ホントの気持ち

神娘

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60、ただいまの返事

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空side

玄関に入ると足が動かなくなった。

「空くん?」

神山先生の声が聞こえるのに返事ができない…



『なんで生きてる、死ねよ、早く死ねよ。』
父さんの声が聞こえる…
目の前が真っ暗で立っていられなくなった。
しゃがみこんで耳を塞いでも父さんの声はだんだん大きくなるばかり、
もう嫌だ!!…もう…許して…助けて…助けて!!


いやだ!!い゛や゛だ!!ああああああ゛あ゛あ゛あ゛―


「…空くん!!帰ってきて!!空くん!!」

「はっ!…はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」

「空くん、先生のこと分かる?」

「…神山先生…」

「はぁ、良かった。もう大丈夫だよ。」

「う゛ぅうう…」

力いっぱい神山先生の服をつかんで泣きじゃくった。
不安に押しつぶされそうなこの心をどうやったら楽にできるのかが分からずただ泣くしかできなかった。


「ひっ、ひっ、」

「大丈夫、大丈夫だよ。怖かったんだね。」

「ちょっと落ち着いた?これ飲める?」

陽ちゃんがリビングから飲み物を持って来てくれた。
たくさん泣いて汗もかいて喉がからからになっていた。

「甘い…」

「スポーツドリンク、美味しい?」

「うん、美味しい。」

「良かった。リビング行けそう?」

あ、まだここ玄関か…
リビング…何があるんだろう…ベランダとかあるのかな…

「行けそうになったら、俺と一緒に行きます。
それまでここにいても良いですか?」

無意識に神山先生の服をまた握ってしまっていた。

「分かりました。
冷えるのでブランケット使ってください。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、俺は城崎先生とリビングで待ってますね。
なんかあったら呼んでください。
空、ゆっくりでいいからな。」

「うん、」





「リビング怖い?」

「…うん…」

神山先生は僕を抱きしめながら聞いてきた。

「何が怖い?」

「…ベランダ…とか…」

「ベランダかぁ、そっか、他には?」

「…コード…」

「コード?コンセントの?」

「うん、コード…苦し…から…あとタバコ…とか…」

「そっか、ちょっと待ってね」

神山先生はスマホを取り出し電話をした。
誰かに用事かな?

「あ、名取先生ちょっと質問があって、家の間取りなんですけど、リビングからベランダって見えますか?…
あ、なるほど、…はい、…他にはコンセントとかのコードなんですけど…あ、そうです。…はい…分かりました。
あともう一つ質問で先生って確かタバコ吸わないですよね?…はい、分かりました。ありがとうございます。失礼します。」

「陽ちゃん?」

「うん、俺もこの家来たの初めてだから知らなくて。
ベランダは見えるけど、カーテンしてあるってそれでも怖かったら寝室にいても良いよって、
あとコードは見えないようにはしてあるって。
ここにはコードで首を絞める人はいないからね。って言っても怖いものは怖いよね。」

「見えなかったら…大丈夫かもしれない…でも…思い出すのが怖い…」

「そっか、そうだよね。…
あとタバコだけど、3人ともタバコ吸わないからそこは大丈夫だと思うよ。
ゆっくり気持ち整理したら良いからね。
今日もしリビング行けなくても一緒にここで寝てまた明日一緒に頑張ろう。」

「うん…」


玄関前の廊下は冷たくて寒いけど、神山先生は文句一つ言わずずっと付き合ってくれた。

もうすぐ4時になる…


「リビング…行きたい…」
廊下には慣れて神山先生と普通にお話ができるようになった。

「うん、行ってみようか。手繋ぐ?」

「うん、」

僕は行くことを決めたが不安で神山先生の手を強く握った。

「行こっか、ドア開けるよ。」

ドアが開いた瞬間足がすくむ感じがしたが、
陽ちゃんと城崎先生の姿が目に入り安心した。

あの家とは違うんだ…

「おかえり、」
陽ちゃんが僕に言ってくれた。
おかえりなんて言ってもらえたのいつぶりだろう。

嬉しくて、気づけば涙が頬を伝っていた。

「えっ?夕紀どうした?怖いか?」

「ちがっ、違う…嬉しくて…おかえりって言ってくれたのが嬉しくて…う゛うぅ」

「今日からここは空の家だよ。だから、おかえり。」

陽ちゃんが優しく抱きしめてくれた。

「ただいまぁ…ひっく、うぅ、ひっく…」

さっきまでリビングが怖くて不安でいっぱいだったことが嘘のように今は心の中がぽかぽか温かいものでいっぱいになっていた。
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