竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

文字の大きさ
92 / 112
竜人の子、旅立つ

19.衝突

しおりを挟む
「…え」

シロが引き攣った表情で聞き返すと、ルーフは机の上にドカッと腰を掛けた。
一瞬、怒っているのかと思ったが、作り笑いのような表情で「別にいいじゃないか。わざわざ竜人の学校に行かなくったってさ!」と大袈裟なほど明るい声で笑った。

「でも…」

シロが言いかけたが、ルーフは手を振り「行かなくていいって言ってんだろ」と話を遮った。

「モンド王国だって十分な勉強が出来るんだろ?それに聖剣の治療なんて今まで通りスノウに任せとけばいいんだ。わざわざシロが学ぶ必要ねぇよ」

ルーフは、シロと目を合わせずに話し続けた。

「そもそもさぁ、お前つい最近まで進学しないでレニーじいさんのトコで働くって言ってただろ。それが急にやっぱり進学したい、騎士学校に行きたいって一貫性がないんだよ。そんな浮ついた気持ちじゃ、どこ行ったって意味ねぇよ。ははっ、むしろ進学なんかしねぇ方がいいんじゃねぇの?」

「…確かにそうだけど…、でも俺だって、ずっと悩んでて…」

ルーフに否定されて、シロは悲しくなった。

確かにルーフの言う通り、この数日でシロの進学に対する気持ちはずいぶん変わっていた。
でも根本的な気持ちは変わっていない。
ルーフを守るために、自分が出来る事を全てやりたいのだ。

いつもならシロの話を最後まで聞くルーフは、そっぽを向いたまま否定の言葉を続ける。

「はっ、竜人騎士学校?どうせ貴族出身のしょうもないプライド竜人たちの集まりだろ。お前みたいな野良竜人が、そのお仲間になれるわけねぇだろ。ああ、それともあれか。爆発事故で中途半端に活躍したからって、のぼせてんじゃねぇのか」

「おい、ルーフ。言い過ぎだ」

ジェスが止めに入っても、ルーフの態度は変わらない。

「いいんだよ。こいつはまだまだ世間知らずのあまちゃんなんだ。そんな奴が住んだこともねぇアスディアで1人でやっていける訳がない」

ルーフからの酷い言われように、シロの悲しい気持ちはだんだん悔しさへと変わっていった。

「シロ、お前には無理だよ、絶対無理。さっさと諦めろ」

(なんでそんなに否定するんだよー…!)

シロは思わずルーフを睨み、声を荒げた。

「そんな事っ、やってみないと分かんないだろ!!俺だって自分の甘さや弱さを嫌ってほど分かってるよっ。世間知らずなのも分かってる。…だけど、…だから騎士学校に行きたいんだっ!ルーフを守りたいから、強くなりたいんだっ!」

「誰が守ってくれなんて言ったよ!誰かに守ってもらうほど俺は弱くねぇ!つか、全部お前の独りよがりだろ!ガキが調子に乗んなっ!!」

ルーフも声を荒げ、口調はどんどん強くなる。

「…っ!!独りよがりや調子に乗ってるんじゃないよ…。好きだから…、ルーフが好きで大事だから守りたいって思うんだよ」

「…っ、意味わかんねぇよ。もういい、この話は終わりだ。とにかく騎士学校なんか行くな」

そう言ってシロに背を向けたルーフの頭を、ジェスがパチンっと叩いた。

「何すんだよ!!」

ルーフはジェスを睨みつけた。

「意味わかんねぇのはお前の方だ、ルーフ。シロ坊が決めた事を何故お前が否定するんだ?お前に何の権利がある?シロ坊の人生はシロ坊のもんだ。それをお前が否定する方がおかしいだろう」

「…っ!」

ジェスの言葉に、ルーフは唖然とした。

『シロ坊の人生はシロ坊のもんだー…』

どこかで聞いた事がある言葉。
いや、昔、自分が言った言葉だ。

ー…『シロの人生はシロのもんだろ』

シロを引き取った時、ユーロンに、もしシロの魔力が悪影響を及ぼすなら監禁しなければならないと言われ、ふざけんなと思った。
その時、ルーフがユーロンに言った言葉だった。

その考えは今でも変わらないと思っていた。
それなのに、いつのまにかシロがいる日常が当たり前になりすぎて、シロは自分から絶対離れていかないと勘違いしていたんだー…。
だから1人でアスディアに行こうとするシロに腹が立った。

ルーフは冷水を浴びせられた気分になった。

「…はは、そりゃそうだよな。俺がどうかしてた。シロ、教会学校の卒業までは面倒見てやる。その後は、…お前の好きにしろ」

「ルーフ…」

シロはルーフの腕を掴もうとしたが、するりと躱された。まるでシロを拒絶するようにー…。

「…悪い。ちょっと頭冷やしてくるわ」

そう言ってルーフは家を出た。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

処理中です...