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17 俺は貧民街住みですが、何か
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「ドニーさんって街に住んでるんですよね。だったら街の事も詳しいですよね! この土地の事を教えて下さってる先生からは商業が盛んで、色々な市場や商店が立ち並んでるって聞いたんですが、どんなお店があるんですか?」
今日も相も変わらずな若奥様が梯子の上の俺に話しかけて来る。
その質問って、あわよくば俺に若奥様を連れ出させて街を案内させようって意図が含まれてるよな。
だが、残念だったな。
「その先生の話は平民街や貴族街の事を言ってるんだと思うんですけど、俺が住んでるのは貧民街なんで、平民街の事すら良く知らないんですよね。行く事が滅多に無いんで」
そう、良く分からん。物語の中のドニー君はどうかは知らないが、俺は平民街なんて素通りするだけだし表面的な事しか知らん。
だから、最近アルフに連れ出されて初めて知る事が多い位だ。
「貧民街っ……」
「そう、貧民街です。だから、若奥様のご期待に添えるような事は分からないんですよね。お役に立てず、すみません」
「あ……そ、そう、なんですのね」
貧民街って聞いて、若奥様は明らかに動揺してる。まぁ、貴族からしたら貧民街なんてガラも治安も悪くて汚いイメージだろうし、そこに住んでる人間なんて目に入るのも嫌な卑しい人間だろ。
若奥様の今の反応を見る感じ、物語のドニー君は貧民街で暮らしてる事を若奥様に黙ってたのかも知れないな。健気だなドニー君。俺はそんな事無いからガンガン言っちゃうけどね。
さあ、果たして若奥様はそんな俺を当て馬に出来んのかな?
「私、そろそろ戻りますね? お仕事頑張って下さい」
引き攣った笑顔で梯子の上の俺に目線も合わせず、そそくさと去って行く若奥様を見て俺の頭の中では勝利のファンファーレが鳴り響く。
勝った……。これで、今度こそ諦めてくれたら良いんだけどな。
若奥様が去り、清々しい気分で機嫌良く剪定作業を続けていると作業の効率も上がるのか、予定より早く終わった作業に、これまた機嫌良くなった俺は鼻歌交じりで道具を片付けるついでに作業小屋の中を整理したりなんかしてしまった。
埃を被っていたり、泥が付いたまま放置されて固まってしまっている鍬や熊手なんかを外に運び出し井戸の水で洗う。ついでに全身埃を被ってざらざらする体も服を脱いで洗い流す。と言っても上半身だけだけど。それだけでも、凄くサッパリしてスッキリする。
「てめぇ、なんで服着てねぇんだよ!!」
服が濡れるのを気にしながら道具を洗うのも面倒クセ―と思った俺は、どうせ誰も来ないだろうとふんで半裸の状態で作業を続けてたんだけど……そうか、アルフが来る可能性をすっかり忘れてたわ。
「よう、もうそんな時間か?」
「そんな時間か? じゃねえ! 誰かに見られたらどうすんだ!!」
「もう、お前に見られたし、今更だな。それに貧相な男の裸見た所で誰がどう思うんだよ。お前みたいに見苦しいって怒る位だろ」
長年の栄養不足が祟って俺の体は超貧弱だ。これで良く毎日の肉体労働に耐えてるな、と自分でも思う程だ。最近はアルフのおかげで昼飯で栄養のあるものを食える事で少しはマシにはなったとは思うけど。
座った状態の俺を見下ろし、俺のあばらが浮き出た胸と薄っぺらい腹から目を逸らさずに怒るアルフも、そんなに怒るなら見るなよな。
「なんだ、その腹……お前……前々からガリで薄いとは思ってたけど、これはねぇわ。無理だろ……入んねぇよ。ええ?」
「悪かったなガリで! 分かった分かった。もう、服着るから離せって」
俺の脇腹を掴んで細い細いとブツブツ言うアルフの手を払って脱ぎ捨てていた服を拾いに行こうとしたが、ガシッとアルフに正面から肩を掴まれてしまう。しかも、目が血走ってて怖い。
俺って、そんな衝撃を受ける程の貧弱さか?
