忘却令嬢はペットになりました

まりあんぬ

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あれから、数日はショックを受けぼんやりと過ごしていたが
私の気持ちをどん底に落としたのもレストだったがあげてくれたのもまた、レストだった

というのも、昨日久々に執事長が訪ねてきて私に何が入り様なものは?と聞いてくれた

好感度を少しでもあげておけば今後の助けになるかもと思っていた私は刺繍入りのハンカチを何枚かこさえていた

「あの、お願いではないのですが、、
親切にしてくださっているお礼がしたくて」

そう言って一枚、落ち着いた紺のハンカチを渡す

執事長は驚いた様に目を見開いた後、それではとハンカチを受け取ってくれた
そして刺繍をじーっと見つめ

「何が施しましたか?」

と、聞かれた

付与魔法についての文献を読み、見様見真似で行ったものだが、何か付与出来ていたようだ

「すみません、自分ではちゃんと出来ているか分からないのですが、、付与魔法の練習をしていて、、何かお役に立てればと思いまして、、」

そう答えると執事長は一度退室し、すぐさま魔道具片手に戻ってきた

「こちらは鑑定用魔道具です、この様にすると、、」

大きくした虫眼鏡の様なものをハンカチにかざすと、虫眼鏡に疲労軽減Eと出る

「、、ほぅ、Eランクの疲労軽減ですか、強いものではないですが、、とても良い出来です。
ありがとうございます」

初めて努力が形になったものにじんわりとしていると執事長はにこやかに言葉を続ける

「もしよろしければ、色々な付与を試してみてはいかがでしょう?
この鑑定魔道具はお貸しします。
その、この様な言葉を無責任に言うものではありませんが、強力な付与魔法はなかなか重宝されることが多い代物です。
つまり、付与術師もまた然り、、、
貴女の努力が報われることを祈っております」

一礼して去る執事長にジンと胸が熱くなる

レストに色々と教えてもらい、どんな形でもいいから成果をと努めた結果が出た
一番に知らせたい人にはもう会えないけれど
徒労に終わらなくて良かった
それに、
私の人としての道が少しでも開けた
当初の目的が達成できたと言ってもいいじゃないか!
この方向性で、自分を磨いていけば私と言う存在の価値を認めてもらえるかもしれない


ーー
ーーー
ーーーー

「着実に腕を上げていますね」

「ありがとうございます!」

あれから、執事長がきてくれる頻度が少しだけ増した
詳しくは教えてくれないが、どうやら魔術特化の家紋の様で、、執事長も魔術にとても詳しく、色々と教えてくれた
さらには付与魔術に関する本なども提供してくれた

「付与されている加護のレパートリーが増えてきていますね、ランクも、、今最高で幾つですか?」

「今はCが最高ランクですが、、仕上がるまで何が付与されるか分からないのが難点でして、、」

「、、、なるほど」

そんな会話をしているとざわざわと廊下が騒がしくなる

「こちらにいらっしゃいましたか!」

バァンと勢いよく扉が開かれ、入ってきた男性に少し驚く

ラフな肌着の様な服装は相当急いでいた様で
甲冑を脱ぎ捨てたまま走ってきた様だ

「すみません、取り急ぎお伝えしたくまいりました」

軽く礼をして要件を口にする

「伯爵夫人がこちらのタウンハウスに向かっております。
明日には着くかと思いますので準備のほど、よろしくお願い致します。」

その言葉に執事長は驚いた様に目を見開くと私に簡単に礼をして少し慌てた様に部屋を出ていく
私に少し疑問を抱きながらも執事長に続いて伝令を終えた男性も出ていく

残された私は少し呆然としたのにポツリと呟く

「鍵、、かけ忘れてるけど大丈夫ですか、、?」


その日の夜は忙しかったようで、私に夕飯が運ばれてくることはなかった
ただバタバタと外で人が走り回る音が聞こえ続けていた

私はチクチクと刺繍をしながら新しく得た情報を分析していた

ここに来るのが伯爵夫人、、と言うことは私は伯爵家に買われたのか
まだきたばかりの頃、若様と言っていたから、当主ではなく、ご子息、、
つまり、明日到着するのは私を買った人のお母様である可能性が高いのか、、
大丈夫かな、私、、、

