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《218》地下牢

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地下牢には数十人の貴族が収容されていた。

城内の見張りは城壁からの攻撃のせいで手薄だ。
おまけに地下は非常時の隠れ道に近い。レハルトが着いた頃には、既に捕らえられていた貴族達の避難が開始されていた。

イアードは、初めから知っていて自分をここへ寄越したのだ。

勿論、案じてくれたわけではない。一人の方が動きやすいと判断したのだろう。

早い話が、邪険にされたというわけだ。


「怪我を負った方はおりませんが、意識不明者が一人」


その場を指揮していた副団長がレハルトへ報告する。


「バーテンベルク伯爵ご令息です。聖徒の加護で一命は取りとめましたが、それから目を覚ましていないと·····」

「直ぐに医師の元へ」

「レハルト」


鉄の格子に、張りのある男の声が響いた。



「皇子殿下·····」


奥の独居監房からフィアンが姿を現す。その場にいた者達は、皆緊張した面持ちで頭を下げた。


「避難を続けろ」


フィアンの言葉で、騎士達は再び避難の案内を始める。
レハルトは彼の元へ跪いた。


「状況は?」

「はい。現在帝国民は、神殿の洗礼によって暗示催眠にかかっております。洗礼を免れたヴァーヴ家紋とシヴァー家紋騎士団が──」


掻い摘んで報告しながら、フィアンの様子を確認する。
皇帝が崩御し殆どの帝国民が敵の今、フィアンは不気味な程冷静だ。
頼もしい事のはずだが、レハルトはそれを不審にも感じた。


「そうか、イアードが教皇を」


朱赤の瞳は、何かを模索するように細められた。


「それで、イアードはどこへ向かった?」


「恐らく、聖剣のある謁見の間かと·····」


レハルトが全て言い終わる前に、フィアンは地下の避難口とは反対方向へ向かう。

倒れている反乱軍の騎士から剣を奪う。横顔には、微かな笑みが浮かべられていた。


「俺はイアードの援護に行く。他の者達を頼む」



















先攻に出たのはデリックだった。

一飛びで距離が詰まる。刃の分厚い大剣が、イアードの頭目掛けて振り上げられた。

武器の重量に似合わぬ俊敏さだ。


(聖力の扶助のせいか)


イアードは取り出した短剣で攻撃を受け止める。


「!」


攻撃を返す寸前、緑の光が目の前で弾ける。イアードは咄嗟に後ずさった。

刃はかすりもしなかったはずだ。
しかし、シャツの襟に、生ぬるい湿り気を感じた。



「避けられたことは褒めてやるよ」
 

デリックは再びイアードの前へ躍り出る。大剣は休むことなく攻撃を繰り広げた。


(なんだ?)


攻撃を交わすたび、空を切った刃が"分散"する。













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