8 / 13
8 百歩譲って愛があったとしても嫌ですわよ
私とエリック様のやり取りをご覧になっていらっしゃったご友人達は声も出ない程驚いてらっしゃるみたいで、口元を扇子で隠し、エリック様をおぞましい者の様に見ていらっしゃいますわ。
それに、ご友人だけでなく、何事かと遠巻きにギャラリーも集まられていて、皆様エリック様の言動に唖然とされておられるようですわね。
そんな数々の目に囲まれている事に気が付かれたエリック様が、慌てて立ち上がられたのですが足が震えておいででフラフラじゃございませんか。
それでもなけなしの矜持を振り絞って余裕の表情を取り繕ってらっしゃるみたいですけど、出来ておりませんわよ。
引き攣った笑顔で汗で張り付いた前髪をかき上げた所で必死さが隠しきれませんわ。
「マリサ。やはり、どこかで誤解があったようだ。君からの贈り物が浅ましい訳ないじゃないか。どれもマリサからの私を思う心が籠っていて嬉しかったよ。贈り物は、その人の思いだ。非常識な訳無いじゃないか」
「あら? でも、私はエリック様からお誕生日の贈り物も、カードすらも一枚も頂いておりませんわよ? 社交界のドレスも、婚約したての頃に二~三着頂いたきりで」
「うっ……お、おかしいな……贈った、はず、なんだが……」
「まぁ、そうなんですの? でしたら、配送を依頼した者を調べないといけませんわね。もし、盗まれていたりしたら犯罪ですもの」
「い! いやいやいや! ど、どうかなぁ、どうだったかなぁ? ああ、すまない、誰に頼んだか忘れてしまったなぁ」
なんですの? その返しは……つまらない。どこまでもお粗末な言い訳に、溜息も出ませんわ。
さっきからキョロキョロと周りの方々を気にする素振りを見せられていますけど、だったら素直に謝られたら宜しいのに。見苦しい言い訳ばかりで余計に醜態をさらしていらっしゃる事に気が付かないのかしら。
「ま、まぁ、そんな些細な事を気にするより、お詫びに五年分の贈り物をさせてくれないかい? サイズの合わないドレスでも、私の贈ったものだと健気に着てくれていた君の愛情にも報いたいんだ」
「愛情なんてありませんでしたわよ?」
「は?」
気持ちの悪い事、言わないで下さいまし。
「あの前時代的なドレスも、厳格な家庭教師の様な髪型も、それがエリック様の好みなのかと思って、一応は婚約者として歩み寄ろうと甘んじて受け入れていたに過ぎませんわ。そこに愛はございません。だから、エリック様とお会いしない時は、今の様に好きな装いをしておりましたもの」
ね? 皆さん?
そう言ってご友人達へ目線を向けると、皆様ウンウン、と頷いてくださり証人になって下さるみたいで良かったですわ。
それを信じられない、と言う目で見て来られますけれど、まさか常日頃からあの装いだと思われてましたの? そんなの、百歩譲って愛があったとしても嫌ですわよ。
それに、ご友人だけでなく、何事かと遠巻きにギャラリーも集まられていて、皆様エリック様の言動に唖然とされておられるようですわね。
そんな数々の目に囲まれている事に気が付かれたエリック様が、慌てて立ち上がられたのですが足が震えておいででフラフラじゃございませんか。
それでもなけなしの矜持を振り絞って余裕の表情を取り繕ってらっしゃるみたいですけど、出来ておりませんわよ。
引き攣った笑顔で汗で張り付いた前髪をかき上げた所で必死さが隠しきれませんわ。
「マリサ。やはり、どこかで誤解があったようだ。君からの贈り物が浅ましい訳ないじゃないか。どれもマリサからの私を思う心が籠っていて嬉しかったよ。贈り物は、その人の思いだ。非常識な訳無いじゃないか」
「あら? でも、私はエリック様からお誕生日の贈り物も、カードすらも一枚も頂いておりませんわよ? 社交界のドレスも、婚約したての頃に二~三着頂いたきりで」
「うっ……お、おかしいな……贈った、はず、なんだが……」
「まぁ、そうなんですの? でしたら、配送を依頼した者を調べないといけませんわね。もし、盗まれていたりしたら犯罪ですもの」
「い! いやいやいや! ど、どうかなぁ、どうだったかなぁ? ああ、すまない、誰に頼んだか忘れてしまったなぁ」
なんですの? その返しは……つまらない。どこまでもお粗末な言い訳に、溜息も出ませんわ。
さっきからキョロキョロと周りの方々を気にする素振りを見せられていますけど、だったら素直に謝られたら宜しいのに。見苦しい言い訳ばかりで余計に醜態をさらしていらっしゃる事に気が付かないのかしら。
「ま、まぁ、そんな些細な事を気にするより、お詫びに五年分の贈り物をさせてくれないかい? サイズの合わないドレスでも、私の贈ったものだと健気に着てくれていた君の愛情にも報いたいんだ」
「愛情なんてありませんでしたわよ?」
「は?」
気持ちの悪い事、言わないで下さいまし。
「あの前時代的なドレスも、厳格な家庭教師の様な髪型も、それがエリック様の好みなのかと思って、一応は婚約者として歩み寄ろうと甘んじて受け入れていたに過ぎませんわ。そこに愛はございません。だから、エリック様とお会いしない時は、今の様に好きな装いをしておりましたもの」
ね? 皆さん?
