の魔石でございますからね。ご存知ないのは当然です!私は神秘の森が直接作り出した魔石。しかも意思がある魔石でございます。本契約できるのは一度きりですが、契約者の足りぬ部分を補う役目の適任者は私以外におりません!』
「…ちょっと本当昨日と様子が違いすぎる。人間から魔石になって国を護りたいしてた王太子はどこいったのよ」
『そんな者は魔石になり変わるために肉体を差し出した時点で死んでおります。私はその者の執念、ただの思念であり、魂ではないのです。かの者の魂はすでに輪廻の輪に加わっておりますよ』
ふふふっと少しだけ悲しそうな瞳で微笑むと、ベルナールはバサバサッと音を立てて飛び立った。少しだけ話題から逃げようとしてる様にも見えるが、私達は飛び立ったベルナールをジト目で見上げた。
『魔獣が寄り付かぬよう処置をしてまいります。お二方はお疲れでしょうから、お早めに水浴びやお食事をなさってください。朝日と共に起床し、国境に向かえばお昼頃には入国が出来ますよ』
私達の頭上を旋回しながら話していたベルナールは、言うことだけ言って飛び立って行った。
そして、私達はしばらく2人でボーッと空を眺めた。双子だからなのか、お互いに何となく考えていることがわかる。
空から目線を外し、同時にお互いに目線を向けると私達は同時に小さく頷いた。
「なんか、色々ツッコミどころが多すぎるけど深く考えるのをやめようと思う」
ケイレブは私の呟きに頷くと、慰めるように私の足を前足でポンポンッと軽く叩いた。
「ガウガウ(明日に備えて早く寝よう)」
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