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《320》この前

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ノワは言い表せぬ不快感に唸った。

この前とは、全然───。


(思い出したくない)


指でスポイトの腹を押す。
思い切り飛び出した液体に驚いて、尻に力を入れた。
少し出てきてしまった。

ノワはそれを擦り込むようにして、中指をすぼみに忍ばせた。


「あ、ぅ··········」


何だか、変な感じがする。
溶けだした液体が熱い。それが中をじんわりと広がり、沈んでゆく。
ひくり、と、内壁が引き攣った。


「へ·····っ、?」


恐る恐る指を動かしてみる。
引き抜くと、きつい肉が震える。


(なんで?)


引き抜こうと思うのに、また刺激が欲しくて、指を押し込む。


「あ·····っ·····は·····」


ノワは指の動きを早めた。


「はぁ·····ぁ···っ····ぁ···」


擦るほど、ナカは切なくなってゆく。
香油には媚薬の効果があるらしい。

もう少し、あと少し。
ノワは自身に言い聞かせながら、しばらく一人遊戯に耽った。



「──ノワでも、自涜したりするんだな」


卑猥な水温に、低い声が加わった。
ノワは飛び上がった。

まさか、いつの間に?
振り返るより先に、大きな体が覆いかぶさってきた。


「こんなに沢山、甘い蜜を滴らせて·····」

「···っ!」


腹筋を撫でた手が、ノワの膨らみをなぞる。
愛駅に濡れた手袋が素肌を滑った。

「ぁ·····っ」


躊躇いなく愛撫される陰茎を見下ろす。
嘘だ。
震え出した身体を宥めるように、うなじへ柔らかな温もりを与えられた。


「フィアンさま·····」


ノワは言葉が浮かばなかった。


「ここも、もうぐちゃぐちゃだな」


意地悪な声が囁く。
鼓膜から首筋、背にかけてを、低い吐息がかけてゆく。
蕾は潤滑油を垂れ流し、くちり、と、瑞々しく鳴いた。


「あ、·····や·····っ」


ノワはパニック寸前だった。

全部、見られてしまった。


「お前はそういうことをしないと思っていた」


フィアンは意外そうに言った。
彼が手袋を外す。
裸の肌が、直接ノワの陰茎を撫でる。


「やぅ·····っ」

「我慢できなかったのか?」


視界がグラグラする。








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