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第二章
《第13話》
しおりを挟む「先輩に謝って欲しい訳ではありません。昨日何をしてたのか、と、聞きました」
掴まれた左腕が鈍く軋んだ。
「1回手、離せ」
庵野は言うことを聞かなかった。
「教えられない」
姫宮が手を振り払おうとした時だった。
「·····っ!」
後頭部がベッドへ押し付けられる。
一瞬何が起こったのかわからぬほど、体を強く押し倒された。
両手は庵野の片手によって、頭上で拘束される。
見上げた先に、鍛え上げられた肉体があった。
姫宮は言葉を失った。
「このキスマークは、誰に付けられたものですか?」
抑揚のない言葉を、数秒してから理解する。
昨日、部室での出来事の時だ。
「俺の事を忘れて、他の奴と何してたんですか?」
「違っ·····忘れてなんか、」
「また嘘ですか?」
ふっ、と、嘲笑が聞こえた。
手に力を入れるが、拘束はビクともしない。
やばい。本能がそう察知する。
「どけよ·····───っ?!」
首元に高い鼻がうずめられた。
続いて与えられたのは、焼けるような痛み。
姫宮は歯を食いしばった。
吸うような音が長く続く。
まるで神経を引き抜かれるような感覚だ。体からは力が抜けていった。
「お前·····っ」
こちらを仰ぎ見た庵野の口元から、鮮やかな赤が垂れる。
形の良い唇が気持ち程度に弧を描く。
それが、「上書きしました」と、訳の分からないことを言った。
「こんなつもりじゃなかったんです、でも──仕方ないですよね」
妙に穏やかな声が紡ぐ。
姫宮は呆然としたまま彼を見上げていた。
ゆっくりと近づいてきた唇に、そっと唇を重ねられる。
以外にも優しく触れた唇は、先程自分の皮を破った凶器だ。
「っん·····」
ちゅ、ちゅ、と、啄むようなリップ音が続く。
短いキスのあと、しっかりと唇を塞がれた。
「·····ぅん·····っ」
熱い舌が、歯の裏側をなぞり、味わうように舌に絡みつく。
やがて口内には、じんわりと血の味が広がった。
こんなつもりじゃなかった、と彼は言った。
姫宮の方こそ、今日は全てが、こんなつもりじゃなかったのだ。
「みずき先輩·····」
一度舌を抜かれると、唇に唇を擦りつけながら、庵野が下の名前を呼んだ。
「あ、んの·····っん、」
まて、という前に、再び唇を塞がれる。
息が苦しくて、逃げるように顔を背ける。逃げないで、と、濡れた声が耳元へ囁いた。
口内を満遍なく蹂躙されながら、腰の当たりを撫でられる。
酸欠で体が痺れる。
思わず反れた背に、長い指が入り込む。
庵野は全身を舐めるように撫でまわした。
彼からは想像もつかないほどいやらしい手の動きだった。
痛みと、息苦しさ。そしてゾワゾワと神経が逆立つような快楽が混ざりあって、姫宮は思わず瞼を細める。
「先輩·····」
姫宮の表情を確認しながら、庵野の手は下へと移動してゆく。
「!?ちょ·····んっ、!」
抵抗する素振りを見せた姫宮は、ふたたび強く押さえつけられた。
唇はぱくりと塞がれる。
姫宮のペニスは半分硬くなっていた。
庵野はたまらなくなった。
姫宮みずきが自分によって性的興奮を感じている。
もう、後退りは出来ない。そう悟った。
姫宮のモノをしばらく撫でてから、庵野の手はそれを上下にしごき出す。
そっと唇を外すと、薄い唇から、混ざりあった唾液が溢れ出た。
「あんの·····やめ···っ」
やめろと言いながらかくかくと震える足は、どうやら快楽に余程弱いらしい。
「あっ、やっ·····っ」
抵抗は意味を持たない。
庵野はその蕾に中指を押し入れていった。
「えっ?うそ、っやだ、庵野·····っ」
「みずきさん·····」
ペニスを扱く動きを早める。姫宮は言葉にならない声で鳴いた。
差し込んでいただけの中指が、きゅんと締め付けられる感覚がする。
尻の中も感じるようだった。
「んんっ·····んぅ、っ」
味わうようなディープキスをつづける。
庵野は中指を付け根まで押し込んで、第2関節を前後に動かしてみた。
「ひぅっ?」
びくびく、と、奥がうねる。
「先輩·····奥、気持ちいいんだ·····」
思わずつぶやく。
姫宮の頬はカッと赤らんだ。
「っあっ、やっ·····はぁっ」
瞳の緑が濃くなっている。
庵野は濡れた身体のあちこちへキスを落としながら、指の動きを激しくしていった。
人差し指も追加して、姫宮が1番反応した位置を執拗に刺激する
「~~~っ!」
涙の膜を張った瞳が、時折たまらなさそうに下唇を噛む。
「あ、んのっ·····」
ごくり、と、人知れず庵野の喉が鳴る。
グチュグチュと卑猥な音を出し始めた穴を、わざと大きくかき混ぜる。
庵野はそっと囁いた。
「はしたない音····気持ちいいですか?」
「あっ····」
もう、止めることは出来ない。
最奥を叩くと、姫宮はくねりながら絶頂した。
「あなたのせいで、狂ってしまいそうです」
彼を自分のものに出来たら、どれ程良いだろうか。
独りよがりな思考が、庵野を蝕もうとする。
「はぁ·····っはっ·····はぁっ」
姫宮は荒く呼吸を繰り返していた。
吸い付くような音を残し、孔から長い指が引き抜かれる。
ことの過ぎ去った部屋は、時が止まったように静かだった。
どうしようもない屈辱心と罪悪感の中で姫宮は呟いた。
こんなつもりも、糞もない。
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