【完結】悪役令息に転生した社畜は物語を変えたい。

亜依流.@.@

文字の大きさ
82 / 342

《80》今後の計画

しおりを挟む







焦れるような眼差し。秘密事を教えるように潜まれた声は、普段とは想像もつかない、性的な魅力を感じた。


「おまけに、鳴き声も」


「····っ?」


手のひらが背を滑る。
ノワは飛び上がった。
こんな表情をするような人ではない。少し意地悪な視線が艶めかしくて、わけも分からず心臓がうるさくなる。

けれど、初めて見るものではない。

ユージーンがフィアンの前で「ジェダイト」と呼ばせた時、そして舞踏会で女装をしていた時。
確かに自分は、この耽美な笑みを垣間見た。


「本当に、どこも怪我してないんだろうな?」


「は、はい」


首を縦に振る。
密着した部分が火照るように熱い。

自分とて、健全な男である。これ以上彼とくっついていたら、反応してはいけない場所が目覚めそうだ。
そんなことになれば、誘拐事件よりも恐ろしい未来が待っているだろう。


「フィアン様、もう····」


縋るような思いで呟く。
ふっ、と、息を着くような声が聞こえた。


(わ、笑った·····?)


フィアンの片手がノワの手を握る。
腕は立ち上がるのと同時に、容易くノワを引き上げた。


「今日は宮で休め」


ノワは表情を輝かせた。
学園に戻れば、いつユージーンから呼び出しがあるかわからない。
何よりも宮殿に寝泊まりなど、一生に一度とない機会だ。


「ありがとうございます」


頭を下げたノワに、フィアンはキュッと口の端を持ち上げた。

太陽のような人。太陽はとても明るいが、同時にとても手の届かぬ場所にあるのだ。

扉へ向かって歩き出す背中が、ずっと遠くに感じた。

























部屋に案内されたノワは、扉が閉まるのと同時にベッドへ飛び込んだ。

腹の奥から押し出すような呻き声がもれる。

豪奢な貴賓室。しかし感心している余裕は無い。
荷台の中で予測した事について、真剣に考える必要がありそうだ。

この世界が、狂ったシナリオを修正しようとしているかもしれない可能性。

予測が正しい場合、新たな疑問が生まれる。

それはノワを救い出したリダルの存在だった。

邪魔者ノワが死ぬべきシーンで、彼はなぜ自分を救えたのか?

彼はこの世界には異質の存在だ。今回の件で確信に至った。
ただのエキストラにしては不可解な点が多すぎる。

放置しておくのは危険だ。
ノワは脳内でリダルを要注意人物に指定した。

  今後の目標は、ユージーンとの関係を改善する事、そしてどうにかしてリダルを監視すること。

大体の考えをまとめたところで、召使いが湯汲みの手伝いに来る。
そこでノワはやっと、自分が他人の血や泥に汚れていることに気がついた。

こびり付いた跡を洗い流しながら、思い出すのは、たくましくて暖かい腕の中だ。
ニヤニヤとしていたノワは、ふと手を止める。

別れる寸前、正面から見たフィアンの頬は、案外傷が酷くないようだった。

あんなに思い切り殴られたというのに、攻略対象は怪我をしても尚イケメンを保つ補正でもかかっているのだろうか。
それに比べ、荒々しく部屋を出ていったリダルの怪我は、血が滴るほど酷いようだった。


(僕の部屋が用意されてるなら、きっとリダルも王宮にいるはず)


彼の事だから、まともな手当てすらしていないかもしれない。
数分後、ノワは部屋を出ることになった。

リダルが自分の助けがなくたって問題ないことは分かっている。
しかし一応は命の恩人だし、何よりも「リダルについて調べる」という目的がある。
手当するという名目があれば近付きやすい。
そんなわけで彼を探さない理由はなかった。

純白と黄金に輝く宮内を、上階から順に捜索する。
基本的に、客人が他人の敷地を好きかってうろつくのはタブーだ。
今回は例外だと自分に言い聞かせながら各階の端から端を早足に進む。

探せどリダルの姿は見つからない。
客人が滞在する部屋の前には召使いが待機しているはずだが、どの扉にもそんな光景をうかがうことは出来なかったのだ。

彼はまたどこへ消えたのだろう?

いらない時に限ってしつこいくせに。
悪態をつきながら、マラソンコースのように広いフロアを進む。

駆け足に角を曲がったとき、正面に黒い物体が立ち塞がった。





しおりを挟む
感想 168

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

処理中です...