オナニー愛好家と肉ディルド

兎卜 羊

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元クソ野郎が肉ディルドになるまで~古町視点

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 適当に食べた夕飯の後に、適当に風呂に入り、適当にビール片手に、適当にテレビをつけよう、とした所で微かに艶っぽい声が耳に掠めた。
 今まさにスイッチを入れようと手に取ったリモコンをソッと下ろし、静かに腰を下ろしてビールに口を付ける。
 テレビの音や、車が近くを通り過ぎる時の音で掻き消えてしまう程の小さな声だが、こう……静かにしていれば聞こえてくる声に耳を澄ます。

――あ…あ…んんぅ、イッちゃぅ…も…はっ、イクッイクゥ………っはぁあっ…――

 ギシギシとベッドの軋む音が聞こえ、それに追われる様に声も追いつめられたモノになり、一瞬息を詰めた気配の後一際高い声が上がる。

 なんだ、今日はもうおしまいか。
 風呂に入る前に気がつきゃ良かった…

 残念に思いながらビールを煽り微かに聞こえた ―んあっ― という甘い声に、チンコ抜かれたな、と下品な推測を思い浮かべ、本日の隣人のセックスが終了した事を確信しテレビのスイッチを入れた。




 この春からアパートの隣の部屋に新大学生が引っ越して来た。
 引っ越しの当日には挨拶に来たし、なんなら顔を合わせただけで毎回挨拶をして来る。
 こんな都会の引っ切り無しに入居者が変わるようなアパートで、近所付き合いもクソも無い、と誰も挨拶なんてしないのに、その新大学生は会えば必ず笑顔で挨拶をしてくる。
 所詮、好青年って奴だった。
 
 そして、常にオドオドして友人なんて一人もいない陰キャな僕と違って彼は陽キャだった。
 なぜなら、彼の部屋には良く友人が遊びに来るのだから。昼だったり夜だったり。一人だったり大人数だったり。
 ニコニコ笑い、ふざけ合いながら友人達と連れ立ってアパートの部屋へ入って行くのを良く見る。

 それで騒がしく騒音問題を起こすか、といえばそんな事は無く。騒音などは勿論、うるさいいと感じる事すら無く静かなものだった。
 もともと、このアパートは防音設備は悪くないのか騒音らしい騒音はこのアパートに引っ越して来て数年間あった事など無いのだが。

 しかし、その静かな隣人の部屋から聞こえてくる唯一の『音』が、先程の嬌声、生々しいセックスの音だった。
 最初は小さく微かな『音』でしかない為、どこから聞こえているのかも分からない程だった。
 それが隣人の新大学生の部屋からだと気が付き、ああ、AVを見ているのか、と思い当たった。大学生だしな、と彼の若さと健全さに納得したりもしていた。
 しかし、その聞こえる嬌声が女性のモノで無い事に直ぐに気が付いて、アレ? と疑問が浮かび、もしかしてゲイビを見ているのか? という考えが浮かんだ。

 もしや、彼はゲイだったのか? 
 それともたまたま興味本位で見ていただけなのか? 

 たかが隣人、されど隣人。
 この頃には、こんな陰キャでつまらない人間な僕にも笑顔で挨拶をしてくれる彼の事が少し、気になり始めていたのかもしれない。
 普段なら他人の事なんて興味は無く、ゲイだろうがレズだろうがバイだろうが、どうだって良かったのだが、ほんの少し興味を持ってしまっていた。

 だからか、次に『音』が聞こえて来た時には無意識に耳を凝らしていた。
 自分でも何て無粋な事をするんだ、と呆れる行為だが好奇心には勝てなかった。
 そして、耳を澄まし聞き取った声は、その日も男性の物だった。
 これはゲイかバイかで確定か、となぜかその時少し嬉しかったのを覚えている。
 
 その後、何度かそんな『音』を聞いてしまう事があったが、今日も元気に自家発電頑張ってるな、と心の中で応援し、その『音』を?き消す為にテレビのスイッチを入れたりしていた。
 ただただ、その時の僕は最近めっきり枯れ果てた自分とは違い、溢れる生命力に感嘆の気持ちを感じていただけだった。

