竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

文字の大きさ
31 / 112
竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

5.作り笑い

しおりを挟む
「ルーフさん、ユーロンさんっ。お蕎麦できましたよー!」

シロはザルいっぱいに盛り付けた蕎麦を持ってやってきた。

「へぇ、本格的じゃないか。美味しそうだ」

「シロ、お前よくこんな料理知ってたな」

「レニー先生に教えてもらったんです。蕎麦粉も先生が分けてくれたんですよ」

シロはニコニコしながら箸や蕎麦つゆを並べた。

「ああ?お前、レニーじいさんとこにまだ通ってんのかよ。もしかしてまだどっか痛ぇのか?」

「体はもうすっかり良くなっていますよ。お小遣い稼ぎにレニー先生のところでお手伝いするってこの間もルーフさんに話したじゃないですかー」

シロは少し拗ねたように頬を膨らませルーフを見上げた。

言われてみれば、ルーフが一人で出掛ける日はレニーのところで働きたいとか言っていた。
ただ、その話はルーフが酔っ払って帰ってきた時にされたからあまり覚えていなかった。

「シロはもう働いているのか。偉いな」

「いえいえ、僕がお金を稼ぎたいのでレニー先生にお願いしたんです。それにルーフさんて意外と怪我する事が多いので、僕も医療の知識を身に付けてルーフさんの役に立ちたいんです」

「へっ、怪我なんて治癒魔法で自分で治せるけどな」

ルーフはそう言って蕎麦を食べ始めた。

「だってルーフさんはいつも酔っ払っていろんなところで転んで怪我してるじゃないですか。しかも治癒魔法もしないでそのまま寝ちゃうから危ないんですよ?この前なんて酔っ払って川に飛び込んで風邪引くし…」

「ルーフ…お前もう少し酒の飲み方を考えろ」

二人に攻められルーフは面倒くさそうに「へいへい」と答えた。




蕎麦を食べ終えたルーフは、ベッドに寝転びそのまま寝てしまった。シロはそんなルーフに毛布をかけて、後片付けを始めた。

「ったく、これじゃどっちが世話しているのか分からないな」

ユーロンはシロの手伝いをしながら呆れて呟いた。

「あははっ、ルーフさんて結構子供っぽいところありますよね。自由に生きていて尊敬します」

ユーロンはイビキをかきながら大の字で寝るルーフを見て「あの姿に尊敬するか?」と苦笑いした。シロは「はい。カッコいいです」と言ってクスクス笑った。

「シロ、お前我慢していないか?」

「え?」

「お前は文句や不満を言わないからな。ゲイルの事だって散々酷い目に遭ったのに恨み言の1つも言わないだろう?…ルーフも良い奴だが、子育てに向いているタイプではないと思う。シロにはもっと良い環境が…」

ユーロンは1つ1つ言葉を選びながら、シロの気持ちを聞き出そうとした。するとシロはユーロンの気持ちを察したのか「僕、ルーフさんと暮らせて幸せですよ」と微笑んだ。

「祖父の事は…まあ、恨む事はありますよ。特に祖父が付けたルーフさんの目の上の傷を見た時なんかは悔しくてしょうがないです。でも祖父がいなかったらルーフさんには会えなかったわけですから。そこは祖父にも感謝してるんです。
ルーフさんに会えた事で、僕の辛かった今までの人生が全て無駄じゃなかったと思えるんです」

「…そうか。シロはすごいな」

ユーロンはシロの頭を優しく撫で、シロを真っ直ぐに見つめた。

「シロ、これから学校に通って社会に出ればいろんな出会いがある。きっとそれはお前に新しい経験と豊かな人生を与えてくれるはずだ。ルーフの側だけがお前の世界じゃない。…もっと広い世界に目を向けて欲しい。自分のためにも、ルーフのためにも」

シロもユーロンを見つめ返す。

きっとユーロンはルーフに依存して盲目的になるなと言いたいのだろう。
でもシロは今後どんな素晴らしい出会いがあったとしても、自分からルーフの側を離れる事はないと思った。
きっと馬鹿正直にそう言ってもユーロンには理解してもらえないだろう。でもに自分の考えを理解してもらう必要はない。

シロはニコッと作り笑いをして「肝に命じます」と答えた。



「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。蕎麦も美味しかった。ごちそうさま。明日から学校頑張れよ」

「はいっ!ありがとうございます。気をつけて帰ってくださいね」

ユーロンを笑顔で見送ったシロは、寝ているルーフの側にやってきてベッドに腰をかけた。

まだ酒が抜け切れていないルーフの顔は少し赤く、目の上の傷跡はさらに赤く色付いている。

以前、スノウから対魔族用の武器で付いた傷跡はもう治らないと聞いた。
ルーフに傷を残した祖父には、今まで抱いた事のない憎しみを覚える。しかし同時に、ルーフがシロを守った時に出来たこの傷跡にすごく愛おしさを感じる。

シロは傷跡をそっと撫でてキスをして呟いた。

「僕の世界には貴方だけがいればいいんです。絶対離れませんよ、ルーフさん」

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...