今日も相も変わらずな若奥様が梯子の上の俺に話しかけて来る。
その質問って、あわよくば俺に若奥様を連れ出させて街を案内させようって意図が含まれてるよな。
だが、残念だったな。
「その先生の話は平民街や貴族街の事を言ってるんだと思うんですけど、俺が住んでるのは貧民街なんで、平民街の事すら良く知らないんですよね。行く事が滅多に無いんで」
そう、良く分からん。物語の中のドニー君はどうかは知らないが、俺は平民街なんて素通りするだけだし表面的な事しか知らん。
だから、最近アルフに連れ出されて初めて知る事が多い位だ。
「貧民街っ……」
「そう、貧民街です。だから、若奥様のご期待に添えるような事は分からないんですよね。お役に立てず、すみません」
「あ……そ、そう、なんですのね」
貧民街って聞いて、若奥様は明らかに動揺してる。まぁ、貴族からしたら貧民街なんてガラも治安も悪くて汚いイメージだろうし、そこに住んでる人間なんて目に入るのも嫌な卑しい人間だろ。
若奥様の今の反応を見る感じ、物語のドニー君は貧民街で暮らしてる事を若奥様に黙ってたのかも知れないな。健気だなドニー君。俺はそんな事無いからガンガン言っちゃうけどね。
さあ、果たして若奥様はそんな俺を当て馬に出来んのかな?
「私、そろそろ戻りますね? お仕事頑張って下さい」
引き攣った笑顔で梯子の上の俺に目線も合わせず、そそくさと去って行く若奥様を見て俺の頭の中では勝利のファンファーレが鳴り響く。
勝った……。これで、今度こそ諦めてくれたら良いんだけどな。
若奥様が去り、清々しい気分で機嫌良く剪定作業を続けていると作業の効率も上がるのか、予定より早く終わった作業に、これまた機嫌良くなった俺は鼻歌交じりで道具を片付けるついでに作業小屋の中を整理したりなんかしてしまった。
埃を被っていたり、泥が付いたまま放置されて固まってしまっている鍬や熊手なんかを外に運び出し井戸の水で洗う。ついでに全身埃を被ってざらざらする体も服を脱いで洗い流す。と言っても上半身だけだけど。それだけでも、凄くサッパリしてスッキリする。
「てめぇ、なんで服着てねぇんだよ!!」
服が濡れるのを気にしながら道具を洗うのも面倒クセ―と思った俺は、どうせ誰も来ないだろうとふんで半裸の状態で作業を続けてたんだけど……そうか、アルフが来る可能性をすっかり忘れてたわ。
「よう、もうそんな時間か?」
「そんな時間か? じゃねえ! 誰かに見られたらどうすんだ!!」
「もう、お前に見られたし、今更だな。それに貧相な男の裸見た所で誰がどう思うんだよ。お前みたいに見苦しいって怒る位だろ」
長年の栄養不足が祟って俺の体は超貧弱だ。これで良く毎日の肉体労働に耐えてるな、と自分でも思う程だ。最近はアルフのおかげで昼飯で栄養のあるものを食える事で少しはマシにはなったとは思うけど。
座った状態の俺を見下ろし、俺のあばらが浮き出た胸と薄っぺらい腹から目を逸らさずに怒るアルフも、そんなに怒るなら見るなよな。
「なんだ、その腹……お前……前々からガリで薄いとは思ってたけど、これはねぇわ。無理だろ……入んねぇよ。ええ?」
「悪かったなガリで! 分かった分かった。もう、服着るから離せって」
俺の脇腹を掴んで細い細いとブツブツ言うアルフの手を払って脱ぎ捨てていた服を拾いに行こうとしたが、ガシッとアルフに正面から肩を掴まれてしまう。しかも、目が血走ってて怖い。
俺って、そんな衝撃を受ける程の貧弱さか?
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