 その認識が変わったのはその『音』を聞いてしまう事、何度目の事だったか。
 意外と頻繁に聞こえる『音』に本当に元気だな、とその日は思わず直ぐにはテレビのスイッチをつけずに聞こえる声に耳を傾けてしまった。
 下手をすると連日の時もある『音』に、どんなジャンルのゲイビを見ているのか気になってしまったのだ。
 下世話な好奇心だが何年も趣味も楽しみも無く、ただ生きてるだけの惰性で毎日を送っていた僕は時間と暇を持て余していた。
 それは、ほんの少しの出来心だったのだ。

――んっ…はっはっ……ああっ、いい、あんっ…あんっ、ああぁ…――

 やはり男性の声で、しかも若い。
いつもちゃんと聞いている訳では無いが、僕の記憶の中の声は全て若い男性の物だった。
なんだったら同一人物かもしれないと思う程、声質が似ていた。

――はぁー、はぁー、あ……んんぅ、ン……あ…キツ…イ――

 ん? チンコ挿入シーンか?

 声の感じからして、ゆっくり挿入れている感じがするソレを聞きながら、ゲイビのジャンルの予想を立てる。

 この緩やかな感じ、学生モノの日常系か? それか素人モノ。
 間違ってもハード系では無いな。

――あっあっあっあっ……んあっ、あっあっ――

 少し声を押さえてる所がリアルさを感じさせるな。
 もしかして素人投稿系か?
 しかし、この声可愛いな。喘ぎもわざとらしさが無いし、本当に気持ちの良い時の声だ。
 なんのAVだか動画だか分からないが、実際に見てみたいな。
 いや、実際に見たら幻滅するタイプかもしれない。声が可愛いってだけでは当てにならないんだよなぁ。

 隣人のオカズを盗み聞きして、何とも下世話な事を考えていた時。その隣人側の壁に、ガン、と何かがぶつかる音がして僕は飛び上がった。

 ぼっ…僕が盗み聞きしている事に気づかれた!?
 ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!
 わざとじゃ無いんです! すいませんでしたーーー!!

 出そうになる悲鳴を押さえ、壁の向こうの隣人に手を合わせ謝っていると、先程まで聞こえていた声の調子が変わっている事に気が付いた。

――ああっ!やっなに!ああっん…ああっはぁっ……やぁぁ!! あたってるっ、だめ!あたってるぅっ…っああ!――

 臨場感のあるガタガタとベッドの鳴る音と、時たま部屋の壁を叩く何かの音、それに合わせて上る嬌声。微かに感じる振動。
 それら全てが、ある事実を僕に突き付けて来た。

 この声、AVじゃない!
 リアルだっ!!!

 今まで映像の『音』だと思っていた物が、壁を隔てた向こう側でリアルで繰り広げられている。驚愕のあまり絶叫しそうになる口を手で押さえた。
 急激に早鐘の様に打つ心音に震えているその間にも、隣人のセックスは続いており、僕の耳にもその様子はしっかりと情報として入って来ていた。

――あっあっ……うそっ、ああ、はんっ…きも、ちいぃ、あん! これ…あたってるぅぅ……あああ、あっ、こんな…だめぇ――

 この反応は、気持ち良い所を思い切り擦られでもしたのか?

――だめぇっ、すぐイッちゃう……ああぁぁ、だめぇぇ…んうっ!!――

 ああ、今のは前立腺にゴリっていったな

――はぁっ、あうっ…あっあっ、いい…すごい、きもちいい……ああ、いい、ああああ――

 そうか、気持ち良いのか。良かったな、いっぱい気持ち良くしてもらえ。

――イクッイクッイクッ!んぅぅ……………んあぁぁあっっ!! は、ああっ――

あ、イッた…………

 ずっと聞いていて思ったが、やはりこの声は可愛い。
 今更だがこの声、隣人の大学生? なのか?

