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宰相アルノルト
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1つの大陸を六つに分け、それぞれが国となり、治めていた。その内の一つであったルシアプ王国では、2年前に立て続けに国王と王妃が流行り病で亡くなっていた。
二人の間には、当時10歳になったばかりのクラウザール王子一人しかおらず、王弟も国王達と同じ病で倒れ、その子供も齢5つの幼子が一人であった。
そうなると当然、次期国王は10歳のクラウザール王子となる。例え、どんなに幼くとも正統な後継者はその王子陛下ただ一人なのだから。
勿論、幼さを理由に大きく反対する動きもあったが、当時まだ就任したばかりの宰相であるアルノルトが強くクラウザールを王にと推して来た。宰相として、一家臣として、自分が責任を持って幼き国王を支え立派な賢王へと導き育てて行く、と正式に宣言までして来たのだ。
それでもまともに外交すらした事の無い、悪く言えば世間知らずな子供を、こちらもまだ成人して数年の年若いアルノルトに一任する事に危機感を持った一部の家臣達が反発した。だが、現宰相であるアルノルトは前宰相の息子であり、国内の貴族では上位に当たる大公だったのもあり、クラウザール王子の即位を強行しようとするアルノルトを退ける事は出来なかった。
そうして国王と王妃の国葬後の一月後、ルシアプ王国史上最年少となる幼い国王が即位した。
大陸一の絶世の美女と謳われた母后に似てそれはそれは美しく、その天使の様な見目に相応しく世間の悪意や闇を知らず、良くも悪くも純粋無垢に育ったクラウザール新国王は、一度に両親を亡くした寂しさからか、それとも幼い頃から兄の様に慕っていたからか、後見人となったアルノルトに依存するかの様に懐いた。
そして、クラウザールが即位して数か月もしない内に、早くも違和感が顔を出し始めた。アルノルトが本当に最初に宣言していた様に、クラウザールを賢王たらしめる為に教育をしているのか怪しかったのだ。
国情にすらなかなかに疎いらしいクラウザールは、国政でも外交でも己の意見を言う事が無く、常にアルノルトに意見を求め、アルノルトの助言という名の指示をそのままを口に乗せ、行動をしていたのである。
そして、アルノルトもそんなクラウザールの側に常に付き、己の言うがままに動くクラウザールに慈愛の籠った眼差しを向けていた。
その姿は明らかにアルノルトの傀儡。
一部の家臣たちが危惧していた通りになっていたのだ。
そしてあろう事か、今まで不文律ではあったが互いに侵略などという事をする事も無く、表面上は友好な関係を築いて来た近隣の国を支配しようと動き始めたのだ。
国王たるクラウザールの言い分は「余は皆とお友達になって仲良くしたいのだ」と、何とも稚拙な物だった。だが、その内情は仲良くしようとしている物ではなく、政治的問題であったり交易であったりと相手国の弱みに付け入り、巧妙に自国が有利になる様に色々と条約を結び、最終的には従属させてしまう物だった。
その結果、皮肉にもルシアプ王国は経済、軍事、共に豊かになってしまい、大きく不満も言えないのだ。
クラウザールが王となり早二年、既に自国を除いて五つの国の内三つを従属させていまい、その全ての指揮を司ったのは当然アルノルトだった。
この事により国内外共に、このルシアプ王国は宰相アルノルトに乗っ取られたのだと認識されていた。
二人の間には、当時10歳になったばかりのクラウザール王子一人しかおらず、王弟も国王達と同じ病で倒れ、その子供も齢5つの幼子が一人であった。
そうなると当然、次期国王は10歳のクラウザール王子となる。例え、どんなに幼くとも正統な後継者はその王子陛下ただ一人なのだから。
勿論、幼さを理由に大きく反対する動きもあったが、当時まだ就任したばかりの宰相であるアルノルトが強くクラウザールを王にと推して来た。宰相として、一家臣として、自分が責任を持って幼き国王を支え立派な賢王へと導き育てて行く、と正式に宣言までして来たのだ。
それでもまともに外交すらした事の無い、悪く言えば世間知らずな子供を、こちらもまだ成人して数年の年若いアルノルトに一任する事に危機感を持った一部の家臣達が反発した。だが、現宰相であるアルノルトは前宰相の息子であり、国内の貴族では上位に当たる大公だったのもあり、クラウザール王子の即位を強行しようとするアルノルトを退ける事は出来なかった。
そうして国王と王妃の国葬後の一月後、ルシアプ王国史上最年少となる幼い国王が即位した。
大陸一の絶世の美女と謳われた母后に似てそれはそれは美しく、その天使の様な見目に相応しく世間の悪意や闇を知らず、良くも悪くも純粋無垢に育ったクラウザール新国王は、一度に両親を亡くした寂しさからか、それとも幼い頃から兄の様に慕っていたからか、後見人となったアルノルトに依存するかの様に懐いた。
そして、クラウザールが即位して数か月もしない内に、早くも違和感が顔を出し始めた。アルノルトが本当に最初に宣言していた様に、クラウザールを賢王たらしめる為に教育をしているのか怪しかったのだ。
国情にすらなかなかに疎いらしいクラウザールは、国政でも外交でも己の意見を言う事が無く、常にアルノルトに意見を求め、アルノルトの助言という名の指示をそのままを口に乗せ、行動をしていたのである。
そして、アルノルトもそんなクラウザールの側に常に付き、己の言うがままに動くクラウザールに慈愛の籠った眼差しを向けていた。
その姿は明らかにアルノルトの傀儡。
一部の家臣たちが危惧していた通りになっていたのだ。
そしてあろう事か、今まで不文律ではあったが互いに侵略などという事をする事も無く、表面上は友好な関係を築いて来た近隣の国を支配しようと動き始めたのだ。
国王たるクラウザールの言い分は「余は皆とお友達になって仲良くしたいのだ」と、何とも稚拙な物だった。だが、その内情は仲良くしようとしている物ではなく、政治的問題であったり交易であったりと相手国の弱みに付け入り、巧妙に自国が有利になる様に色々と条約を結び、最終的には従属させてしまう物だった。
その結果、皮肉にもルシアプ王国は経済、軍事、共に豊かになってしまい、大きく不満も言えないのだ。
クラウザールが王となり早二年、既に自国を除いて五つの国の内三つを従属させていまい、その全ての指揮を司ったのは当然アルノルトだった。
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