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《125》第二皇子

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しかし事実だとすれば、ノワは反対する理由もなかった。

それ相応の功績があるのだから、妾の子という理由だけで非難される必要も無いはずだ。更にノワの憶測上では、第二皇子は頭が切れる上に人格者である。


「別にいいと思うけど」

「そんな他人事みたいに·····」


ため息を着く友人。
他人事だよと、ノワは心の中で呟いた。

そこら辺のことは偉い人達がなんとかしてくれればいい。
フィアンが皇帝の座につくのだから、心配は無用だ。

自分はあと数ヶ月、可能な限り彼のそばにいて、卒業後は自由な人生を謳歌したいだけなんだから。


「·····あれ?」


ふと、思考を止める。


「あ、あのさ」


「どうした?」


特徴のない顔が振り返る。
妙にほっとする顔つきだ。どうか思い違いでありますようにと願いながら、ノワは友人に尋ねた。


「第二皇子様の名前って、なんだっけ?」

「·····ノワ、そりゃさすがにないよ。いくら勉強ができたって·····うわっ」


ノワは、がしりと友人の肩を掴んだ。


「いいから、教えて!」


噛みつかんばかりの剣幕で叫ぶ。相手は目を白黒させながら答えた。


「イアード皇子殿下だろ」


記憶に新しい4文字だ。
思わず立ち上がり、直立不動で思考をフル起動させる。


(まさか·····!)


思い返してみればおかしなフシばかりだ。
警備兵にしたって服装は重装備であるし、戦闘の身のこなしは並ではない。


「あああ·····」


ノワは頭を抱え込む。


「おい、ノワが壊れたぞ」

「誰か彼氏に報告して」


周りのクラスメイトたちの声は、もはやノワの耳には届いていない。


(リダルは·····)


雷に打たれたような衝撃が、脳裏を襲った。

なぜ、いままで気づかなかったのだろう。




(リダルは、第二皇子殿下の側近の従者だったんだ!)




見当違いな答えを導き出し、ノワの顔から血の気が引いてゆく。

従者とは、主人に忠誠を誓い、常に行動を共にする者。

彼らは幼い頃から時間を共にし信頼関係を築く。
でなければ、他人に無頓着なリダルが、人の名前が掘られたネックレスを肌身離さず持っているわけが無い。

ノワの予想ではこうだった。妾の子供として生まれたイアード第二皇子の従者に、爵位の高い貴族の子供から従者をつけることは不可能。よって田舎の男爵家の、更に次男であるリダルが命名された。

ワケあり第二皇子の従者になるということは、大勢の人間を敵に回すこととなる。
誰も望まぬ役目を任されたリダルは、幼い頃からたくさんの人に嫌煙され、性格が歪みに歪んでしまったに違いない。

けれど、体制は逆転しつつある。

第二皇子が公爵位なんて与えられた日には、彼の従者であるリダルはこの国の権力者の一人になるのだ。


(そんな人に、僕は·····)


ある時は陶器で殴り付け、怒鳴りつけ、かと思えば腕の中で泣きじゃくり、更には──。


(キス·····)


思い出し、発狂しかける。


「おいノワ、本当に大丈夫か·····?」


友人が心配そうに声をかけてくる。
ノワはおもむろに顔を上げた。


「ごめん、僕凄く具合が悪いみたい。次の授業休むって、先生に伝えてくれる?」


周りの生徒たちはぎょっと目を見開いた。

成績優秀、無遅刻無欠席のノワが授業を休みたいなんて、今まで誰一人として聞いたことがなかったからだ。


「お、おう、まかせろよ。教授だって認めるはずさ」











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