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2章

68話

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援軍が到着するまでに早々に会議が始まる。

約3日後に来るリバーウッドからの援軍に合わせて敵軍を殲滅する為の準備である。

一郎は事前にアンナ概要を説明しておき話してもらい、その後詳細を説明する為一郎が話し出す。

作戦は誘い込みから始まる包囲殲滅作戦であった。

敵の数は現在約1400こちらの戦闘できる人員は今後の援軍を含めで1500である。

数的にはこちらが若干有利だが向こうはまだオークの上位種や魔法を使うモンスターなど火力は健在である。

これまでモンスターの戦力をを削るため様々な策を用いて弱体化したが正面衝突したらまだ勝敗がどちらに転ぶか分からない。

今回はあえて正門を突破させて罠にはめる方向で準備を進める。

ソルトロックの正門の内側は広場になっている。

そしてその周りを囲うよう三階建ての石造りの建物が並ぶ。

そこで一朗はソルトロックの代表者達に了解を得て広場をモンスターの集団を撃滅する為の巨大な罠に作り変えた。

今までは防衛に使う物資や手当を行うテントが設営されていた広場はモンスターの侵攻を妨げて滅ぼす場所に早変わりする。

一朗はスケルトンを用いた24時間ブラック企業顔負けの土木作業により区分けされた堀を作った。

日本の山城で一部使われた「障子堀」である。

本来堀は城の外に作るものなのだが今回は敵の身動きを制限し逃げ道を塞ぐ為に正門の内側に作った。

堀の下には尖った杭や金属の荊を入れてある。違う堀の中には油の樽を入れておいた。

周りの建物は一階部分の入り口を塞ぎ、窓や屋上から弓で狙撃できるように足場を作る。

路地の間は鉄条網が何重にも設営されその先には高く積まれた石造りの塀が通路を塞ぐでいる。

突破後の勢いを殺す作戦である。

一郎は地味な土木作業を行う間、アンナにこの防衛線の人材の選出と配置を任せている。

今回は表向きアンナの案になっている。

一郎はあくまでもアンナの指示で作業をしていると周りの傭兵や住人には伝えていた。

アンナには前回の正門の被害を出してしまった指揮官の汚名を返上してもらおう。

一朗はこの街ではあくまでも助っ人の傭兵である。

目立ちすぎると後で怨みを買う可能性を嫌った。

以前召喚された街でオークに占拠された砦を一人で全滅した時の教訓である。

自分はこの街の英雄になりたいわけではない。

自分の能力を使ってこの世界でしたたかに生きていくことである。

今回の最終戦で一郎は裏方に徹するつもりである。

アンナは少し不満げであったが一郎はこの街の事情に疎く伝もない為、アンナが中心に動いてくれた方がやりやすいと言いくるめてなんとか納得してもらった。

「さて本日がモンスター共が最後に見る朝日です」

モンスターの軍勢は奇襲のつもりか朝早くから丸太を取り出し突撃してきた。

普段は頑丈に閉ざされている門は敵に入り込んでもらう為にワザとかんぬきや重しを減らし、
門がこじ開けられる様に細工しておいた。

また正門周辺の防衛の兵を減らし、こちらが疲弊したと思わせる工作を行った。

モンスターの軍勢のは正門の進行が順調なことがわかると次第に士気が上がり所々で雄叫びが上がる。

門に突撃する兵が一気に増え正門の外側はモンスターで溢れかえる。

こちらはイオウダケ入りの樽爆弾で応戦するが効果が薄い。

彼らに連日行った嫌がらせに使用してイオウダケの匂いに慣れてしまい、数日前から効果がほとんどなくなっていたのである。

モンスター達の勢いは止まらない。

ついに門は突破されモンスター達が勢いよくソルトロックの街になだれ込もうとしていた。

一郎は上空の鳥の偵察で確認しながら微笑む。

「作戦第一段階成功それではこれから包囲殲滅戦第二段階に入りますかね」

各所に遠隔指揮で伝える一郎であった。
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