そう言ってご友人達へ目線を向けると、皆様ウンウン、と頷いてくださり証人になって下さるみたいで良かったですわ。
それを信じられない、と言う目で見て来られますけれど、まさか常日頃からあの装いだと思われてましたの? そんなの、百歩譲って愛があったとしても嫌ですわよ。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~
希羽
恋愛
「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」
才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。
しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。
無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。
莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。
一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。
あなたの思い通りにはならない
木蓮
恋愛
自分を憎む婚約者との婚約解消を望んでいるシンシアは、婚約者が彼が理想とする女性像を形にしたような男爵令嬢と惹かれあっていることを知り2人の仲を応援する。
しかし、男爵令嬢を愛しながらもシンシアに執着する身勝手な婚約者に我慢の限界をむかえ、彼を切り捨てることにした。
*後半のざまあ部分に匂わせ程度に薬物を使って人を陥れる描写があります。苦手な方はご注意ください。
その令嬢は祈りを捧げる
ユウキ
恋愛
エイディアーナは生まれてすぐに決められた婚約者がいる。婚約者である第一王子とは、激しい情熱こそないが、穏やかな関係を築いていた。このまま何事もなければ卒業後に結婚となる筈だったのだが、学園入学して2年目に事態は急変する。
エイディアーナは、その心中を神への祈りと共に吐露するのだった。
今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです
阿里
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。
けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。
助けた騎士は、王の右腕。
見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。
王城で評価され、居場所を得ていく私。
その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。
「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。
選ばれるのを待つ時代は、終わった。
妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
婚約破棄?まあ!御冗談がお上手なんですね!
桜井ことり
恋愛
「何度言ったら分かるのだ!アテルイ・アークライト!貴様との婚約は、正式に、完全に、破棄されたのだ!」
「……今、婚約破棄と、確かにおっしゃいましたな?王太子殿下」
その声には、念を押すような強い響きがあった。
「そうだ!婚約破棄だ!何か文句でもあるのか、バルフォア侯爵!」
アルフォンスは、自分に反抗的な貴族の筆頭からの問いかけに、苛立ちを隠さずに答える。
しかし、侯爵が返した言葉は、アルフォンスの予想を遥かに超えるものだった。
「いいえ、文句などございません。むしろ、感謝したいくらいでございます。――では、アテルイ嬢と、この私が婚約しても良い、とのことですかな?」
「なっ……!?」
アルフォンスが言葉を失う。
それだけではなかった。バルフォア侯爵の言葉を皮切りに、堰を切ったように他の貴族たちが次々と声を上げたのだ。
「お待ちください、侯爵!アテルイ様ほどの淑女を、貴方のような年寄りに任せてはおけませんな!」
「その通り!アテルイ様の隣に立つべきは、我が騎士団の誉れ、このグレイフォード伯爵である!」
「財力で言えば、我がオズワルド子爵家が一番です!アテルイ様、どうか私に清き一票を!」
あっという間に、会場はアテルイへの公開プロポーズの場へと変貌していた。
もう、あなたには何も感じません
たくわん
恋愛
没落貴族令嬢クラリッサは、幼馴染の侯爵子息ロベルトから婚約破棄を告げられた。理由は「家が落ちぶれた」から。社交界で嘲笑され、屈辱に打ちひしがれる彼女だったが――。