【完結】寡黙な宰相閣下の愛玩奴隷~主人に恋した奴隷少年の運命~

亜依流.@.@

文字の大きさ
2 / 57

〖第二話〗

しおりを挟む





ネロは、貧しい町の小さな酒場で育った。

周りからは嫌煙されていた。生まれつき身体の成長が乏しく、貧弱だったためだ。力仕事では点で役に立たなかった。



「お前はハズレだな」



日々罵声を浴びせられながらも、自分なりに精一杯働いていたつもりだった。


事の始まりは数日前。
いつも通り店の掃除に取り掛かっていた時の事だった。


店に、大柄な男たちがやって来た。


彼らは店主に手のひらサイズの袋を渡し、ネロを馬車へ詰め込んだ。


次に目を覚ました時、光の渦中にいた。


体には力が入らず、まぶたを開くことが精一杯。光に目が慣れると、自分を物色するようなたくさんの視線に気付かされた。


ペットオークション───金持ちが集う、大規模な娯楽パーティーだ。


抜きん出た能力、技術を持つ者。容姿の美しいものやはたまた酷く醜い者、強靭な力をもった大男や、希少な異種族。

オークションには、珍しい奴隷が並べられた。

ネロの落札場面では、年配の男が、聞いたことも無い金額を叫んだ。

落札者は決定したと思われた。


「提示された金額の倍払おう」


若い男の声が、静寂を破った。

その後、ネロは馬車の荷台に乗せられ、この屋敷にやってきたのだった。



「ベッドに腰掛けなさい」



セシルが指示する。ネロは従いながら、オークションの喧騒を思い出した。


静かな男の声が、まだ耳に残っている。


(どんなひとなんだろう)


首元に、無機質な冷たさが触れる。

ガチャリ、と、冷たい音が響いた。

ネロとベッドの柱を、鎖が繋いだ。


「これ、なんですか?」


質問は完全に無視される。

セシルは、ネロが身にまとったシルクのすそを掴んだ。


膝丈のスリーパーが腹の上まで捲り上げられる。

ネロは、驚いてすそを引っ張り返した。 



「下着も脱ぎなさい」



セシルの手が離れてゆく。口をパクパクさせていると、冷ややかな視線が早く脱げと訴えた。


「は、い」


威圧感に押され、頷く。


「旦那様の前では、口を慎み、行動は最小限に抑えるように」



抑揚の少ない声は、まるで機械人間のようだ。


広い背中が、さっさと部屋を出ていく。


ネロははっとした。


首輪に繋がれたままだ。

鎖の長さは約3メートル。ベッドの上でしか行動ができないようだった。


諦めてベッドに寝転がる。


オークションで落札された奴隷に、人権は存在しない。


まともな食事を与えられず、馬車馬のように働かされるのが運命だ。


しかし、ネロは豪華な部屋と、新しい服を与えられた。



(なんでだろう·····)



考えている内に、柔らかなベッドが睡魔を運んでくる。

ネロは睡魔に抗えず、まぶたを閉じた。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...