 まさか、あの好青年な彼が頻繁に男とセックスをしていたなんて、信じられない。
 思いがけない事実に心臓がドクドクと打ち鳴らされ、しかも、僕の下半身は膨らんでいた。

 別に隣人がセックスしていた事位、自分には関係の無い、どうでも良い日常の1つでしかないはずだった。
 現に、このアパートの何処かの部屋でも常に誰かがセックスをしているだろうし、その事について何も思わない。
 むしろ、生物なのだから種の無駄撃ちだろうと生殖行為はして当然だと思っている。
 なのにだ、あの彼が隣の部屋で…………と思うと、なぜこんなにも興奮してしまうのか。

 隣の部屋からは第二ラウンドが始まったのか、緩やかな喘ぎが聞こえ始め、その声につられるように僕の下半身の膨らみが更に大きくなる。
 この数ヶ月…いや、2年以上か。自発的に大きくなる事の無かった僕の性器がズボンの中でギチギチと痛いほどに勃起していた。
 久し振りなその感覚に、早く擦り上げ出してしまいたかったが、今ここで隣人の彼の嬌声を聞きながら、なんてのは罪悪感と背徳感が酷すぎる。
 僕は風呂場に逃げ込み、シャワーを頭から浴びながら処理した。
 
 その後は精通してから十数年、最大級の賢者タイムに死にたくなった。

 壮絶な賢者タイムを味わったおかげか、その後何度か隣人のセックスの音を聞いたが、先日の様にバキバキに勃起してしまう様な事はなかった。
 日によっては、ほんのり硬くなる事はあるが、抜かなければいけなくなる程ではない。
 数年間、性欲なんて湧きもせず死んだような下半身で、今更性欲だなんだなんてどうでも良いと思っていたのに。
 なのに、なぜか僕の意思に関係無く数年ぶりに反応する下半身。
 馬鹿らしくも生きていたのか、なんて謎の感動を抱いてしまった。その感動を再び味わいたい僕は、趣味が悪いとは思いつつ耳をそばだててしまう。

 しかし、相も変わらず隣人の彼の声以外では沈黙を保ち、ピクリとも反応しないのだが………己の下半身は一体どうなっているのか。
 一抹の不安は残しつつも、気が付けばBGMの様に聞いてしまう日々を送っていた。

 そして何度か聞いていて一つ、気が付いた事がある。
 それは、どうも隣人のセックスの相手が一人では無さそうだという事だった。
 最初は彼氏がいるんだろうと思っていたのだが、隣人の部屋に出入りする人間はいつも違うのだ。
 色々な友人が頻繁に出入りしているとは思っていたが、どうもその中に特定の相手がいるようには見えない。
 別に、決して気にして見ていた訳では無い。ただ何度か来客とすれ違ったり、バッタリ玄関前でかち合ってしまったりする事があるだけだ。
 その度に違う人物だったりで、親密な特定の相手とは言い切れない感じだったのだ。
 そして、そういう来客があったその夜に、例の『音』が聞こえるって事は、そういう事なんだろう。

 その事に気が付いた瞬間、再び僕に衝撃が走った。
 彼は見た目だけで言えば爽やかな好青年で、淫猥な性の匂いなんて一切感じさせない青少年なのだ。
 明るめのアッシュブラウンに染めた髪にゆるくパーマをかけ、キョロっとした丸い目をクシャッと細めて挨拶をしてくる。そんな彼が、だ。
 あんなに好青年ぶっていて、やっている事がなかなかのビッチっぷりな事には驚愕と衝撃を禁じ得ない。

 そして、そんな彼に昔の自分を思い起こさせられる。 
 今の僕はもう昔の様な事は無いが、その昔の事を、自分自身を、今は凄く後悔している。
 隣人の彼もこんな事を続けていれば、そのうち僕みたいに痛い目を見るかもしれない。
 そう思うと、申し訳ないが少しだけ親近感が湧いた。

 しかし彼はまだ若いし、もしかしたら今はスポーツ感覚なのかもしれない。セックスをスポーツとして楽しむ人もいるようだし。
 なるほど、そう考えればあの好青年な彼にはそっちの方がしっくりくる気がする。

 なんて、アレコレ考えた所で陰キャな僕と陽キャな彼では隣人以上の接点も関係も無いのだが…

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