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【23話】彼のお気に入り
しおりを挟む彼を殺すも生かすも嫐るも自由。千秋とてそれは解っているはずだ。
口答えし去っていった彼は、一体自分が何をし出かしたか理解しているのだろうか。
冷水をかけられたような気分だった。
しかし思議と、苛立ちは湧かない。
なぜ、と、純粋な疑問だけが脳内を反芻していた。
ふと、足元に菓子の小包をみつけた。
チョコレートと、それよりも甘い匂いが鼻腔を掠めた。
鼻歌を歌いながら教室に入り、目当ての人物を探す。
残念ながら見つからない。レオンは仕方なくウィルの隣へ腰を下ろした。
「チャーキに会った?」
「ああ、今さっき」
偶然廊下で、と言ったきり、彼は口をつぐむ。
レオンは唖然とウィルを凝視してから、くくくと笑みをこぼした。
どうやら機嫌が悪いようだ。
「予想以上にオキニじゃん。君も、ユランも」
千秋にユランの匂いが強くこびりついていた。
これが何を表すのか、ウィルが分からないわけが無い。
ウィルはため息のような笑みを零した。
「そうみたいだね」
「ワオ」
目についたオモチャで遊んで、飽きたら捨てる。種類は問わず階級の低さによっては行為中に食べてしまうという話だってざらにある。
信頼の厚いウィルの裏の顔だった。
「オテツキ食らったわけだ?」
レオンの言葉にウィルは肩をすくめる。
───護身と称して千秋にキスをしたのはつい先日のことだ。
理性が飛びそうになる程甘い血の香り。あの芳しい身体が、どうしても欲しくなった。
「焦る必要も無いさ」
顎に添えていた長い指が、そっと唇を撫でる。
「てゆーか」
レオンは思い出したように、前の席のジュリオを振り返った。
「ジュリオ、子猫ちゃんにはなーんか甘くね?」
彼が誰かの言動に口出ししたのは今朝が初めてだ。
「もしかしてお前もチャーキのこと───」
「·····くだらない」
ジュリオはレオンの言葉を無視して前に向き直る。
(なんで、ここにいるんだ?)
焦る心の内を隠すように、青い瞳はじっと教壇を見すえていた。
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