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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
5.作り笑い
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「ルーフさん、ユーロンさんっ。お蕎麦できましたよー!」
シロはザルいっぱいに盛り付けた蕎麦を持ってやってきた。
「へぇ、本格的じゃないか。美味しそうだ」
「シロ、お前よくこんな料理知ってたな」
「レニー先生に教えてもらったんです。蕎麦粉も先生が分けてくれたんですよ」
シロはニコニコしながら箸や蕎麦つゆを並べた。
「ああ?お前、レニーじいさんとこにまだ通ってんのかよ。もしかしてまだどっか痛ぇのか?」
「体はもうすっかり良くなっていますよ。お小遣い稼ぎにレニー先生のところでお手伝いするってこの間もルーフさんに話したじゃないですかー」
シロは少し拗ねたように頬を膨らませルーフを見上げた。
言われてみれば、ルーフが一人で出掛ける日はレニーのところで働きたいとか言っていた。
ただ、その話はルーフが酔っ払って帰ってきた時にされたからあまり覚えていなかった。
「シロはもう働いているのか。偉いな」
「いえいえ、僕がお金を稼ぎたいのでレニー先生にお願いしたんです。それにルーフさんて意外と怪我する事が多いので、僕も医療の知識を身に付けてルーフさんの役に立ちたいんです」
「へっ、怪我なんて治癒魔法で自分で治せるけどな」
ルーフはそう言って蕎麦を食べ始めた。
「だってルーフさんはいつも酔っ払っていろんなところで転んで怪我してるじゃないですか。しかも治癒魔法もしないでそのまま寝ちゃうから危ないんですよ?この前なんて酔っ払って川に飛び込んで風邪引くし…」
「ルーフ…お前もう少し酒の飲み方を考えろ」
二人に攻められルーフは面倒くさそうに「へいへい」と答えた。
蕎麦を食べ終えたルーフは、ベッドに寝転びそのまま寝てしまった。シロはそんなルーフに毛布をかけて、後片付けを始めた。
「ったく、これじゃどっちが世話しているのか分からないな」
ユーロンはシロの手伝いをしながら呆れて呟いた。
「あははっ、ルーフさんて結構子供っぽいところありますよね。自由に生きていて尊敬します」
ユーロンはイビキをかきながら大の字で寝るルーフを見て「あの姿に尊敬するか?」と苦笑いした。シロは「はい。カッコいいです」と言ってクスクス笑った。
「シロ、お前我慢していないか?」
「え?」
「お前は文句や不満を言わないからな。ゲイルの事だって散々酷い目に遭ったのに恨み言の1つも言わないだろう?…ルーフも良い奴だが、子育てに向いているタイプではないと思う。シロにはもっと良い環境が…」
ユーロンは1つ1つ言葉を選びながら、シロの気持ちを聞き出そうとした。するとシロはユーロンの気持ちを察したのか「僕、ルーフさんと暮らせて幸せですよ」と微笑んだ。
「祖父の事は…まあ、恨む事はありますよ。特に祖父が付けたルーフさんの目の上の傷を見た時なんかは悔しくてしょうがないです。でも祖父がいなかったらルーフさんには会えなかったわけですから。そこは祖父にも感謝してるんです。
ルーフさんに会えた事で、僕の辛かった今までの人生が全て無駄じゃなかったと思えるんです」
「…そうか。シロはすごいな」
ユーロンはシロの頭を優しく撫で、シロを真っ直ぐに見つめた。
「シロ、これから学校に通って社会に出ればいろんな出会いがある。きっとそれはお前に新しい経験と豊かな人生を与えてくれるはずだ。ルーフの側だけがお前の世界じゃない。…もっと広い世界に目を向けて欲しい。自分のためにも、ルーフのためにも」
シロもユーロンを見つめ返す。
きっとユーロンはルーフに依存して盲目的になるなと言いたいのだろう。
でもシロは今後どんな素晴らしい出会いがあったとしても、自分からルーフの側を離れる事はないと思った。
きっと馬鹿正直にそう言ってもユーロンには理解してもらえないだろう。でも他人に自分の考えを理解してもらう必要はない。
シロはニコッと作り笑いをして「肝に命じます」と答えた。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。蕎麦も美味しかった。ごちそうさま。明日から学校頑張れよ」
「はいっ!ありがとうございます。気をつけて帰ってくださいね」
ユーロンを笑顔で見送ったシロは、寝ているルーフの側にやってきてベッドに腰をかけた。
まだ酒が抜け切れていないルーフの顔は少し赤く、目の上の傷跡はさらに赤く色付いている。
以前、スノウから対魔族用の武器で付いた傷跡はもう治らないと聞いた。
ルーフに傷を残した祖父には、今まで抱いた事のない憎しみを覚える。しかし同時に、ルーフがシロを守った時に出来たこの傷跡にすごく愛おしさを感じる。
