【完結】婚約者様。今、貴方が愛を囁いているのは、貴方が無下に扱っている貴方の婚約者ですわよ

兎卜 羊

文字の大きさ
4 / 13

4 エリック様との婚約解消は絶対なのです!

 明日にでも、と仰った通り、エリック様は夜会の翌日、なんと先触れも無く一人で我が家に来られました。

 お父様には昨日の夜会での事はお伝えしておりましたのでエリック様の訪問自体には驚いてはおられませんでしたが、まさか先触れがないなんて。しかも、婚約という家同士の話し合いに一人で来られるとは、なんて不躾で非常識なのでしょう。
 
 しかも、言うに事欠いて。

「マリサ嬢との婚約を破棄させて頂く!」

 同席しなくても良い、と言うお父様に甘え、隣の部屋から事の次第を窺っていた私は大きな溜息しか出ませんわ。
 それはお父様も同じだった様ですわね。こちらの部屋にまでお父様の呆れ返った溜息が聞こえましたもの。

「破棄、とはどう言う事かね?」
「マリサ嬢は私には釣り合わない! 釣り合おうとする努力も見えない! あのような令嬢を我が伯爵家に迎え入れては、こちらの恥だ!!」
「恥、ですと?」

 お父様、ここは抑えて下さいまし!! 
 明らかに声が怒りで震えておりますわ!!

「この婚約の意味と、マリサが質素な装いでいる事の理由をエリック殿はご理解しておられるのか?」
「マリサ嬢が私と結婚したいとゴネたのだろう? 確かにデシャネル子爵家の融資と業務提携は魅惑的だったが、それをチラつかせて娘の我儘を通して望まぬ政略結婚をさせられる私の身にもなって欲しい。それに、マリサ嬢のあの色気の無い装いに理由があるなら、貴殿方が正して差し上げては如何ですか? 私は理由も何も興味はありませんが、常に不愉快に思っておりましたよ」
「なるほど……君のその言い分だと、お父上にはこの婚約を破棄?したいと言う事はお伝えしておられないようだね」

 そうですわね。ちゃんとミュラトール伯爵当主で在らせられるお義父様にお話を通しておられれば、この様な発言になる訳がありませんもの。
 と言うか、とんでもなく自分に都合の良い様に解釈されていますけど、最初に婚約を結ぶ時にこの婚約の意味をご説明したはずですわよね。お忘れになられたのかしら。

「父には事後報告になるが問題ない! 次期当主の私が自分の結婚相手にマリサ嬢が相応しくないと判断したんだ! なんの問題がある!!」
「そうですか、君がそう言い張るなら、それでも良いでしょう。こちらとしても、これ以上エリック殿を家のマリサの婚約者とし続けるつもりは無いのでね。ただ、『解消』と言うなら我が家は喜んで受け入れるが『破棄』と言うのは受け入れがたい。我が家、ましてやマリサには何も非難される謂われは無い。我々はミュラトール伯爵家にもエリック殿にもきちんと礼節ある付き合いをして来たはずだ。むしろ、そちらの方が我々に無礼を働いていないかい? 先触れも無く来られた今日のようにね」
「なっ!」

 お父様! 私が言いたかった事をズバッと言って下さるなんて、素敵ですわ! お母様が「お父様ってホンワカしてらっしゃるけど、いざという時には頼りになるんですのよ」って仰ってたのも納得ですわね!
 私も、お父様みたいな優しく頼りになるお方と添い遂げたいものですわ。
 その為には、エリック様との婚約解消は絶対なのです! 

感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~

希羽
恋愛
​「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」 ​才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。 ​しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。 ​無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。 ​莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。 ​一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。

あなたの思い通りにはならない

木蓮
恋愛
自分を憎む婚約者との婚約解消を望んでいるシンシアは、婚約者が彼が理想とする女性像を形にしたような男爵令嬢と惹かれあっていることを知り2人の仲を応援する。 しかし、男爵令嬢を愛しながらもシンシアに執着する身勝手な婚約者に我慢の限界をむかえ、彼を切り捨てることにした。 *後半のざまあ部分に匂わせ程度に薬物を使って人を陥れる描写があります。苦手な方はご注意ください。

その令嬢は祈りを捧げる

ユウキ
恋愛
エイディアーナは生まれてすぐに決められた婚約者がいる。婚約者である第一王子とは、激しい情熱こそないが、穏やかな関係を築いていた。このまま何事もなければ卒業後に結婚となる筈だったのだが、学園入学して2年目に事態は急変する。 エイディアーナは、その心中を神への祈りと共に吐露するのだった。

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

阿里
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?

カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。 フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

婚約破棄?まあ!御冗談がお上手なんですね!

桜井ことり
恋愛
「何度言ったら分かるのだ!アテルイ・アークライト!貴様との婚約は、正式に、完全に、破棄されたのだ!」 「……今、婚約破棄と、確かにおっしゃいましたな?王太子殿下」 その声には、念を押すような強い響きがあった。 「そうだ!婚約破棄だ!何か文句でもあるのか、バルフォア侯爵!」 アルフォンスは、自分に反抗的な貴族の筆頭からの問いかけに、苛立ちを隠さずに答える。 しかし、侯爵が返した言葉は、アルフォンスの予想を遥かに超えるものだった。 「いいえ、文句などございません。むしろ、感謝したいくらいでございます。――では、アテルイ嬢と、この私が婚約しても良い、とのことですかな?」 「なっ……!?」 アルフォンスが言葉を失う。 それだけではなかった。バルフォア侯爵の言葉を皮切りに、堰を切ったように他の貴族たちが次々と声を上げたのだ。 「お待ちください、侯爵!アテルイ様ほどの淑女を、貴方のような年寄りに任せてはおけませんな!」 「その通り!アテルイ様の隣に立つべきは、我が騎士団の誉れ、このグレイフォード伯爵である!」 「財力で言えば、我がオズワルド子爵家が一番です!アテルイ様、どうか私に清き一票を!」 あっという間に、会場はアテルイへの公開プロポーズの場へと変貌していた。

もう、あなたには何も感じません

たくわん
恋愛
没落貴族令嬢クラリッサは、幼馴染の侯爵子息ロベルトから婚約破棄を告げられた。理由は「家が落ちぶれた」から。社交界で嘲笑され、屈辱に打ちひしがれる彼女だったが――。