【完結】悪役令息に転生した社畜は物語を変えたい。

亜依流.@.@

文字の大きさ
37 / 342

《34》先客

しおりを挟む









「好き·····だよ」

「どのくらいですか?」


畳み掛けるようにして聞かれる。
身じろぐと、さらに間を埋めるように強く抱きしめられた。


「い、いちばん、大好き·····」


口にした台詞は、先程とは別の意味を持つ言葉に感じる。


「俺も好きです」


勿論、嬉しいはずだった。
が、釈然としない心のわだかまりを感じる。
ノワはうーんと眉を寄せた。


(なにか、見落としてる気がする·····)


アレクシスの抱擁から開放されたのはそれから10分後。
戻ってこないノワを心配した父親が、声をかけに来た頃だった。






















目を覚ました頃、事は既に過ぎ去っていた。

捕らえられた侵入者は5人。
20から30代の大柄な男たちだった。

彼らは叔父に雇われた暗殺者で、ユージーンの暗殺に成功すれば、報酬として頭金の10倍を受け取る予定だったという。


「どういう訳か、彼らが来る前に警報機が作動しまして·····」


刺客は待機していた衛兵団に呆気なく捕まった。


「あの者達の他に侵入者は?」


ユージーンが問う。
侍従はいいえと首を振った。

確かに、小柄な人物を拘束した。


"ジェダイト様!"


アレは、夢でも幻でもない。

そしてその"侵入者"の特徴はしっかりと記憶している。
声、体躯、そして「忘れ物」から絞れば、特定することが可能だろう。

侵入者が自ら非常警報を発動させるとは、気でも狂ったのだろうか。

それも、ただ警報機だけを作動させ去っていくとは──遠くを眺めていたユージーンは、ふと、ある日の出来事を思い出した。


「·····」


「如何致しましたか?」


「·····いいや」


込み上げたのは、ある種の高揚感だった。

『パーティーの次の日の夜』

警報を鳴らすことにこそ、理由があったとするならば?


「本当に」


甘い余韻を持った声が、空中を浮遊する。


「興味深いよ」


出会った頃の印象は、礼儀知らずな新入生。
無知な振りをして、ある時はこちらが驚くような活躍を見せた。



ノワ・ボース・パトリック。



──お前は一体、何者なんだ?













─────────────────








夏季休暇中、ノワは以前と違うアレクシスに悩まされた。
無表情で口数が少ないことは昔から変わらない。
しかしふとした時に、監視されるような視線を感じた。まるで閉じ込めるように抱きしめられたのも変な気分だった。

兄弟同士の抱擁は、相手の腰や背を撫でるものだろうか。
思わず鳥肌が立った時には、正体不明の背徳感にかられた。


(それもこれも、アレクが無駄にイケメンになりすぎるからだよ·····)


長いようで短い夏季休暇が終わり、ノワは始業式の前日に寮へ戻ってきていた。

事は数日前。学園から生徒会のメンバーへ、招集がかかったのだ。
先日のパーティーの反省会でもするのだろうか。
荷物を置いたノワはすぐに生徒会室へ向かった。


「失礼します」


指定された時間の五分前に部屋へ到着し、扉をノックする。
扉を開けた先には先客がいた。


振り返ったのは、スラリと背の高い紳士だ。


「やあ、パトリック」


ユージーンは白い歯をこぼして微笑んだ。


「あ·····」


一度この男に殺されかけたのだ。
口内が乾いて、頭の中は真っ白になった。

扉が音を立てて閉まる。
気まずい。


「いつまで扉の前にいるんだい?」


まるで借りてきた猫のようだ、と笑うユージーン。
容姿だけを見れば、やはりおとぎ話の本からでてきた王子様のようだ。ノワは部屋の中央まで足を進め、会長席の前に落ち着いた。

チクタクという時計の音が、異様なほど耳に響く。
やはり、とても気まずい。


「ところで、休暇は穏やかに過ごせたのかな」


ユージーンが話題を振る。

ノワは慌てて頷いた。


「はい!パーティーが終わってから、実家に帰省しました」


「それはいつ頃?」

「?」


質問の意図がわからない。


「えっと、2週間くらい前で·····」

「へぇ」


相槌は、普段より半音低い気がした。


「では、帰省していない間は寮で休暇を?」


(なんで、こんなこと聞くんだろう)


ただの会話作りなら構わないのだが、それにしては脈絡の掴めない質問だ。


視線が絡む。
微笑んだ彼に見蕩れそうになり、ノワは再びハイと返事をした。










しおりを挟む
感想 168

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...