シロは傷跡をそっと撫でてキスをして呟いた。
「僕の世界には貴方だけがいればいいんです。絶対離れませんよ、ルーフさん」
シロはザルいっぱいに盛り付けた蕎麦を持ってやってきた。
「へぇ、本格的じゃないか。美味しそうだ」
「シロ、お前よくこんな料理知ってたな」
「レニー先生に教えてもらったんです。蕎麦粉も先生が分けてくれたんですよ」
シロはニコニコしながら箸や蕎麦つゆを並べた。
「ああ?お前、レニーじいさんとこにまだ通ってんのかよ。もしかしてまだどっか痛ぇのか?」
「体はもうすっかり良くなっていますよ。お小遣い稼ぎにレニー先生のところでお手伝いするってこの間もルーフさんに話したじゃないですかー」
シロは少し拗ねたように頬を膨らませルーフを見上げた。
言われてみれば、ルーフが一人で出掛ける日はレニーのところで働きたいとか言っていた。
ただ、その話はルーフが酔っ払って帰ってきた時にされたからあまり覚えていなかった。
「シロはもう働いているのか。偉いな」
「いえいえ、僕がお金を稼ぎたいのでレニー先生にお願いしたんです。それにルーフさんて意外と怪我する事が多いので、僕も医療の知識を身に付けてルーフさんの役に立ちたいんです」
「へっ、怪我なんて治癒魔法で自分で治せるけどな」
ルーフはそう言って蕎麦を食べ始めた。
「だってルーフさんはいつも酔っ払っていろんなところで転んで怪我してるじゃないですか。しかも治癒魔法もしないでそのまま寝ちゃうから危ないんですよ?この前なんて酔っ払って川に飛び込んで風邪引くし…」
「ルーフ…お前もう少し酒の飲み方を考えろ」
二人に攻められルーフは面倒くさそうに「へいへい」と答えた。
蕎麦を食べ終えたルーフは、ベッドに寝転びそのまま寝てしまった。シロはそんなルーフに毛布をかけて、後片付けを始めた。
「ったく、これじゃどっちが世話しているのか分からないな」
ユーロンはシロの手伝いをしながら呆れて呟いた。
「あははっ、ルーフさんて結構子供っぽいところありますよね。自由に生きていて尊敬します」
ユーロンはイビキをかきながら大の字で寝るルーフを見て「あの姿に尊敬するか?」と苦笑いした。シロは「はい。カッコいいです」と言ってクスクス笑った。
「シロ、お前我慢していないか?」
「え?」
「お前は文句や不満を言わないからな。ゲイルの事だって散々酷い目に遭ったのに恨み言の1つも言わないだろう?…ルーフも良い奴だが、子育てに向いているタイプではないと思う。シロにはもっと良い環境が…」
ユーロンは1つ1つ言葉を選びながら、シロの気持ちを聞き出そうとした。するとシロはユーロンの気持ちを察したのか「僕、ルーフさんと暮らせて幸せですよ」と微笑んだ。
「祖父の事は…まあ、恨む事はありますよ。特に祖父が付けたルーフさんの目の上の傷を見た時なんかは悔しくてしょうがないです。でも祖父がいなかったらルーフさんには会えなかったわけですから。そこは祖父にも感謝してるんです。
ルーフさんに会えた事で、僕の辛かった今までの人生が全て無駄じゃなかったと思えるんです」
「…そうか。シロはすごいな」
ユーロンはシロの頭を優しく撫で、シロを真っ直ぐに見つめた。
「シロ、これから学校に通って社会に出ればいろんな出会いがある。きっとそれはお前に新しい経験と豊かな人生を与えてくれるはずだ。ルーフの側だけがお前の世界じゃない。…もっと広い世界に目を向けて欲しい。自分のためにも、ルーフのためにも」
シロもユーロンを見つめ返す。
きっとユーロンはルーフに依存して盲目的になるなと言いたいのだろう。
でもシロは今後どんな素晴らしい出会いがあったとしても、自分からルーフの側を離れる事はないと思った。
きっと馬鹿正直にそう言ってもユーロンには理解してもらえないだろう。でも他人に自分の考えを理解してもらう必要はない。
シロはニコッと作り笑いをして「肝に命じます」と答えた。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。蕎麦も美味しかった。ごちそうさま。明日から学校頑張れよ」
「はいっ!ありがとうございます。気をつけて帰ってくださいね」
ユーロンを笑顔で見送ったシロは、寝ているルーフの側にやってきてベッドに腰をかけた。
まだ酒が抜け切れていないルーフの顔は少し赤く、目の上の傷跡はさらに赤く色付いている。
以前、スノウから対魔族用の武器で付いた傷跡はもう治らないと聞いた。
ルーフに傷を残した祖父には、今まで抱いた事のない憎しみを覚える。しかし同時に、ルーフがシロを守った時に出来たこの傷跡にすごく愛おしさを感じる。
シロは傷跡をそっと撫でてキスをして呟いた。
「僕の世界には貴方だけがいればいいんです。絶対離れませんよ、ルーフさん」
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