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《249》兄さん(➕ご挨拶)
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「虫唾が走る」
耳を疑う言葉の数々に、ノワは言い返すことも出来ず、立ちすくんでいた。
こんなにも冷たく笑う男を、初めて見た。
彼は追い打ちをかけるように言った。
「早急に日程の調整を願います。大公国では、あなたはただ何もせず、慰みを下されば良いのですから」
「は·····」
「私はこれで失礼します」
彼が返答を待たず背を向ける。
恐怖と屈辱が入りまじり、頬が熱くなる。
叩きつけるような雨音が、かぐわしい香りを運んでくる。
イアードは去り際、独り言のように呟いた。
「これ以上ここにいたら、鼻が曲がりそうだ」
翌日、ノワは案の定体調を崩し、とこに伏せっていた。
外は未だしとしとと濡れ続け、一向に晴れる兆しがない。
体調はいくらか和らいだが、昨夜のイアードを思い出すと、胸の奥がズキリと痛んだ。
非情な言葉の数々。足がすくむほど恐ろしい視線は、身体を叩いた雨なんかより余程冷たかった。
そして現在、閑静な部屋のベットの中。
病人であるはずのノワは、窮地に立たされていた。
1度離れた気配が、再び近づいてくる。
暖かな空気が頬を撫でた。
「·····ノワ·····」
首筋スレスレを辿っていた唇が、ぼそりと呟く。
ノワはすんでのところで、漏れそうな声を耐えた。
目が覚めた時には、既に逃げ出せない状況だった。
ハアハアと荒い呼吸が聞こえる。相手は寝言のようにこちらの名前を呼びながら、それでも起こさないようにと、触れるか触れないかあたりで息を吸い込む。
「兄さん·····」
最近はめっきり呼ばれなくなった愛称だ。
いくらそっち方向に疎い自分でも、同じ男なら、これはアカンやつだと分かる。
今、後ろをふりかえってはいけない。
狸寝入りを貫く他ない。
「はあ·····兄さん·····ノワ·····」
頭上で、すうと息を吸い込む音がした。
昨夜はうなされていたせいで汗をかきまくって、シャワーを浴びていないのに。
絶対に臭う。恥ずかしくてギュッとまぶたに力を入れるが、アレクシスの鼻息は、謎に一層荒々しくなった。
我が弟はどうかしてしまった。
三年前から度々バグを起こしていたが、これはあんまりだ。
「兄さん、兄さん·····」
そうだ、自分は兄なのだ。その兄になんてことをしちゃってるんだ。
とにもかくにも、ツムジを嗅ぐのはやめてほしい。
叫びたいのを一心に抑えて、彼が「フィニッシュ」するのを待つ。
クスリと、鼻先で笑う気配がした。
「兄さん、かわいい」
「!?」
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