奴隷を買ってきた息子とその母親というのを何度も想像する

真面目な息子が隠して買っていた場合

不真面目な息子が堂々と奴隷を買ってきた場合、、

この二択しか思い浮かばない
どちらにせよ、、母親から見た私という存在は良いものな訳がない

え、、若様とかいうのにまだ会っていないのに絶体絶命じゃ??

そんな事を考えながら刺繍を続けるとふと、そういえばブランケットなど、過去に作ったものに鑑定をしていないことに気がついた

「あれ、これはついてない、、こっちも、、」

前に作っていたもののほとんどに何も付与されていないことに気がついた

ただ、ひと針でも追加で刺繍すると何かしから付与される
かと言ってサラの布にただ一針糸を通したところで何も付与されない

「どうしてある時から急に付与されるようになったのかしら、、?」

しばらく考えたがどの刺繍がいつさしたものなのか分からず
これと言った結論は出ずに終わった

そうこうしているうちにすっかり真夜中になり、外は静まり返っている

「私の朝ごはんは、、あるか分からないわね、、」

ぐうぅとなるお腹をさすり思案する

いや、もしかしたら今後数日は何も食べられない可能性さえある

一番良いのは食事は来るが伯爵夫人との対面は無しな今まで通りパターンだが、、
最悪、みんなに忘れ去られて数日経過パターンもあり得る
飢えて力尽きる自分を想像して身震いする

ここは、一念発起しかあるまい!

長いことここから出ておらず、引きこもりが板についた私はそもそもこの部屋から出ようという発想ごと消えてしまっていた

今こそ、偉大なる一歩を踏み出す時ー!


そろそろと扉に向かって足を伸ばすとゆっくり開く
やはり鍵は開いている

急いでただ星型にさした刺繍が
発光C
になったおかげで暗い中もぼんやりと刺繍が光る

「厨房、、厨房はどこかしら、、可能なら乾パンとか日持ちのするものをいくつか手に入れたいところね」

光る布片手にフラフラと真っ暗な廊下を歩く

初めて部屋から出た為、妙な高揚感の中彷徨い続け
軽く1時間程度経った頃だろうか
厨房を見つけた
ライ麦パン三個くらいしか取れそうなものがない
というのも、下準備がしっかり済んだご飯達に手をつけるのは流石に忍びない
随分とたくさん用意されている
それだけ、伯爵夫人が来るというのは使用人たちにとって一大事ということだ

コソコソと帰る時、ふと玄関が目に止まる
ここでいっそ外に飛び出してしまおうか
付与術師が重宝されているのならばもしかしたらうまくやれるのでは?
そんな思いが頭をよぎる

うまく奴隷紋だけ隠せれば、、

「、、お止めはしませんよ」

突然後ろからかけられた声にびくりと肩を揺らす
振り向くと執事長が立っていた

「いえ、、そんなつもりはありませんよ」

実際、ここでの生活に不満はない
外で万が一バレた際、どんな地獄が待っているか考えるとそっちのリスクの方がずっと高い
自由こそないが、ここでは衣食住全てにおいて高レベルの待遇だ
奴隷どころか、平民より良い生活をしている

「その、すいません、、お腹が空いてしまって
パンをいただいてしまいました」

そう白状すると私の腕の中のパンを見て執事長は眉を下げる

「すみません、夕食を出しそびれたようですね
今何か用意を」

「大丈夫です!もう遅いですし、すぐ寝ますので」

ここでこの会話をしたのだ、明日の朝食の心配はまずないだろう

それでは部屋に戻りますと言い残し踵を返す

「伯爵夫人には、お気をつけください」

「、、え?」

振り向くと執事長は既にいなかった

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