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〖第二話〗
しおりを挟むネロは、貧しい町の小さな酒場で育った。
周りからは嫌煙されていた。生まれつき身体の成長が乏しく、貧弱だったためだ。力仕事では点で役に立たなかった。
「お前はハズレだな」
日々罵声を浴びせられながらも、自分なりに精一杯働いていたつもりだった。
事の始まりは数日前。
いつも通り店の掃除に取り掛かっていた時の事だった。
店に、大柄な男たちがやって来た。
彼らは店主に手のひらサイズの袋を渡し、ネロを馬車へ詰め込んだ。
次に目を覚ました時、光の渦中にいた。
体には力が入らず、まぶたを開くことが精一杯。光に目が慣れると、自分を物色するようなたくさんの視線に気付かされた。
ペットオークション───金持ちが集う、大規模な娯楽パーティーだ。
抜きん出た能力、技術を持つ者。容姿の美しいものやはたまた酷く醜い者、強靭な力をもった大男や、希少な異種族。
オークションには、珍しい奴隷が並べられた。
ネロの落札場面では、年配の男が、聞いたことも無い金額を叫んだ。
落札者は決定したと思われた。
「提示された金額の倍払おう」
若い男の声が、静寂を破った。
その後、ネロは馬車の荷台に乗せられ、この屋敷にやってきたのだった。
「ベッドに腰掛けなさい」
セシルが指示する。ネロは従いながら、オークションの喧騒を思い出した。
静かな男の声が、まだ耳に残っている。
(どんなひとなんだろう)
首元に、無機質な冷たさが触れる。
ガチャリ、と、冷たい音が響いた。
ネロとベッドの柱を、鎖が繋いだ。
「これ、なんですか?」
質問は完全に無視される。
セシルは、ネロが身にまとったシルクのすそを掴んだ。
膝丈のスリーパーが腹の上まで捲り上げられる。
ネロは、驚いてすそを引っ張り返した。
「下着も脱ぎなさい」
セシルの手が離れてゆく。口をパクパクさせていると、冷ややかな視線が早く脱げと訴えた。
「は、い」
威圧感に押され、頷く。
「旦那様の前では、口を慎み、行動は最小限に抑えるように」
抑揚の少ない声は、まるで機械人間のようだ。
広い背中が、さっさと部屋を出ていく。
ネロははっとした。
首輪に繋がれたままだ。
鎖の長さは約3メートル。ベッドの上でしか行動ができないようだった。
諦めてベッドに寝転がる。
オークションで落札された奴隷に、人権は存在しない。
まともな食事を与えられず、馬車馬のように働かされるのが運命だ。
しかし、ネロは豪華な部屋と、新しい服を与えられた。
(なんでだろう·····)
考えている内に、柔らかなベッドが睡魔を運んでくる。
ネロは睡魔に抗えず、まぶたを閉じた。
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