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〖第十一話〗
しおりを挟むネロは、身体にのしかかっている重りを退かそうと、両手を伸ばす。
力を入れるが、頑丈な物体は動く気配が無い。
夢ではない。
息苦しい。紛れもなく現実だ。
「んっ·····」
何かの呪いだろうか。
一生、ここから抜け出せなかったらどうしよう。
寝ぼけたままのネロは、死を予期した。
セシルが聞けば「んな阿呆な」と軽蔑の視線を投げてくるだろうが、当の本人であるネロは真剣だ。
じんわりと涙が滲む。
不意に、扉扉が2度ノックされ、次いでガチャリとノブが回される音がした。
「おはようございます、イヴァン様」
無感情な声の主はセシルだ。
「セシルさん、助けて·····」
ネロは慌てて救いの手を求めた。
重い、苦しいと精一杯身をよじるネロ。
セシルは華麗に無視して、ネロの視界の端でティーカップへ紅茶を注いでいる。
それをベッド脇のテーブルへ移し、こちらに向かって「どうぞ」とまで言うのだ。
流暢なことをしている場合ではない。
ネロは兎に角この状況から打破したくて、バタバタと足を動かした。
「 朝食はいらない」
ここにはいないはずの声が響く。ネロの心臓が縮み上がった。
男の声は、頭上から聞こえた。
ネロは恐る恐るそちらを見上げる。
「なんだ、飽きたのか?」
壁の正体はイヴァンだった。こちらを眺める視線は、じゃれるペットに向けるそれと同じだ。
「い、イヴァンしゃま」
驚きのあまり噛んでしまった。
ネロは恥ずかしくて、彼に背を向ける。
「!?」
イヴァンが毛布をめくりあげる。
同じ調子で、ネロの服もめくりあげた。
「へっ?!」
驚くネロに構わず、イヴァンは小ぶりな尻へ手を伸ばす。
「あっ、や……!」
嫌、と口にしかけ、ネロは口を噤む。
彼の成すことは絶対で、抗うことなど許されない。
歯向かえば、いつかに見かけた奴隷の様に、顔の原型もわからぬほど殴りつけられ、鞭を打たれるかもしれない。
「…っ」
死んだふりをした動物のように動きを止めるネロ。
イヴァンはネロをうつ伏せにひっくり返すと、2本の指で蕾を押し広げた。
「ひゃんっ」
まだ心の準備ができていない。そう思う反面、期待した身体には汗が浮かぶ。
「切れたりはしていないな」
彼の指は、あっさり離れていった。
「…?…??」
ネロはくるりと彼を振り返る。
尻の穴を拡げられた。それも、ただ傷ができていないかを診られただけだ。
遅れてやってきた羞恥心とショックに打ちひしがれる。
「どうした?」
本当は、もっと触って欲しかったのに。
眉目秀麗な主人の顔が傾く。ネロは下唇を噛んだ。
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