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〖第三十四話〗
しおりを挟む「あっ······!」
仰向けに倒れ込んだステファンと、その上に馬乗りしている自分。
ネロは混乱のあまり、硬直した。
「ご、ごめんなさいぃ·····」
ネロは、今にも気絶しそうな程顔面蒼白だ。
ステファンは真上のネロを呆然と見上げていた。
「·····?·····??」
無表情が美形を際立たせるが、感情のない瞳は美貌に劣らぬほど恐ろしい。
(あ、終わった·····絞首刑とか·····?)
もしかしたら、今すぐに執行されるかもしれない。
ネロの頭の中は真っ白だった。
じんわりと瞳が潤む。
せめて、字が読めるようになってから死にたかった。
「·····ひっ…?」
ステファンの長い指が、予告なく腿を撫でた。
「???」
「なぜ····」
ステファンはひとりでに呟いた。
しっとりと柔らかな肌や、豊かに変わる表情。言葉を発するのも忘れ、伸ばした手をスリーパーの中へと忍ばせる。
「…え?ぁ…、だめ、」
ネロの腰に手を回し、そっと半身を起こすステファン。
腰を引き寄せられ、前のめりになったネロは、彼の胸元へ手を添えた。
(な、なに·····?)
胸の中にすっぽりと収まってしまった。
やはり、今日の彼は、どこか変だ。
しばらく悩んだ末、ネロはステファンの背にそっと手を回した。
相手から抱擁してきたのなら、こちらがし返して悪いことはないだろう。
「あの、ステファン様·····」
ガチャリ。
彼の名前を呼んだ所で、突如書斎の扉が開く。
「······································。」
入ってきたのは、数日ぶりに見るデリック。
彼は二人を確認すると、たっぷり数秒間をおいてから、かろうじて引きつった笑みを見せた。
ネロは、ディックに連れられ部屋に戻った。
否応なしにベッドへ座らせられる。彼は珍しく真面目な顔をしていた。
「イヴァン様は?」
ネロは気になる主人についてたずねた。
ディックがいるということは、イヴァンも帰っきているはずだ。
そわそわと体を揺らすネロの様子に、ディックは頭を抱え込みたくなってしまった。
今この少年が気にするべきなのは、少なくとも主人の居場所ではない。
「さっきのはどういう事なんだ?」
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